学園天国/駅(ってのを忘れてました!)/ばたこ

「スタイル良いですね!」

 

…またこれだ。初対面の人には毎回言われる。本当この人たちは他に言うことが無いんだろうか。

 

「伸長おいくつですか?」

 

「174…です」

 

「高~い!!」

 

ここまでがお決まりのパターン。小学生の頃からこうだった。背の順ではいつもクラスで一番うしろ。中高になってやっと男子の背が伸びてきたけど、それでもその半分より上。勿論女子の中では断トツで1位。

 

「スタイル良くて羨ましいな~」

 

皆そう言う。何がそんなに良いんだろう。可愛い服は殆んどサイズが合わないし、苦労してやっと見つけたピッタリも男性服。そして何より人を威圧するらしい。女の子は珍しさからか近寄ってくるけど、男は違う。学生の時に意を決して告白してみたこともあったけどその返事は…

 

「ごめん、俺よりデカい女は、流石に無理」

 

あれは凹んだなー。やっぱり人は見た目なんだ。この前本屋で『人は見た目が9割』っていう本があったけどほんとその通りだと思う。認めたくは無いけど。

 

こんなことをぼんやりと考えてたらもう定時、パッパと帰りの支度を済ませてオフィスを後にする。

帰り際同僚の女の子がご飯に誘ってくれたけど、会う人がいるとか適当な事言って出てきてしまった。

ごめんなさい、家に帰って溜まってる録画を観るだけです。

 

ビルから少し歩けば駅のホーム、そこから二駅で最寄り。帰りの道を、昔を思い出しながら歩く。

 

高校生までは今と違って友達がいた。勿論皆女の子だったけど、それでも今よりは全然充実しててそれなりに楽しんでたと思う。部活は軽音をやってたけどパートが良くなかった。

 

「悠子ちゃん絶対似合うよ、カッコいい!!モテると思うよ~」

 

今思えばあの先輩の言ってたことは間違ってなかったと思う。ステージの上でベースを弾く高伸長の女子はそれはそれは格好良く見えたんだろう。お陰様で私はモテにモテた。勿論女子に。

 

そこまではまだ良かった、問題はそのあとだ。一切認めた記憶がないのに『片桐悠子公認ファンクラブ』なるものが設立され、私のデビューステージ以降その会員を名乗る少女たちから猛アタックを受けるようになった。

 

その中でも一際目立っていたのが、会員No.00001   永久名誉会長を自称する名倉美沙子だった。先ずは5桁にも及ぶ会員番号に突っ込みたかったが彼女は私にその隙さえも与えてくれなかった。

 

「一緒にご飯食べよう!!」

 

4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴るや否や、こう叫びながら彼女が私のクラスに入ってくる。しかも毎日。自分の授業はどうしのか聞く暇さえ与えずに食堂に連行される。途中何人かの女の子が声をかけてきたが、それさえもお構い無し。

 

最初の内は、彼女の好意が嬉しかった。それこそ私は有名人感覚で喜んでいたんだけど、段々とエスカレートするそれにある日とうとう耐えられなくなり…

 

「もうやめて。女のくせにこんなに付きまとって…正直迷惑、気持ち悪い!!」

 

自分でも言い過ぎたと思った。でも仕方ないでしょ。朝、家を出たらそこにいて、部活を終えて帰ろうとしたらそこにいて。本当に限界だったんだから。

 

それからすぐに、私の周りから人が離れていった。告白の件と合わせて男女両方に軽い対人恐怖症を患ったけど、仕方のないことだったし、いくらか気分は楽になったと思う。

 

それでも、あの時に戻れたら、って思う時がある。

 

一通り高校の時のトラウマを思い返して、いつもより少しだけ遅くアパートに着いた。郵便受けに一つ手紙が入ってる。それを取りだし、中身を読む。

 

同窓会のお知らせ

 

なんてタイミング。高校の同期で来月久しぶりに集まって飲むらしい。これを逃せばもう過去をやり直す機会なんて無いかも知れない。意を決して参加を決め、部屋に入ってシャワーを浴びる。

 

何て言って謝ろう。いやでも謝るのもおかしいかな、相手も忘れちゃってるかも知れないし…。

 

結局答えはでないまま風呂場を出た。少し丈の短いパジャマに体を通しながら、再度机の上の手紙を見る。

 

あれ?さっきは気づかなかったけど、差出人の名前に見覚えがない…。確かこの名字は学年に一人だったはず。

 

名倉啓太

 

引っ越そう。

0 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 5 (0 投票, 平均点: 0.00,  総合点:0  |  
投票する為にはユーザ登録する必要があります。
Loading...

「学園天国/駅(ってのを忘れてました!)/ばたこ」への2件のフィードバック

  1. 不覚にもオチでちょっと笑ってしまった。携帯小説にありそうな軽い文体で、消費されやすいコンテンツという感じがする。現代性があるなと思う。

  2. 文章が全然女性的じゃないから、読んでいても主人公の性別どっちだっけ?と思うシーンが多々あった。全体的に地の文がごつごつしている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。