屋上は決まって青い春/青春/オレオ

「なぁ、美奈子~。今年の夏どうする?」

屋上で仰向けになって空を仰いでいると、洋平は顔を覗くようにして私に話しかけてきた。

「んー……。空でも飛んでみたいな」

ぼんやりと空を眺めながら、私はそう答えた。

「お前なぁ~……真面目に聞いてんだからちゃんと考えろって……」

洋平との出逢いは、高校に入学して間もない5月頃――。

元々私は友達作りが得意ではなかった。というより、知らず知らずの内に周りの子に多くの反感を買っていた。理由は単純、容姿端麗、頭脳明晰。全てにおいて注目を浴びる私に彼女達は嫉妬した。そのまま、うまく人と付き合おうともせず、自分勝手に毎日を過ごした。そして私はここでもまた孤立していた。

休み時間になると私は決まったように学校の屋上へと足を運んだ。誰もいない、空だけが一面に広がる屋上へ。もちろん屋上に出ることは校則で禁止されていたが、屋上への扉の鍵はいつも掛けられていなかった。外に出ると梯子を伝い、高さ20センチ程のコンクリート囲われたスペースで貯水タンクを横に仰向けになる。頭を空っぽにして様々な形をした雲を見つめてチャイムが鳴るのをを待った。

――カツ、カツ、カツ。一定のリズムを刻んで誰かが梯子を登ってくる音がしてきた。とうとう先生にバレてしまったかと、私は必死に言い訳を考えた。

「あ、先客いたんだ。」

思いついた言い訳を心の中で繰り返していると、そういって彼は顔をのぞかせた。特に驚くこともなく彼はそのまま梯子を登り、彼はコンクリートの塀に腰を下ろすと、予想通りの質問を投げかけてきた。

「こんな所で何してるの?」

「べつに。」

素っ気なく返した訳でもなく、そのまま事実を単純に述べた。別に何もしていた訳でもない。強いて言えば一人で何も考えずに空を眺めていたが、そんな中身の無いことを赤の他人に言うだけ無駄だと感じた。

「そっかー……」

反応に困ったらしく、彼はそれっきり何も言わなかった。

「君はこんな所に何しにきたの?」

気まずくしてしまった罪悪感に耐え切れず、私は彼に話しかけた。

「うーん……。一人になりに来た……のかな」

彼はそう言うと、気まずそうに私を一見した。間接的に私が邪魔だと言いたいのかと察し、何も言わずに身体を起こし、梯子を降りようとすると彼は慌てて私を引き止めた。

「待ってよ!そういう意味じゃなくて!……えっと、友達にならない!?」

「―――へ?」

状況が整理出来ず、思考が付いてこないまま思わず素で反応してしまった。

「俺さ、友達いなくて……だから友達になってよ!」

―――私に高校初めての友達が出来た。

「おーい、美奈子ってばよー。聞いてる?今年の夏どうすんのマジでー」

ダルそうに洋平は先ほどと変わらない質問を繰り返していた。

「んー。じゃあ海か山に行く」

「えー。何かもっと違うことしようぜ。海も山も行ったじゃん!」

「じゃあ空でも飛んでみたいな」

「だーかーらー!真面目に考えろって!」

内心面白がりながら洋平をからかっていたが、そろそろ飽きてきたので、少し真面目に話を進めてあげることにした。

「洋平は何がしたいの?」

「え、お、俺は美奈子となら何でもいいよ……」

自分が聞かれるとは思っていなかったのか、洋平はビクッと動揺し、どもりながら答えた。

「でも海も山も嫌なんでしょ?」

「いや、それでいいなら俺はいいけど……」

私は少し照れていた。「美奈子となら何でもいい」そう彼は言った。恐らく勇気を振り絞って無理してそう答えたのだろう。それなら私も少し勇気を出してみよう、そう思った。

「じゃあ、一緒に恋愛でもしよっか?」

私に初めての恋人ができた――。

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「屋上は決まって青い春/青春/オレオ」への1件のフィードバック

  1. 学校の屋上、完璧な主人公、同性からの嫉妬、「あ、先客いたんだ。」、などから感じられる少女漫画感がすごかった。それはそれでおもしろいし、女の子の夢(?)なのかも知れないけど、現実味は薄れてしまっている気がした。
    同い年なのに、女の子の方が男の子を弄んでいるというか、少しませて上から目線でいる感じが、絶妙に描けている。
    最後の一文は、はっきりしていて分かりやすいが、オチのようになってしまい、そこまでの雰囲気が壊されてしまうので、無い方がいいと思った。

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