すべての人の心に花を/花/JBoy

 小さい頃おばぁが話してくれる昔話が好きだった。今とは全く違う生活、人々。昔の話のはずなのに当時の自分にとっては新鮮で、でもやっぱりどこか懐かしい気もして。話の中にはちょっと怖くなるようなものもあったけれど、おばぁの優しい語り口はいつも僕を安心させてくれた。

 おばぁは生まれも育ちも沖縄で一度も沖縄から出たことがないという。さとうきび農家の5人兄弟の紅一点で、小さい時から負けん気が強かったとか。
「近所の男の子を泣かせてばぁっかで、よくお父ちゃんに叱られてたねぇ」
と目じりに皺を寄せてにこやかに言ったものだ。

そんなもんだからみんなおばぁをたえ坊と呼んだ。ガキ大将たえ坊は日が落ちるまで毎日友達と遊んでは泥だらけの服で帰って来るのだった。そんなたえ坊は男女関係なくみんなの人気者だったらしい。なんだか自分の話を聞いているみたいだ。
 でもおばぁも年頃になるとやっぱり「たえ」になる。一つ上の先輩で名を吾郎といった。おばぁは女学校へ、彼は旧制中学へと通っていたが、時間を見つけては逢いに行ったという。「おじぃはねぇ、前はすっごいハンサムやったね」
と頬を赤らめ茶目っ気たっぷりに言った。こういうことは古今東西どこでもいっしょだ。

その後学校を卒業してすぐにおばぁと吾郎は結ばれたという。当時珍しく恋愛結婚だった。吾郎は家業を継ぐので、おばぁは彼の家に入った。子宝にも恵まれた。おとうとおじちゃんたちだ。

「おじぃが働きにでるときゃ握り飯持たせてな、出てった後に掃除洗濯して子供たちの世話して。ほいでうちにゃ畑もあったから、畑の手入れしてよぉ。おじぃの好きなひまわりはよく面倒見とった。大きな花が咲いたら、家族みぃんなで大喜びして、天気のいい日にゃ握り飯いっぱい持って見に行ったわ」
おばぁは遠くを見つめながら目をキラキラと輝かせて言うのだった。

おばぁの話は人を引き付ける。まるで自分がおばぁたちの暮らしていた世界に迷い込んだ様だった。

 そんなおばぁの話の中でもとりわけ熱心に聞いていたのが戦争の話だ。いつもにこにこして話をしてくれるおばぁだったが、この話をする時だけは少し様子が変わった。だから子供ながらにとても重要なことなんだと自分にはわかった。

 おばぁ27歳の春、太平洋戦争も劣勢の中アメリカ軍は沖縄本島へと上陸した。すでに出兵していたおじぃが、この沖縄戦で戦死していたことをおばぁは後になって聞いた。

おばぁは子供たちを連れて必死で逃げた。あたり一面人の死骸の山で、透き通るように美しかった海も真っ赤に染まっていた。
「べぇ軍に捕まったら殺されるって言われてたんだけども、ほんとは違ったのよ。べぇ軍の人らは女子供にやさしくて、傷の手当てしたりちょこれいとくれたりしてな。むしろ怖かったのは日本軍のほう。血相変えて食いもんよこせって、そら怖くってな…。」
おばぁはおびえた表情で言った。

おばぁの話はどんな教科書よりもいろんなことを教えてくれる。教科書に埋没した歴史を掘り起こして見つめなおす機会を与えてくれるのだ。

「どっちが悪だ正義だなんてぇのはわからん。人にはそれぞれの信念があるんだから。
でもな、大事なのは人は生きてるっちゅうこと。お前も私も生きてる。それをちゃあんとわかっとかないといけないよ。いっぱい泣いて、いっぱい笑ってしっかりと生きていきなさい。」

そう言うとおばぁは頭をポンと叩いて優しく微笑んでくれたのだった。太陽みたいなおばぁの笑顔が大好きだった。

久々に家族そろって帰郷することとなった。
「ただいまぁ。」
「おおばば、またお話聞かせて~」
今年小学校に上がる娘もおばぁのファンになってしまった。

おばぁ自慢のひまわりは今日も燦燦と咲いている。おじぃとおばぁがいて、おとうにおかぁ、そして自分に妻に娘。こうして人はつながってゆくのだろう。

0 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 5 (0 投票, 平均点: 0.00,  総合点:0  |  
投票する為にはユーザ登録する必要があります。
Loading...

「すべての人の心に花を/花/JBoy」への5件のフィードバック

  1. 業務連絡なので以下の人は読み飛ばしてください。
    JBoyくん、投稿方法が間違っています。今回は代わりにwordの.docxファイルを元に投稿しておきましたが、このブログ上に.docxや.pdfファイルをアップロードするのはやめてください。
    前回のWSでも伝えたはずですが、一般的なブログと同様の方法で課題の提出をお願いします。
    もし投稿方法が分からなければメールなりで聞いてください。いつでも受け付けます。
    それではWSでまた。

  2. 戦争の話と、そのあとの家族のほっこりする描写、テーマである「花」の描写が対比されて、爽やかな読後感がある。ひまわりにしたのは「太陽みたいなおばぁの笑顔」から?おばぁの快活さと戦争を経験したことによる強さ・脆さみたいなものを表現する花は他にあったのかなと思った。

  3. なんだか家族紹介の作文を読んでいるようだった。話の筋が祖母の紹介に終止しているのと、感情表現が直情的なのがその原因かと思う。正直あまり成熟しているような文体ではなかったので、最後娘が登場したのが意外だった。

  4. 始終素直というか、あまりに癖がなさすぎてどこに目をつけていいのかいまいちわからない文章だったように思う。綺麗な締めを持ってくる程の出来事が語られているわけでもないし、なんというか、本当に素直でどこをどういじれば良いのか、というよりもむしろどこもいじらず素直さを追求した方が人柄にも合うように感じる。文章の中から自分自身の思いや伝えたいことが見つけられないのがその原因かと思ったので、読者もそうだが自分自身の意識を向けて書いてみると良いのではないだろうか。

  5. 最後におばぁが死んだりするのかな、と少し予想していたが、けっきょく今日も平和だ…みたいな感じで終わって、小説や漫画の番外編(?)のような雰囲気を感じた。
    前に書いた「起承転結」のようにストーリーにメリハリをつけるか、場面を視覚的に浮かばせるような描写をするか、おばぁの語りや私との関係性の中で何か感情的にさせるものを含めるか、でないと、全体的に何がしたかったのかよく分からずに終わってしまう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。