何でもない/初恋/シュウ

恥ずかしいから、初恋なんてなかったといいたいけれども、誰にだって初恋はあるだろう。無論僕にもある。幼稚園の先生なんてのがベタだけれども、僕の初恋の相手は小学校一年生のとき、クラスの女だった。これもまた、ベタ中のベタである。

正直、もう15年も前のことなので、はっきり覚えていない。覚えているのは、その女の子の顔と名前とくらいである。小学校低学年でありながらも、可愛いというよりも、むしろ綺麗さを感じさせる女の子だった。あと、最も印象深かったのは僕の父親のからかいというか、ちょっかいがやたらとうるさかったということくらいだ。というのも、その女の子のお父さんと、僕のお父さんが会社の同僚だったために、「お前が好きだって、お父さんづてで伝えといてやろうか」みたいなことを、しょっちゅう言うもんだったから、いい迷惑だし、本当に勘弁してほしかった。まあ、今となっては長男の初恋を知った父親の心情も察せないこともないが、本当にいい迷惑だった。

結局初恋といっても子供の恋心。特に何もしだせないうちに、僕は転校することになり、結局それで終わってしまった。紆余曲折を経て、5年生になって同じ小学校に戻ってきたけれど、クラスも違ったし、覚えているかも定かではなかったから話をすることはなかった。中学校も同じだったけれど、顔を合わせることもなくなり、噂で不登校になったとか、リストカットをしたということを聞いたくらいである。

一度だけ、大学一年の帰省した時にバスで見かけた。一目見てわかった。すっかり、大人の女性になっていて、美人になっていた。けれども、彼女の噂が頭にあったせいかは分からないが、同時に儚さを感じさせた。彼女とは降りる停留所も一緒で、話しかければ、もしかしたら何か運命のようなものもあったかもしれないけれども、チキンの僕は、そこで何もすることはできなかった。できなかったいうよりも、しようとしなかった。

けれども、それで良かったのかもしれない。彼女は僕の思い出の人となっている。たまに思い出して、懐かしさを感じる。

初恋のあの時は22年間彼女ができないなんて、思ってもいなかった。思い出している場合ではなかった。

とてもつらい。

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「何でもない/初恋/シュウ」への3件のフィードバック

  1. 終盤までは読んでいて気持ちの悪い思い出話だったが、最後妙な切実さを感じさせた。ついでに言うと初恋の思い出に幼稚園や小学校低学年時のものを挙げるのは他にも見られたが、単に核心に至らないプラトニックな領域に留まっていて物足りなさを覚えた。

  2. 話の内容はやはり実話という縛りが効いているのか少々インパクトにかけるものだったように思いますが、最後の「とてもつらい」に切実さとそれでも笑いを取りにきてるしたたかさに笑いました。ごめんなさい。あの頃の恋心がなんだったのか、これからどうして行きたいのか、という葛藤など入っていると面白くなるんじゃないかなと思います。

  3. 自分の初恋を大っぴらにするのは恥ずかしいことなのだろうか。全体的に自分を抑えて書いているように感じた。それでも、ベタな初恋という体験は個人的に羨ましかった。

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