博愛主義者のラブレター/初恋/五目いなり

拝啓 貴方様

 

冬もめっきり深まって、木の葉も北風に舞う季節になりました。

お元気でしょうか。

そちらの近況は分かりませんが、お陰さまで私は元気です。

 

突然の手紙に、さぞ戸惑われたことでしょう。

不躾な手紙の非礼、ここにお詫び申し上げます。

 

こうして筆をとり、手紙を認めるのはあまりに照れくさく、何度も紙を丸めました。

どうすれば一片の言葉、そのそれぞれに愛が込められるのでしょう。

そんなことを考えながら筆を浮かせていたら、何度も硯が乾きました。

いけませんね、折角の手紙なのに、何も書けることがないなんて。

けれどこうして思いを言葉に託すのなんて、初めてなのです。

どうか、大目に見て下さいね。

 

この世に生を受けて幾年かが経ちますが、季節という物は何故こうも上手く巡ってゆくのでしょう。

春が終われば夏になり、夏が終われば秋になる。

秋が終われば冬になり、そして冬が終われば春になる。

こうして続いて行くのなら、この冬もきっといつか開けるものと思います。

 

今の厳しい寒さを耐えた先に春がある、なんてことを言うつもりはありません。

季節は感謝されるため、回っている訳ではございません。

ただそこに在るだけで良いのです。

季節はなにも、望んだりは致しませんから。

 

こんな文を認めておきながら何を言うか、とお思いのことでしょう。

私も、同じことを思います。

本来ならば、誰にも知られぬことこそ美徳。

それこそ私の我儘で、自己満足にしかならぬこと。

けれどもそれで生きていけるのならば、それも悪くはないと、思っていただければ幸いです。

 

全ては己のためだけに。

愛とはそんな物ではないでしょうか。

 

一人を想うだなんて大それたこと、私めになどは出来るようにも思われません。

春はこの地球を隈なく覆わねばならないのです。

不器用な季節を、どうか責めてやってください。

それだけで春は、夏は、秋は、冬は、救われるのではないでしょうか。

そして、貴方様も。

 

取りとめもない言の葉も、いつか土となって全ての生命の糧となりますように。

 

三回まわって、わん 敬具

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「博愛主義者のラブレター/初恋/五目いなり」への2件のフィードバック

  1. 本文でも触れられているが、こんな文章を書いてしまった時点で博愛主義者ではなくエゴイストだろう。愛は独善的であると自分で認めながらあくまで謙虚でいようとする姿勢には不誠実だと感じる。
    季節を絡めたのは上手いと思うが、上手い以上には感じなかった。

  2. 結局堂々巡りして、何も解決にいたっていない感じですが、別に解決する必要もないのかなと思うので、それはそれで良いのかと思いました。
    季節と自分の気持ちを関連させて語っていく表現は好きでした。

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