憎い/青春/フチ子

おそらく、一目惚れだったのだと思う。この人には、好きとか嫌いとかそんな感情は湧いても、一生「無関心」にはなれないんだろうと直感した。どんなにぐちゃぐちゃになっても、この人が入り込んでくるんだろうな、と。

不思議なもので、彼女とは出会ってからトントン拍子しで距離を縮めて、付き合って、お互いに初めてキスもセックスもした。きっとこういうのが運命?みたいなもので、惹かれ合うしか道はなかったし、避けようがないことだった。

それでも初恋は(それまでだって好きな人はいたけど、ここまで「愛」だと確信できたものはなかった)叶わないというのは本当で、ふとしたことで傷つけ合うようになった。

育ちも価値観も色んなことが違う僕らは何かとぶつかっては、お互いを消費しあった。どうしてこんなにも苦労しないと「好き」だと確かめられないのか。どうして彼女は僕の努力を認めてくれないのか、どうしてそんなに不満そうな顔をするのか。それなのにどうしていつも目を腫らして「別れたくない」と懇願するのか。

「もう終わりにしよう、疲れた」

何度目かの喧嘩で、僕の愛は彼女に全部全部奪われてしまったんだと漠然と思って、彼女を突き放した。

もう、彼女に対してどうだっていいと思った。不満そうな顔も、泣けば済むと思ってる狡い顔も、見たくなかった。

「…本気の、終わりだよね」

ほら、そうやってまた泣きそうな顔して、堪えて堪えてどうせしおらしく泣くんだろう。

そう。僕はもう君に愛を与えられない。

「僕は、美咲のことを一目見て、絶対に好きになると思ったし、絶対に続かないとも思ったんだ」

「私は、見た瞬間に好きになると思ったよ」

「僕はなんとなく、終わりも見えてたんだよ」

そういった瞬間、美咲の目からポロポロと涙が落ちて、また、狡い泣きが始まった。僕はそれを初めて無視をして、さよならした。

僕は大好きだったはずの彼女を振った。彼女は嫌そうだった。

 

「美咲ちゃん最近可愛くなったよね」

「俺も思った、この間ゼミでバーベキュー行ったんだけど、すごく楽しそうにしててさ」

「今、フリーなんだよな」

そんな会話が聞こえた。腹がたつ。

楽しそう?

別れてから、三ヶ月なのに?

彼女とすれ違った。不満そうな顔は一切なくなっていて、どこか幸せそうだった。一目惚れした時の顔はこんな感じだった、と思い出したような気がした。

そうだ。やっぱり。憎い。嫌いだ。憎い。

僕は未だに彼女が埋まってしまっているのに。そのことに今、気づいたのに。

こうなることは決まっていたのだろう。ぐちゃぐちゃと、気持ちが悪いむかつきが残った。

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「憎い/青春/フチ子」への2件のフィードバック

  1. セリフも、地の文も、主人公の感情が濃く反映されていて感傷的になりながら読めました。
    語の選択も考えられているんだろうなと感じさせられます。
    ただそうした感情が迫ってくるような展開になっていたためか、彼女に対する愛や好きだという気持ちが薄かったです。最後にみせた執着心との落差が唐突な印象を受けました。

  2. 別れる過程は、よくある「なんか違うから別れる」というお話に思えてしまったのですが、それにしては冒頭の運命のあたりと最後の憎しみの部分が重すぎるような気がします。思い切って、冒頭の運命の出会いの部分をもっと短くして、最後の憎しみをもっと語るのも良かったかもしれません。

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