にかいめの/青春/やきさば

デートをしている。しかも相手は女子高生。俺が店長をしているファミレスのバイトの子だ。彼女は確か高校二年生だと言っていたから、今16歳か17歳だろうか。対する僕は45歳。万年雇われ店長の冴えないおじさんだったはずなのに、なぜ、こんな状況にいるんだろう。

彼女から告白されたのは3日前のことだった。あまりに予想外の出来事だったので、はじめは信じられなかった。罰ゲームでもやらされているのかと。毎週同じ曜日に仕事をするようになって1年ほどがたった今、告白されるまで彼女の気持ちに気づくはずがなかった。
「あなたのことが好きです」
しかし、彼女の目を見ればそれが嘘でないことは明らかだった。僕をまっすぐ射抜くような瞳がいつもの無愛想な彼女とは全然違って見えた。いつもの彼女は今時の女子高生にしては無愛想で、笑ったところが見たことがなく、感情の起伏が乏しい。大きな瞳に、申し訳程度についた小さな唇、制服のスカートから覗く細くて白い足。風が吹くたびに美しくなびく長いストレートの黒髪。彼女から告白されて、嬉しくないわけではなかった。自分が学ランを着ているような感情にかられる。こんなに顔を真っ赤にして真正面からぶつかってくる彼女は初めてだ。そのせいなのかどうなのか、とりあえず頭はパニックで驚きと嬉しさと、あと何かよくわからない感情のせいで変なことを口走ってしまった。
「デ、デートしてみればわかるよ…、こんなおじさん相手にするものじゃないって」
「デ、デートしてくれるんですか!?」
彼女にはそう聞こえたらしい。もう逃げ場がなかった。

店長の行きたいところに行きたいです…と、言っていたから一緒に映画を見て、俺の好きなスプラッタものを楽しんだ。そのあとは、カフェに入ってとりあえずブラックコーヒーを頼む。
「店長、おいくつですか?」
「え、45……」
驚いた顔をして彼女は砂糖をボンボン入れ始めた。慌てて俺は「ああ、違う違う!俺ブラックだから!砂糖いらないから!!」と彼女にストップをかけた。凹む彼女を元気付けようと、飲んでみたが、ゲロ甘で、喉を通すのが苦しいレベルだった。そういや若い時かっこつけてブラックコーヒー頼んで、相手が見ていない間に砂糖いっぱい入れて飲んだっけ……と、懐かしいことを思い出した。俺の青春の味かもしれないな……と思っていると彼女は話し出した。
「私、今まで陸上しかやってきませんでした。その当時、私にとっての青春は陸上だったんです。けれど、その陸上すら、怪我をしてできなくなりました。大好きで夢中になってやっていたものがある日突然なくなったんです。」
「そうなんだ……」
初耳だった。なぜこんなことを俺に話すのかとも思ったが彼女は私話し続ける。。
「でも、もう終わったことなのでいいんです。それに、今は新しく夢中になれるものができたから。」
また、あの時のように顔を上げて、俺をまっすぐ見据えて言った。え?それってもしかして…俺のこと?俺を好きになったこと?
長居していると、周りの人々が俺たちの関係を疑いはじめた。親子かな…?え?まさかエンコー……??我慢できなくて思わずカフェを出た。
帰り道を歩きながら、少し前を歩く彼女を横目で改めて見ると、やっぱり綺麗だった。いつもと違う髪型も、お洒落したワンピースもよく似合っている。
ああ……だめだ。俺は君には応えられないよ。その若さに胸が締め付けられて、周りの目が気になって…、それだけじゃない。何より僕が、傷つきたくないんだ。僕は……君の2回目の青春になれないし、なりたくないんだよ。
駅に着いた。これでデートは終わりだ。考えてみると夢のような時間だった。彼女は楽しかっただろうか。気をつけて帰れよ。

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