思い出の登校路/初恋/オレオ

学校に行くときは決まって近所の仲の良い友だち3人と一緒に登校した。
準備できた者から、ピンポンを鳴らして呼び出すというのが僕らのセオリー。
でもある日、僕は準備を早くしすぎたことがある。
流石に皆まだ準備出来ておらず、その日僕は一人で登校することにした。

教室に入るとまだ、誰も来てなかった。電気も付いていない薄暗い教室で文房具箱に教科書とノートを入れていると一人の女の子が教室に入ってきた。

みおちゃんはクラスで一番の人気者だった。
誰とでも仲良く出来て、先生にもとても気に入られていた。
頭もよく、運動神経も抜群で、八方美人という文句のつけようのない完璧な存在だった。

「おはようー!一番取られちゃった」
そう言って無邪気に彼女は笑った。
「こんな早くに来てどうしたの?」
そんな会話から始まり、気づいたら教室にはほとんどのクラスメイトが既に集まっていた。
時間が一瞬に過ぎて行くような感覚だった。
彼女と僕だけの間での会話が出来ることが純粋に嬉しかった。

それからというもの、僕はわざと早めに準備して家を出るようになった。
彼女の家は僕の家から3分ほどで着く距離だったこともあり、時々タイミングよく登校中の彼女に遭遇することがあった。もちろん、そういう時は一緒に話しながら学校へ向かった。
たまに、彼女と遭遇できずにトボトボと歩いて登校する日もあったけど、後ろから彼女が声をかけて追ってきてくれたこともあった。

そして僕たちはいつしか手を繋ぎながら歩くようになっていた。
いつからこうなったのかはよく覚えていない。
その頃の僕は学校に行くのが楽しみで仕方がなかった。
楽しそうに喋りかけてくれる彼女に会うことこそがいつか僕の一番の楽しみになっていたのだ。
そんなことが続き、同学年の中では僕と彼女の色々なうわさ話を度々聞くようになったが、悪い気はしなかった。事実では無かったが周りにそう思われていることに優越感すら抱いた。
でも、お互い特別な感情を互いに抱いている確信はあったものの、今までの関係が壊れるのが怖くて僕は何も言い出せず、今までどおりの関係が続いた。
そんな中、中途半端な時期に突然彼女は転向することになった。親の仕事の都合らしい。
彼女からではなく、先生の口から僕はそれを知った。
彼女は僕と目を合わせてくれなかった。
何故、彼女は僕に言ってくれなかったのだろう。
僕と彼女との距離が一気に遠ざかった気がした。

僕はそれから早く登校するのをやめた。
彼女と会うこともなくなり、今までの関係は雲のように流れて消えていった。
それ以来言葉を交わすことのないまま彼女はどこかへ行ってしまった。
たまに、彼女の住んでいた家をよぎるとふと思い出す。

彼女は今どうしているだろうか。

0 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 5 (0 投票, 平均点: 0.00,  総合点:0  |  
投票する為にはユーザ登録する必要があります。
Loading...

「思い出の登校路/初恋/オレオ」への2件のフィードバック

  1. 八方美人ってマイナスなニュアンスが多いと思う。また、そんな中、中途半端な時期に、という表現は重なってしまってる気がする。

    彼女と話すようになってから、手を繋ぐまでこと細かに書いているわけではないからこそのドキドキ感を味わうことができました。

    今回は実話よりで…と言うことでどうしても現実はドラマチックではないから、難しいとは思うけれど、既視感が強かった。もう少し表現や気持ちを織り込むと差異化できると思う。

    距離感一気に遠ざかる、という部分は落差があってよかった。

  2. 八方美人は褒め言葉ではないのでは。誰にでも優しい、とかでいいと思います。
    自分が懐古厨な部分があるので、こういう尻切れとんぼのような過去を思い出すというのは好きです。でもその割には事実報告のような印象を受ける文体?だったので、改行など、雰囲気のある終わり方になればもっと良かった気がします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。