あの日起きた現象を僕はまだ理解できない。/はな/オレオ

テッテッテテテッテテー♪

「ああああぁああぁ!何でジャンプしねーんだよ!今ちゃんと押しただろ!」

平日にも関わらず、俺はいつものように家でダラダラとゲームをしていた。自分のミスをボタンの反応の悪さのせいにしてクソゲーを散々貶したところで空腹に気付いた。

「あー……ラーメンでも作るかめんどくせー」

自分の部屋を出て階段を降りていると丁度ダサいニット帽を被った父親が仕事に向かう所だった。

「ぽんたんおはよう~。父ちゃん仕事行ってくるからお昼はテキトーに済ませてね!でも野菜はちゃんと入れるんだよ!」

学校にも行かず家でゲームばかりしているどうしようもない息子にも父親は嫌な顔一つせずに普通に接してくれた。だけど、それが逆に辛かった。どうせならいっそのこと責めてくれた方がまだマシだと思った。

「へーい……」

やる気の無い返事をして父親を見送ると、台所の引き出しからインスタント麺を漁った。

「塩味しかねーのかよ……」

仕方なく鍋に水を入れて火をつけ、ザッポロ二番の袋を開けた。

食べた後は何をしようかとボーっと考えていると、お湯はポコポコと沸騰の合図を送ってきた。割れた麺のカスを袋からお湯に流し込み、その後にすぐさまインスタント麺を投入する。

待っている間に意味もなくかめはめ波の練習をしているとあっという間にラーメンはいい具合になっていた。

「やっべ、忘れてた。」

ラーメンを器に移そうとする所で野菜を切っていなかった事に気づき、慌てて冷蔵庫から取り出したキャベツを乱雑に切り、ラーメンと一緒に煮込んだ。

少しキャベツがしなってきた所でようやくラーメンを器に移したが、案の定、麺はのびきっていた。

「まぁ、のびてる方が好きだしいっか。」

最後の仕上げに、タッパーに入った大好物の自家製メンマをラーメンに添えた。

「よし、喰うか」

野菜と麺をぐちゃぐちゃに混ぜて、バランスよく野菜と麺を頬張った。ラーメンを口いっぱいに詰め込みながら器の下に沈んだメンマを麺の上に戻す作業を進める。

「メンマ、みーつけた!」
「見つかっちゃった!」

「……え?誰だお前。」

突如、隣にメンマのような形をした生物が現れた。

「メンマです。」
「え、きも……。怖いんだけど……。何なの?」

状況が飲み込めないまま、とりあえず何者なのかを問う。

「僕、ザッポロ二番のスープで溺死してしまったんです」
「意味わかんねぇよ!何で俺の前に現れるんだよ!」
「実は、お願いを叶えてほしいんです」

何もわからないまま、メンマは唐突に熱い眼差しで頼み込んできた。もはや汁なしラーメンと化したザッポロ二番塩ラーメンを横にとりあえず話だけ聞いてみることにした。

「願いって何だよ」
「弟のメンマを……主役にしてほしいんです」
「はぁ?意味わかんねーよ!」

するとメンマは急に俯き、深い思いを抱いているのだと思わんばかりの真剣な面持ちで語り始めた。

「僕たちっていつも脇役じゃないですか、酒の肴とか、ラーメンのトッピングとか……。もうウンザリなんです!一度でもいいから主役になりたいんです!だから弟を……メンマを主役にしてくれませんか!」

「そうか……」

割りとどうでもいい話しだったが、とにかくこの状況を打破したかった俺は、神妙な顔をしながら深く頷いた。

「話はわかった。俺が責任を持ってメンマを主役にしてやる!だからお前は何も心配せず成仏してくれ!」

「ありがとう……これでやっと、心置き無く……」

そういい残すとメンマは光の粒子になって消えて行き、のびきったザッポロ二番の横には広告のチラシが折りたたんでおいてあった。

ゆっくりとチラシを開くと、ひどく汚い字でこう書かれていた。

「いつもメンマを美味しそうに食べるぽんたんが大好きです」

「気持ち悪い……」

チラシをゴミ箱に投げ入れ、新たに取り出したメンマにマヨネーズを付けて口に放り込んだ。

0 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 5 (0 投票, 平均点: 0.00,  総合点:0  |  
投票する為にはユーザ登録する必要があります。
Loading...

「あの日起きた現象を僕はまだ理解できない。/はな/オレオ」への5件のフィードバック

  1. こんな話、このテーマじゃないと書かないだろうなと思うと、なかなかに面白い。が、話としてはなんとも凡庸で刺激に欠ける。もっと、ハチャメチャでも良さそう。おそらくメンマが早めに出て来ればハチャメチャにはしやすいと思う。

  2. そのままギャグ漫画にできそうだなというのが最初の印象だった。メンマが溺死ってなんだよ、とかツッコミどころ満載で面白かった。

  3. め、メンマは結局なんなんですかね・・・。個人的にはそのメンマに課せられた宿命なり、語り手の男性がそれに巻き込まれていく様なりを読みたかったです。こういう文章は日常パートとのバランスが難しいんだなあと思いました。

  4. まさかの、めんまがメンマになるという発想は予想外でした。オマージュってよりはパロディになるんですかね?自分でも細かい区別はつきませんが……自分はシュールな冗談が好きなので、楽しみながら読むことができました。まだ序章という感じなので、2章以降が楽しみな文章です。

  5. ツンデレですか。最後にはメンマ食べるんですね。
    異常なことが起こるとたいていのストーリーはなにかしら反応を返すので、この主人公の淡白さは新鮮でした。
    淡白というよりいっそ否定している感じは、現実にこんなこと起こっても実際こんなもんなんだろうなあと思える現実味がありました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。