気まぐれタイムトレイン/駅/オレオ

かなり前の話だ。深夜の格安航空便で海外から日本に戻ってきた際、空港から自宅の最寄り駅まで向かう最中だった。

着陸時刻は11時半、気流が悪かったという理由で予定より大幅に遅れて日本に着いた。

(もうこんな時間か……)

ベルトコンベアで荷物が流れてくるのを待ち、税関を通る頃には既に12時15分。

(さすがに終電は過ぎちゃっただろうな……)

そう思いつつも、改札横のインフォメーションセンターで駅員さんに電車の有無を聞いてみた。

「◯◯駅まで行きたいんですけど、もう終電って終わっちゃいましたよね?」

駅員さんは後ろに掛けてある時計を見て、ラミネートされた一枚の時刻表を確認した。

すると……

「◯◯駅でしたら、今から丁度10分後の11時48分発の◯◯行きに乗って頂いて、◯◯で乗り換えしてもらって……」

耳を疑った。

「11時48分発」確かに駅員さんはそういった。

腕時計を確認すると時刻はもう既に12時28分、この時間帯に電車が通っているはずが無かった。

(時計、壊れちゃったのかな……)

私は駅員さんにお礼を伝え、手動で腕時計を11時38分に調整しながら急いで改札を通った。

ホームまで向かうのに、エレベーターとエスカレーターがあったのだが、肉体的にも精神的にも参っていた私はエレベーターを使ってホームまで降りることにした。

ボーっとしていると、調子が悪いのかエレベーターの電灯が一瞬チカチカと点灯した。
急に怖くなり、顔が熱くなる。まだかまだかとエレベーターの開扉を願った。

エレベーターの扉が開くとすぐさま荷物を引いてホームに出た。

(良かった……)

ホームに出るとポツポツと人影があり、皆、電車を待っている様子だった。

(のど乾いたな……)

不安と緊張でカラカラになった喉を、自販機で買ったお茶で潤した。

大きく口で空気を吸い込み安堵の息を吐き、座り心地の悪そうなステンレスのベンチに腰を掛けて11時48分発の電車を待った。

しばらくすると、ポップな音楽と共に電光掲示板に終電のアナウンスが流れ、間もなく電車は駅に到着した。

重い身体をベンチから起こし大荷物を引いて電車に乗り込むと、車内には20代から30代の男女がまばらに座っていた。

(あれ?)

不思議な事に私以外、誰も乗車してこなかった。違和感を覚えつつも深くは考えずに空いている席に腰を降ろすと同時に電車はゆっくりと走りだした。

――しばらくして何気なく乗客に視線を向けてみると、明らかに様子がおかしい……

(髪が伸びてる……?)

思わず目を凝らして乗客を観察していると、やはり目で捉えられる早さで髪が伸び、そして皮膚もしおれていっている!
ふと、対面している窓に自分の姿を見て心臓が縮み上がった。他の乗客と同じように髪が伸び、顔もどんどん老けていっていた。

混乱して頭が真っ白になり、席を飛び跳ねて扉にすがりついた。

(はやく!はやく!次の駅に着いてくれ!)

そう心の中で何度も叫び扉を叩いた。その間も伸びた髪が白がかって行き、次に爪もみるみると伸びていく。

祈りが通じたのか次の駅が視界に入った!焦りと安堵が交差して涙が溢れだした。

腰が曲がりかけている最中、電車は駅に着き、重い扉はゆっくりと開いた。

既に自らの足では立てなくなっていた私は残った力を振り絞って私は電車を這い出た。

――目を覚ますと、私は駅のホームで倒れていた。

どうやら気を失っていたようだった。身体も全て元通り。

しかし、腕時計を確認すると時刻は12時38分で針を止めていた。

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