なんでなんだろう。あの子の周りは不思議な色をしている。
僕の周りは色で満ち溢れていた。
街を歩けば燻ぶった灰色をした古びた建物があって、所々に鮮やかな色をした看板。
山は瑞々しい緑色をしていたかとおもったら、赤ちゃんの頬っぺたのように変わって、やがて真っ白な絨毯が出来上がる。
空は青いキャンバスでできていて、毎日誰かが落書きをする。それを僕たちは見上げながら、絵本か国語の教科書で見た、泳いでいるクジラを探すのだ。
夜になると、決まって誰かが黒い絵の具を世界に溢してしまう。けれど、一つどでかい光があって、いつも見ている色が違って見える。
そんな風に姿を変える色たちが、僕は好きだ。
小学生の頃、入学してからしばらくたった時に僕は気づく。
一人だけ不思議な色をした子がいる、と。
その子を構成する色たちは決して特別なものではない。
探せばあの色はこの色、とはっきりと分かる。
ただ、その子だけはどうしても不思議な色に思えて。
もっと知りたくなってその子とおしゃべりをした。
その子と一緒になって遊んだ。
その子の側にいたくて、目で追うようになった。
しかし、それっきりだった。
幼かった僕なりに考えたのかどうかはわからない。
そこに僕という異分子が入り込むことによって、その色が壊れてしまうことを恐れたのだろうか。
クラス替えによってその子とはめったに合わなくなる。
初めのうちは何とかしてあの色を見たいと、休み時間になると廊下をうろうろしたり、大きなイベントで学年が集まるときは必死になって探したりした。
でもそのうち探さなくなって。
そのうち、また違う子に、僕は不思議な色を見たのであった。
今思い出してみれば、彼女はクラスでも人気者であった。
いつもニコニコとしていて、他人の嫌がることを彼女がしているのを、少なくとも僕は見たことがなかった。
そんな彼女に集まる異分子は、やはりといっていいほど僕だけではなかった。
まぁ、誰かとくっついたという話も聞かなかったが。
カラフルなこの世界
満ち溢れたこの場所にあの子はいて
欲しくて欲しくてたまらなくて
伸ばした手は
ノイズと共に動きを止め
いつまでたっても進まない
愉快な踊りを始めよう
皆で輪になりさあ廻れ
壊れた時計のリズムに乗って
あの子に触れてはいけないよ
僕とみんなのお約束
舞台が終わるその時までは
変わらぬ世界に満足し
触れることを諦めて
瞼を閉じて夢を見る
ああそうか
つまり君は臆病なんだ
真っ黒な影は僕に嘯いた。
ポエム的な要素で狼狽えるが、意外と本筋はありがちな思い出話だった。自分も思うところが無いわけではないので、その辺を中心にした方が相手に読ませる文章になると思うが。ポエム的要素も既視感がある。
突然ポエムが挟まってきたことと、全体の文章から結果が受け取れなくて少々困惑しました。詩で勝負するなら物語の一部にしてしまうより、それで完結した作品にしたほうが受け取りやすいかと思います。ついでに細かいことを言うと幼い文体の中に「異分子」という言葉が出てくると一抹の気持ち悪さがよぎるので、当時自分がなんとその感情を表したか思い出しながら書くと良いのではないでしょうか。
割とよくある初恋の思いで話を淡々と書くのではなく、詩的な表現として書いていくのは、なかなかなくて良いと思いました。前半は実際の色について述べていて、彼女の色は表現としての色というのが少しズレがあるのかなと思います。
何だか煮え切らない印象を持った。ポエムを入れたのはなかなか面白い発想だと思ったが、ポエムに文章のポイントとなる色があまり登場しないのが残念だった。