修学旅行/駅/T

私の高校の修学旅行は、二年の秋に京都・奈良に行く。近隣の高校が沖縄や北海道、ハワイや韓国等の海外に目的地を転換する中、私の高校だけなぜか頑なに京都・奈良を貫いていた。そのことに不満の声も多かったが、それでも楽しい楽しい修学旅行である。学校がある長野の山奥から考えると、どこへ行こうが都会へ行くことにもなる。そんな時私達のような田舎者はできる限りのオシャレをして都会へ行こうとする。

私の高校は私服校で、髪色、メイクも比較的自由であった。だから普段の学校生活でも、容姿や服装に相当気をつかっている女子は大勢いた。そんな彼女たちが修学旅行にあたってさらに気合を入れるのである。髪をより明るい色に染め直し、巻いてみたり、結んでみたり、ピンでとめたり。明らかに普段よりも数段高そうな服を着て、それに何が入るの?みたいな小さいバッグを肩からさげたりしている。メイクも濃いめで、なんか目元とか口元とかよくわからなくなっている。そういった努力で自分の魅力をふんだんに引き出すことに成功した者もいる。一方で、こいつこんな顔だったっけみたいな奴もまあ出現するのだ。
女子だけではない。男子だって、個々思い思いのオシャレをして臨むのである。普段は丸刈り&万年ジャージの野球部員が、旅行当日へ向けて少しだけ髪を伸ばして、何を思ったのか超ごついジャケット等を着てきたりする。日々の練習で鍛え上げられて肥大した上半身にごついジャケットはまさしくゴリr…何でもない。その点サッカー部の男子たちは、自らの身体的特徴に合致した服をサラッとセンス良く着こなしていたりする。同じ万年ジャージ組なのに、この差はどこで生まれるのだろう。

そんな中、私はいつものパーカーと T シャツにジーンズという出で立ちで、旅行に臨むことにした。たかが修学旅行で皆そんな洒落っ気づくなんて…なんてことを思っていたのではない。私だってオシャレしたかった。ただ急にオシャレをするといっても、どんな服を着ればいいのかわからなかったのだ。ファッションセンスが皆無であるし、しょせん私のような芋は何をしようが芋である。何かしなければと、普段は全くつけないワックスを数種類購入して、家族に見られないように夜中洗面台の鏡の前でコソコソつけた。つけたが、ベタベタして髪がペタッとするだけで、毛束感なるものなど全く出なかった。つけ過ぎであった。

修学旅行当日、早朝の駅のホームに集合した私達は、変わり果てた友人たちの姿を目撃する。洒落っ気を出したのは自分だけではないという安堵感を抱くと同時に、友人たちの急激な容姿の変化に違和感をおぼえる。そして彼らの不安な視線が自分にも向けられていることに気付くのだ。だが気付いたときにはもう遅い。電車の出発の時刻が来て、それぞれの座席へと乗り込むことになる。オシャレに成功した者、失敗した者、何もできなかった者。自分自身と友人たちへの複雑な思いを乗せて、電車は京都・奈良へと向かっていく。

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