幸せとは何でございましょう/青春/山百合

電車の中で、女子小学生の集団が何か話していた。早めに授業が終わる学校なのだろう、まだ帰宅ラッシュには時間がある。この車両には暇そうな老人と学生しか乗っていない。子供の声は煩わしい。このところ徹夜続きで電車の中くらいはゆっくりと眠りにつきたいのだけど、どうにも邪魔。別に声を上げるほどでもないけど、耳の奥から頭の中まで響いてきて眠たいのに眠れない生殺し状態が続いている。

 

「あのね、女の幸せってそんなものよ」

 

確かに子供の声だった。どんな文脈で出てきたのか、必死に耳を閉ざそうとしていた私にはわからない。

子供は純粋だと誰もが信じている。私もそうだ。だからこそあどけなさとはかけ離れた、まるで人生を悟り切ったような言葉に衝撃を受けている。いや、子供は純粋だから、ありのままの世界を受け止めてしまうのだろうか。自分に向けられた言葉の矛盾に気付いた時、その矛盾そのものを世界の矛盾としてしまうこともあるかもしれない。そんな子供に諦めさせてしまう幸せとは何なのだろう。

私は今幸せと言えるだろうか。恋人がいたことはないけど、友達には恵まれていると自分でも思う。実際、遊ぼうと思えばいつでも相手がいる環境っていうのは、誰もが手にしているわけじゃない。でも、友達は全員同性だ。同性の友人がいるってことは、女の幸せなのだろうか。男と付き合ったら、なんでしょう、やっぱりそれは男と一緒になる程の幸せでしかないように思えてしまうような。それが悪いのではないけど。

今は幸せだけど、未来は分からない。将来のことを考えて、結婚した方がいいのだろうか。子供のことはまだ考えられない。異性と付き合ってみたい気もするし、それで幸せになれるのだったらそれはそれで興味もある。でも、男と一緒になることでしか幸せになれないのだとしたら、それはちょっとつまらない。

そんなもの。あの小学生は確かに、女の幸せをそう言った。あの子は何を見て、聞いてそう思ったのだろう。女だからって、女の幸せを狭く考える必要は無いのにもったいない。そう考えて、それは自分もそうだと気付く。

もう女だけで生きていくほうがいいのかしらと思ったりしていると、とっくに降りるはずの駅を過ぎていることに気が付いた。あの女の子のいた小学生グループもとうに姿を消している。だが、電車が終点に着いても降りる気になれなかった。

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「幸せとは何でございましょう/青春/山百合」への2件のフィードバック

  1. 幸せって何だろう、と単純に考えてしまった。
    「私は今幸せだろうか」という文の後に「今は幸せだけど」という文がある。この主人公は何をもって自分が幸せだと思ったのか、そのへんが分からなかった。

  2. 読んだ後に主人公の何とも言えない気持ちが伝わってくるようでした。電車で思いふけってしまうことってありますよね。文章は読みやすかったですが、全体的に淡々としていて少し気持ちがつらくなりました。題名の通り幸せってどこにあるのか、放ったままになっていることで、何とも言えない読了感を感じました。どこにあるのか気になりますが

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