いま思えば/初恋/ゆさん

初恋なんて言うけれど、誰かを好きになるときは、いつだって初恋のつもりだ。毎回毎回、「今回が一番本気、一番好き、一生大好き」なんて思って、これまでの自分の恋愛はいかに稚拙なものだったか振り返って、ひとりで恥ずかしくなったりするものだ。

 

その稚拙な思い出の中でも、忘れられないひとが一人いる。

高校一年のクラスで出会ったMくんだ。顔はイマイチだったけど、優しくて面白くて、クラスの中心でみんなから愛されるいじられキャラだった。

Mくんが授業中に鳴らした携帯の着信音が、わたしの好きな曲だったことから仲良くなった。ふたりとも当時はボカロにハマっていて、毎日課題や予習をやりながらくだらないことをメールした。わたしは基本的に男の子があまり得意ではなく、ほぼ初めてできた男友達の存在が、自分の中でどんどん大きくなっていくのに時間はかからなかった。

 

Mくんには好きな人がいた。同じクラスのあやちゃん。かわいくて優しくて明るくて、みんなから大事にされているような子だった。その時点でわたしはもう諦めきっていたような気がする。あやちゃんにはできない、アニメや漫画の話ができるだけで十分だと思ってていた気がする。

 

Mくんのことを忘れられないのは、当時わたしが彼のことを「好き」だと認識していなかったからだと思う。高校を卒業して離れ離れになって、ようやく自分の気持ちに気付いた。「ああ、今思えば好きだったんだろうな~」なんて、いまさら思っても仕方ないことだけど。というか、「好き」だったことにしたいだけなのかもしれない。自分の喪な高校生活に少しでも彩りを加えてあげたいという、我ながら悲しい悪あがきなのかもしれない。

 

この間Mくんに久しぶりに会って、初めて一緒にお酒を飲んだ。わたしが好きだったころと全然変わっていなかったけど、いまならもっとうまくやれる、と思った。あやちゃんはとにかく顔がかわいくて、今のわたしならお得意の「顔がかわいい女批判」「顔がかわいい女を好きな男批判」ができるけど、当時のわたしにとっては、かわいい女の子なんて違う世界の生き物である、という発想しかなかったため、そもそも同じ土俵に立とうとしていなかった。自分が女として生きていくという自覚なんてなかった。でも、今ならきっと、ひとりの女としてMくんに向き合える。もう高校生じゃないし。もう成人だってしてしまっているし。そんなことに気付かせてくれたのも、Mくんなのだろうなと思う。

 

いまわたしには好きな人がいるけど、まさか結婚するわけないし、一生好きでいるわけないと思っている。きっと今日こんなに嬉しかったり、ラインの返事が来なくてもやもやしたり、そんなことも思い出になっちゃうんだろうな。恋愛に没入なんてできない。常に自分をメタ的に見ながら行動している気がする。でもわたしにできることはせいぜい、将来の自分の酒の肴になるような、今思えばあれが初恋だったと言えるような、そんな恋愛をしていくことだけなのだ。

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「いま思えば/初恋/ゆさん」への2件のフィードバック

  1. 当時好きだと認識してなかった人のことが忘れられないというのは自分の中にはない感覚なので、なるほどと思いながらよんでました。Mくんとの思い出を見る限り、そのときから好きであったようにしかおもえないのですが、なぜ好きだと認識できなかったのかが知りたかったです。

  2. 初恋って、当時はそれを初恋だと認識できず、あくまで終わったあとに当時を振り返って思うものなんだな、と思います。今のゆさんを知ってる身として、あやちゃんにモヤモヤした感情を抱いていないのが意外でした。

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