もう消せない/駅/ネズミ

これは去年の冬にあったこと。

下校途中の電車の中、ブブーとケータイが鳴った。見てみると、当時付き合っていた彼女からの LINE。この日はクリスマスを間近に控えた 12 月の中旬。付き合って 1 カ月の僕らは、どこのイルミネーションを見に行くか相談の真っ最中だ。どこを候補に挙げようかに悩んでいると、いつだか東京駅で見た丸の内イルミネーションの広告を思い出した。中央線から京葉線までの乗り換えで通る動く歩道。あそこに貼られている何枚もの同じ広告は嫌でも目に入ってくる。完全に思いつきではあったが、丸の内なら雰囲気も大人っぽいし、デートの場所としては悪くはない。そう思うと丸の内を第一候補として挙げ、あとはその時ちょうど乗っていた横浜線で流れているイルミネーション特集からいくつか選び、送信ボタンを押した。

その瞬間に、画面の上の方に新たな LINE の通知が表示された。どうやら中学校の同窓会のグループラインのようだ。年が明けるとすぐに成人式が待っている。それに伴い中学校の同窓会が開催されるのだ。出欠確認とか先生は誰を呼ぶかなど決め事がたくさんあるようで、その当時はせわしなくグループラインが動いていた。同窓会といっても、結局は仲の良いいつものメンバーで集まる気しかしない。それ以外の人とは特に積もる話があるわけでもないし、安定した奴らとワイワイやっているのが一番楽しいのだ。そんなことを思いつつも、懐かしい奴に久しぶりに会いたいと思っている自分もいたから、心の中ではそれなりに同窓会を楽しみにしていたのだと思う。

帰宅ラッシュで混雑した電車は、町田駅に到着しようとしていた。ここでは多くの人が降りる。終点まで乗っている僕にとっては、この駅が席に座る最大のチャンスだ。誰かが立ち上がることを期待していると、運よく目の前に座っていた人が降りていったので、僕は即座に座った。そして彼女からの返信を待っていたのだが、電車の揺れが心地よくそのまま眠りについてしまった。

起きると既に終点の駅に着いていた。電車から降り、ケータイを確認すると待ち受け画面
に LINE の通知が来ていた。彼女と例の同窓会ライン。彼女の方をみると、

「その中だったら丸の内がいいなー!丸の内にしようよ(^O^)」

僕が一番行きたかった丸の内に彼女も賛成してくれた。ウキウキになった僕は、そのテンションのまま返事を書き始めた。
「じゃあ決定ね!今から楽しみー\(^o^)/」

こう文字を打つと、すぐさま送信ボタンを押し、ついでにテンション高めのスタンプを送った。これに対し、どのような返信がくるか楽しみだった。

ところがいくら待っても返信が来ない。いつもなら 1 時間以内には返してくれるのに。不安になった僕は「既読」がついているかどうか確認をするため LINE を開く。そこで僕は戦慄した。さっきのラインを彼女にではなく、同時に通知が送られてきていた同窓会の方のグループラインに送ってしまっていたのだ。今更慌てても、時すでに遅し。LINE では、一度送ったメッセージはもう消すことはできない。

「同窓会でなにか出し物をしたいという人がいたら連絡下さい。」

これに対し、次に送られているのは

「じゃあ決定ね!今から楽しみー\(^o^)/」

そしてテンション高い系スタンプ。既読は 51 人。
なにが決定かわからない上に、そんなキャラではない僕がそのトークルームでは同窓会をものすごく楽しみにしている少しイタイ奴になっている。

僕は同窓会に行きたくなくなった。

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