夜の想い/鼻/T

保育園に通っていたくらいの頃、私は夜が嫌いだった。

私の家では、私が生まれてからずっと私、お父さん、お母さんの家族全員が同じ部屋に布団を3つ並べて寝ていた。お父さんとお母さんは共働きで、朝の出勤が早かったから夜は基本すぐに寝てしまう。だけど私は寝付きが悪い子だったし、保育園でお昼寝もしているから、すぐに眠れないことが多かった。二人とも寝ちゃってお父さんが大いびきかいたりしている部屋の中で、私だけが眠れないでいて暗い夜に起きているっていうのがすごく寂しくて心細かった。でも寝ている親起こすと怒られそうとか思って、遠慮してずっと我慢していた。

それでもある日、私は風邪をひいて鼻が詰まっていて、夜本当に苦しいときがあった。いつもみたいに眠れるまで我慢してようと思ってたけど、その日は息をするのが辛くて我慢できなくて、寝ているお母さんをはじめて起こした。怒られるかもしれないけど隣で寝ていたお母さんの肩を叩いて、鼻が詰まって眠れないのと半泣きで伝えた。

夜中に突然起こされたお母さんは最初少しぼーっとしていたけど、泣いて訴えている私を見てすぐに状況は察したという感じで、

「彩音、鼻が詰まっているときはね、横を向いて寝るといいんだよ。片方の鼻だけ通るようになるから。」

と言った。

言われた通りに横を向いて寝てみると、上にきた鼻だけなぜか詰まりがとれて、息がしやすくなった。もう片方の鼻は詰まったままだから完全にスッキリした訳じゃないけど、それでもだいぶ苦しくなくなった。

びっくりした私がほんとだ、すごいねって言うと、お母さんはふわっと笑って、

「そうでしょ、なんでそうなるのかお母さんもわからないんだけどね。」

とか言いながら、私の毛布を掛け直して頭を撫でてくれて、私が眠るまで起きていてくれた。息がしやすくなったのと、お母さんが隣で起きていてくれることに安心した私は、それまで寝付けなかったのが嘘みたいにすぐに眠ることができた。それからはお母さん起こしても怒られないってわかって、嫌いな夜がちょっと楽になった。

その後小学校の途中から自分の部屋で一人で寝るようになったし、鼻が詰まって眠れないとかいつの間にか思わなくなった。眠れないなら起きてればいいし。あのころ眠れない眠れないって思っていた時間って、絶対そんなに遅くなかったよね。たぶん今布団に入る時間より早いよ。

 

でも中学生になった今も、風邪をひいている夜はあの時のお母さんの優しい口調とか表情とかをなんとなく思い出したりする。風邪ひいてなくても、なんか眠れない夜とかにふっと浮かんできたりする。そんなことお母さんには言ったことがないし、これからもたぶん言わない。最近ずっと喧嘩してばっかりだし。

私が生まれてから14年経って、小さい頃の記憶なんてはっきり覚えているものなんて少ないのに、そんな小さな夜の出来事が心の片隅に残っているのは、自分のことだけど私にもよくわからない。横を向いて寝ると片方の鼻の詰まりが抜ける理由も同じようによくわからないままなのだ。

 

 

 

参考:FISHMANS 「夜の想い」、「いかれたBaby」

 

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「夜の想い/鼻/T」への4件のフィードバック

  1. 小さい頃なかなか寝付けなくて、でも親は起こせないからひとり我慢する・・・ってすごいあるあるだと思いました。優しい文体が母との思い出の安心感を伝える。中学生となった今、ならわたしが生まれて16年ではないのではないでしょうか。

  2. 改行等レイアウトに関してはYDKのものと被ってしまうので省略させてもらいます。
    当初参考元が表記されていなかったのですが、更新で追記されましたね。ありがとう。
    お母さんが「ふわっと」笑うところでの安心感はかなりのもので、構成の勉強になります。
    スタジオブログに投稿先が変更されたことで課題提出後の訂正が容易になったので、気づいたところは手直ししておいてください(例: 「辛くて我慢できないくて」、既出ですが「16年」)。提出前にWordで校正チェックをかけるのもいいでしょう。

    彩音ちゃんは前回に引き続きの登場ですね。何か思い入れがあるのでしょうか。またWSで聞いてみたいと思います。

  3. YDKさんと同じく、「」の閉じカッコ直前に句読点を置かないことをお勧めします。

    そういうのあるよね、と共感させるのが上手い文章だな、と感じました。日常的に起こる出来事を共感させる方法は勉強したいです。
    終始淡々と書かれているような印象を受けました。あるよね、という共感は確かに起こりますが、突き刺さるようなインパクトはないので記憶に残りやすいか、という面では微妙かもしれません。

  4. 音楽というものはなんとなくその時の雰囲気に似ているからと言って全然関係ないのに浮かび上がってくる時とかもあるから、このあなたの物語が立ち上がっているところにbgmあるいはふっと、なんとなく流れているのだろうか。正直に歌詞の内容をそのまま反映させるとやはり曲の出来に作品の出来がひっぱられることになりそうだから、この方法はいいなと思った。
    私は幼少期の感情をすくいあげて丁寧に描写する話が大好きなのだが、もうワンパンチほしいかも。
    それは母の言葉が入った後に、主人公の心理描写で終始しているのがそう感じさせる要因だろうか。この話は過去回想的な感じで書かれているのなら、最後の手前でふっと現在の視点に戻ってこれるときゅっと締まるのかも。具体的でなくて申し訳ない。

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