青春なんてない/青春/ボブ

僕に青春なんてない。青春というのは恋をしたり、友達とワイワイしたりすること。僕とは程遠いものだ。僕はただただ一人でいるのが好きだった。ある日はひたすら本を読みふけった。また違う日は外に出てみた。周りの人たちを確かに羨ましいと感じることもあった。怖いものなんて何もないかのように笑って。でも、自分がその立場になるなんて考えただけでもぞっとする。誰かと付き合ってみたいとも思ったりしたけれど、女子は女子で固まっていてそれだけでおぞましかった。青春には基本的に否定的だ。それでもなんだかんだ青春という言葉は僕のことを掴んで離さなかった。

ある日、僕は電車に乗りたくなった。決して行きたい場所があるわけではない。ただ電車に乗りたいと思った。持っているお金で買える一番高い切符を買った。休日だから電車の中はわりかし空いていて、サラリーマンの人も少なかった。僕は椅子に座って前にいる赤ちゃんと外を交互に眺めていた。

ずいぶん長く乗った。窓の外の景色は田んぼばかりになってきて、僕の乗っている車両にいる人は5人ほどになっていた。赤ちゃんもだいぶ前に降りてしまった。ふと前を見ると男の人が一人座っていた。彼は普段着で、腫れぼったい目をしていた。年齢は定かではないが20代半ばだろう。僕はなんとなく彼と自分が似ているような気がした。僕は彼に話しかけてみた。でも、本当に話しかけるわけではない。心の中で話しかけるのだ。僕はこの手法を何度か使ったことがある。すると返事が返ってくる時があるのだ。

こんにちは
こんにちは

この人は返事を返してくれるみたいだ。

あなたはなぜ電車に乗っているのですか?
きっと君と同じだよ

僕には青春がないのです
そう考えるから苦しいんだ

あなたの考える青春とはなんですか

この質問をしたところで電車は駅に着いた。彼は席を立ち、電車を降りてしまった。結局、答えは分からなかった。でもなんとなくこう思った。若い日々を友人と過ごしても恋人と過ごしても僕のように一人で過ごしてもそれはそれで青春なんだ。つまり青春という言葉を使ってしまえばどんなことでも青春になる。青春は広い。そして青春はつまらない。僕は次の駅で電車を降りた。

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「青春なんてない/青春/ボブ」への2件のフィードバック

  1. 青春という言葉から解放されているようで、やっぱり青春という言葉に囚われたまま終わっているのは、問題が解決しているようで解決し切れていないように思える。それと、外出したりしてはいるが最後まで他人と関わることがないので、自己解決しているようにしか見えず、それもまた主人公が問題を解決し切れていない感覚に結びついている。

  2. 青春を避けることはできず直視することもできないというのが、電車に乗ってあてもなくさまよう逃避行に結びついているのは良いと思いましたが、青春は結局のところ避けることができず、見ないことにして避けていて解決できていないような印象です。
    文「~た」で終わることが多く、ある意味では傳保を生んでいると言えますが、くどくもなると思います。

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