友人/はな/シュウ

彼女との出会いは私の運命を大きく変えるものとなった。

出逢ったのは、もう5年前私たちは、中学三年生だった。その日も私はいつもと同じ学校からの帰り道で、に公園のそばを通ると彼女はベンチに座って本を読んでいる彼女を見つけた。

ふと目にとめただけだったのだけれど、彼女は私のほうに目を向けてきた。目が合ってしまった。

すると彼女は、読んでいた本を鞄にしまって、私のほうへ歩いてきた。ずかずかと。私はというと、彼女がこちらへ歩いてくるのを、ただただ待っているしかなかった。というより、どう行動したらいいかわからなくなっていた。

私の前に来ると彼女は、私に言った。

「あなたは自分のまわりの世界をどう思う?」

唐突な質問に私は呆気にとられてしまった。ことばが出なかった。周りの世界なんて考えたこともなかった。そんな私を見て、彼女は先を続けた。

「つまらないと思わない? 子供は社会のリソースとして、大切に育てるなんて言っているけど、私たちは望んでもいない教育を押し付けられて、定期的にカウンセリングを受けて壊れる子供が生まれないように」

彼女が何を言っているのか突然のことでわからなかった。依然呆気に取られていた。彼女はそれでも話し続けた。

「それでも、結局は優劣がつけられる。能力が劣っている子供は、それなりの扱いを受ける。大人にも、子供にも。それでも、君は必要だよ、なんてやさしい言葉で努力させ続ける」

「それで? どうしようっていうの……」

私はここにきてようやく口を開くことができた。

「私はもううんざり。だから、私はそんな社会に一撃与えたい。自分たちが無自覚にしていることを鼻先に突きつけてやりたい」

彼女は一呼吸おいて言った。

「だから、自殺して、社会にダメージを与えてやる。あなたも一緒にしない?」

そのとき、すぐに逃げればよかったのか。それとも、そんなのおかしいよ、なんて正論を振りかざして止めればよかったのだろうか。

彼女の鋭い言葉の切っ先が私の胸に刺さったようだった。彼女の言葉にひきつけられてしまった。

彼女が私に目を付けた理由ははっきりしない。私が支配しやすそうだったのか・私に彼女と似た空気を感じたのか。それとも、だれでもよかったのか。

そのあとは、彼女のカリスマ性に引っ張られるように、毎日議論を交わし、自殺の方法を話し合ったりした。

話し合った結果、飛び降り自殺を決行することにした。他にもいろいろ方法があったけど、他人の目につきやすいということで、これがベストだということになった。

決行は明日の朝、登校の時間、学校の近くのマンションにきまった。今となっては、彼女の言葉に乗せられて、自分の意志といっていいかは、定かではなかったけれど、彼女は本気だった。

当日の朝、私たちはマンションに登る。

「いい? 1.2の3で飛び降りるのよ。ためらっちゃダメ」

私たちは飛び降りた。

はずだったのだが、私はできなかった。彼女ほどの意志はなかった。

私の眼下には、真っ赤な花が色鮮やかに花開いていた。

 

今日は彼女が死んでからちょうど5年、約束を反故にしてしまったこと。彼女一人死なせてしまったこと。あれから後悔しなかった日はない。忘れたい記憶だけれど、私は向かい合わなければいけない。

泣きそうになりながら、彼女の墓へ花を供える。

元ネタ「伊藤 計劃『ハーモニー』

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「友人/はな/シュウ」への4件のフィードバック

  1. 流れが綺麗でわかりやすく、良いなと思った。もう少し字数があればシュウさんらしい言い回しとか、いろんなものが出てきて、オマージュの楽しさが出たような気がする。話はしっかりしているけれど、もっとオリジナル感があったら楽しかったと思う。
    女の人との討論の会話は出来印象深いものとなった。

  2. 原作がわからなくて調べたんですけど、2人が自殺を図って片っぽだけが死んでしまうというシーンがあるんですね。「私」が死ねなかったのをすごく後悔している割には「私」の死ぬ理由が「彼女」のカリスマ性に引っ張られたという以外に読み取れなかったです。もう少し「私」自身の死にたいという意志を表示すれば、自殺できなかったシーンや後悔のシーンが映えるかなと思いました。

  3. 原作を知らないので調べつつ読みつつしました。世界にうんざりしたから自殺するというのは私には起こり得ない発想なのでひえええ、と本当に声に出して読んでしまいました。
    字数の関係か物足りないという印象です。出会ってから自殺するまでの描写が淡々としていて、なんだか微妙に感情移入できないというか、もっと物語に入り込みたい!と思ってしまいました。

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