華逆じいさん/華/縦槍ごめんね

もう15回もオーディションを受けているが、決まって言われる事がある。

「君にはさぁ、なんていうか華がないんだよね。」

高校時代は演劇部に所属していた俺はそれなりに楽しい学園生活を送っていた。卒業と同時に舞台俳優の道へと進むことを決意し上京してきたはいいが、どれだけ努力しても現実は甘くなかった。

「華か… 華なんてどうやったら身に付くんだよ…」

そんな独り言とともに家路に着いている最中、見知らぬ男が何かを言いながら近づいてきた。

「あなたに華を授けましょーう。あなたに華を授けましょーう。」

なんだこの気持ち悪い男は、頭がおかしい。とにかくこういう種類の人間には近付かないほうが身のためだ。そう思った俺は、すぐその場を立ち去ろうとした。しかしやばいという気持ちとは裏腹に俺はその場に留まった。彼の言っていることに少し興味が湧いたからだ。どんなに怪しい男でももしかしたら俺に何か好機をあたえてくれるかもしれない。とにかく俺はなんでもいいからすがりたかったのだ。そうして俺はその男に声をかけたのだ。
「その願い、どうやったら叶えられるんですか?」
「どうということもありません。私の持っているこの灰を頭から被れば、あなたの人生が途端に輝きだしますよ。」
尋ねた私に男はにやつきながらそう答えた。怪しいと思いながらも言われるがまま男の持っている瓶の中に入っている灰を頭から被った。その瞬間俺はそこに倒れた…らしい。というのも目が覚めたとき俺は病院のベッドの上だったからだ。倒れている俺を見つけた人が救急車を呼んでくれたそうだ。その場に変な男が居なかったかと聞いても誰もその男のことは見ていないといっていた。1日入院してその次の日無事に家に戻った。

その出来事からしばらくして、少しずつだが俺自身ではなく俺の回りに変化が現れ始めた。まぁ具体的に言うと…急にもて始めた。よく分からないが雰囲気が変わったらしい。髪型や顔立ちが変わったというわけではないのにこれはどういうことだ。これが華というやつなのか?それから徐々にその変化は大きくなっていった。オーディションにも受かるようになり、もらえる役もどんどん大きくなっていった。そして、あの晩から2ヶ月が過ぎる頃には俺は日本を代表するスターになっていた。正直俺は調子にのっていた。だがそれも無理なかった。今や日本で俺のことを知らないものなど誰もいないのだから。

しかしそれから更に1ヶ月が経過し風向きが変わってきた。俺は人気者になりすぎた。家の回りには毎日毎日何十人もの人が取り巻き、家から出ることもできない。何とか変装を施し、家から抜け出すことが出来ても、発見されれば追いかけられる日々。気が付けば方針状態のまま俺はかつて灰を持った男と出会った道をさまよっていた。

「頼む…もう華なんていらない! だから誰でもいい。助けて…」

そう呟くと、前方から前にも聞いたことのあるような声が聞こえてきた。

「あなたの華を奪いましょーう。あなたの華を奪いましょーう。」

あの男だ。そう思った瞬間、私は神にもすがる気持ちでその男のもとに駆け寄った。

「俺に、そ、そ、そ、その灰をくれ!」

「構いませんよ。ですが本当にいいのですね?」

その男はそうにやつきながら言った。

「構わない。とにかく早くしてくれ!」

「了解しました。」

その言葉を聞くとすぐに俺はその男の持っていた瓶を奪い取り、そこに入っている灰を頭から被った。するとまた俺はそこに倒れた。今度は病院ではなくその道の上で俺は目を覚ました。そして、通りかかる人々が俺を追いかけてこないことを確認して、本当に俺からは華がなくなったということに気がついた。少し寂しく感じたが今までのことを思い返し安堵した。

「助かった。本当に良かった…」

あの不思議な男に感謝しながら、俺は呟き、家路に着いた。ところがしばらくして俺はある違和感に気がついた。誰も俺のことを見ない。というか俺という存在が見えていないようなのだ。そして家につきふと鏡を見ると、そこには俺の姿はなかった。そして日本中から俺という人間は消えた。

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「華逆じいさん/華/縦槍ごめんね」への4件のフィードバック

  1. 放心状態かな、と。
    元ネタが知りたい!なんだか世にも奇妙な物語みたいだなあと思いました。怪しい男の人が、華を〜と唱えてそうで君の悪い怖さがあった。
    元ネタがわからないからどうも言えないが、オリジナルな部分がどこか、知りたかった。

  2. 世にも奇妙な物語にありそうな話でおもしろかったです。起承転結がしっかりしてて、まとまりがありすごく過不足なく書けてるなという印象を受けました。題名が「華逆じいさん」なので、物語に出てくる「男」を「老人」とか「おじいさん」という表記にするともっと雰囲気がでたかもしれないですね。

  3. 花さか爺さんを面白くアレンジしていて、オチが面白いなと思いました。起承転結がしっかりしていて、良いと思います。意識的にしているのかわかりませんが、一人称が変わっているのが気になりました。
    僕がいつの言われていることなのですが、改行などをうまく使うと、文章にテンポや文が強調されたりするので、意識してみるとよいと思います。

  4. すごい!面白い!花咲か爺さんを基にしてここまで書けるとは!オチもしっかりしているし、素晴らしいと思います。
    前の方もおっしゃっていますが、タイトルがじいさんなので、おじいさんや老人にした方がより良いと思うし、空白、改行ももっと上手く使えるとより読みやすくなり物語も進んでいくはずです!

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