高嶺の花/はな/さくら

彼女は高嶺の花だ。

彼女と僕の間に直接の面識はない。当たり前だけど彼女と話をしたことも一度もない。
唯一繋がりがあるとすれば、僕の友達に1人、僕と彼女の共通の友人がいる。あいつは彼女と地元が同じで、小学校中学校、そして高校まで同じ所へ通っている、いわば幼馴染だ。

毎朝同じ電車で地元の駅から通っているらしい。とはいえ、2人はあくまで「幼馴染」であり「友人」である。

僕は、彼女があいつと談笑している時の他愛もない笑顔に心を打ち抜かれてしまった。うん。なんというか……とてもかわいい。簡単に言えば僕のタイプ、ストライクゾーンを具現化したもの、ってことになるのかな。

いつのまにか彼女の存在は、僕が学校に毎日通う理由という、一つの概念になってしまうほど大きなものとなっていた。面識ないのに。

― 魔法みたいな、そんな超自然的なもので彼女にこっちを向かせてみたい。アブラカタブラ!で彼女が僕に一目惚れ……なんて。

― 僕は高校生だし、車も持ってない。綺麗な外車に乗って、サングラスを外しながら、「海まで乗って行かない?」なんてキザな言葉を吐いて……なんて。

― 毎朝彼女が僕のベッドの前にやってきて、「おはよう」って笑顔で起こしに来てくれたら……ああ、それはなんて夢のような朝だ。僕は年中無休で会社に行ってやる……なんて。

なんてなんて、と妄想ばっかり垂れてみたが、残念ながら僕のスペックは彼女にはどう考えても不釣合いだ。背は低いしブサイクだし……

美女には美男が似合うんだ。背が高くて細身の、湘南の海と焼けた肌が良く似合うイケメンだ。見たことないけど。

人を寄せ付ける力も、勇気もない僕は、彼女と仲良くなるためには偶然、そして夏特有のあの特別な空気感やノリの勢いに任せることくらいしか希望がない。やっぱり怖くて手が出せないや。

結局僕の彼女への片思いは、僕の勝手な妄想だけで終わってしまいそうだ。ああ……なんて情けないんだ。夏の魔物とやら、僕を彼女のもとへ送り届けてくれないか……?

何一つ行動に起こせないヘタレな僕は、その自分の不甲斐なさをこんな言葉で正当化して自己暗示するしかなかったのだ。

彼女は高嶺の花だ。


 

モチーフ: back number 「高嶺の花子さん」

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「高嶺の花/はな/さくら」への5件のフィードバック

  1. 湘南の海が似合う男という表現が、なんとも小市民的発想で面白い。オマージュは元を知らない人にも読ませる様に書く力も必要になるなと感じた。もう少しない様に工夫があっても良いのではないか。筆者の言葉があまり見えてこないし。

  2. とりあえずオマージュ元も丁寧に書かれていたので聞いてみた。なるほど、ここはこういう感じになってるのかという感じで読んでみたが、それ以上何かあったわけでもなく終わってしまったのが少し勿体無い気がした。設定以外の何かしらの要素を組み込めたらもっと面白くなると思った。

  3. この歌を知っていたので、読みながら思わず笑ってしまった。オマージュというテーマに忠実に沿っている感じがして、オマージュってこういうことか、と教えられた。

  4. back numberいいですね。他の曲も聴いてみたい。どうせならもっとこう、文章にしたからこその強み!みたいなものが欲しいかなー、なんて思ってしまいました。妄想が並べられていくのはちょっと面白かったです。

  5. ツンデレですか。最後にはメンマ食べるんですね。
    異常なことが起こるとたいていのストーリーはなにかしら反応を返すので、この主人公の淡白さは新鮮でした。
    淡白というよりいっそ否定している感じは、現実にこんなこと起こっても実際こんなもんなんだろうなあと思える現実味がありました。

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