そうして変わっていくのでしょう/青春/θn

「会長さーん、次のテストなに出るのー?」
「お前そろそろウチの部活入ろう、な?」
「本当何着ても似合うとか、嫌味かよ・・・・・・」

「じゃあノート見つつさ、一緒に勉強しようぜ」
「そうすると他の部活の助っ人いけなくなるからなあ・・・・・・」
「ちょっと身長が高くて顔が派手なだけだって」

 どの時点から僕の中で「ハルくん」は「琴野」になっていたんだったか。
身長180センチ越えのいわゆるモデル体型、顔もかなり整っている。テストの点数は学年3位以内から落ちたことがない。スポーツは何をやらせてもMVP。助っ人として引っ張りだこ。生徒会長に立候補して、歴代最高の得票率をマークした。95%とかなんとかだったような。家は地元で一番でかい。伝統のある大家だっていわれている。

琴野治樹、僕のクラスメイト。幼馴染。

「ハルくん」だなんて呼べなくなっていた、が正しいのだと思う。幼稚園、小学校と一緒でその時までは普通に仲が良かった。確かに彼は他の奴らより成績も良かったし、好きっていう女の子も結構いたらしい。ただ優秀ではあったけど、あくまで僕らと同じ世界に立っていた。でも中学は違うとこに進学して、高校で再び同じになったときに会ったあいつはもう、別次元の存在のようになっていたわけで。

「なあ、雪下よ」
「何?」
「俺の欠点を三つあげてくれ」
「・・・・・・顔がいい、頭がいい、運動神経がいい」
「おい」
「あと家が金持ち。性格もいい」
「お前、人を傷つける才能があるんだな。初めて知ったよ・・・・・・」
「んん、褒めたんだけどなあ」
「嘘つくな!」

僕は気づかないふりをする。いつの間にか僕があいつの中で「トモ」から「雪下」になっていること。僕は悪くないんだってそうやって暗示をかけ続けるしかない。形容しがたい寂しさみたいなものが確かに、時々襲ってはくるけれど。

「高校とか早くおわんないかな」

苦しさを全て年齢のせいにして僕はまた遠くにいる彼から目を逸らした。

 心というのは何のためにあるんだろうか。
ふと、そんなことを思った。なければこんな苦しさみたいなものもないだろうに。なければ分かり合えないことへの苛立ちなど感じなくてよかったのに。

そう、昔は仲よかったんだ。それがどっかでかけ違った。そこまではわかる。
でもそれならどうかけ直せばいい?

雪下智也、俺のクラスメイト。幼馴染。

「あなたは他の子とは違う」
「その辺の子供とは友達になどならなくていい」
「琴野の家に生まれたという自覚を持ちなさい」
「なんであんな薄汚い公園で遊ぶの!?」

「だいじょうぶ。ハルくんはいいやつだから、ぼくは絶対ずっと、ずーっとハルくんの友達だよ」

親から受けるまるで帝王学のような何かに押しつぶされそうになっていた俺。それでもちゃんと小学校に行けて、友達と呼べる人がたくさんいたのは、「トモ」のおかげだった。

「ずっと一緒」実現されることのなかった言葉。そりゃあ当然のことだろう。高校生で小学生のような関係性のまま接していたら気味が悪い。それでも、そうじゃなくて、どうにかなったんじゃないかなんて自分もいる。

欠点がないことが欠点?
なんて嫌な人間だろう。

戻れないんだってそんなことはわかってる。
なんだか苦いと思った。初めて飲んだブラックのコーヒーのような、そんな苦さ。名前のわからない苦しみの味は、いつになったら消えてくれるのだろうか。

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「そうして変わっていくのでしょう/青春/θn」への2件のフィードバック

  1. テンプレと言えばテンプレなのだけど、それを気持ち良く読ませる力は文章力があるからなのだろう。
    やはり私は男子ではないので、この会話の感じとかが男子同士であるのかは分からないけど、スタジオでの男子の文章見てるとだいたいこんのぐらいのふわふわ感があるからそんなものなのかもと思う。
    私はもっと嫉妬でギッチギチな感じのが読みたいんですけどね! でもこの距離感では遠すぎて嫉妬すらも生まれない憧れと諦念みたいなものだと思ったから、これに求めるべきではないのですね。

  2. うわあすれ違いですか!めっちゃ焦ったくてキュンキュンしました。こういう男のもどかしい感じ良いですね!ただ、せっかく2人両サイドからの心境に触れたのだから、何らかのリンクを感じさせるなり、そこでまたすれ違いを匂わせるなり、構成を生かせばもっと良い文章になったと思います。ここでも余談ですが、ハルというあだ名がこの世で一番好きな男のあだ名なので本当に何か嬉しかったです(ボキャ貧)。

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