気づかない想い/ヒロ/初恋

「それで、今日の帰りにね――」
 それから彼女は今日の彼氏との帰り道について話始めた。彼女の可愛い顔が浮かべられる笑顔によってさらに可愛くなるのを直視することができず、僕は少し視線を外して近くの遊具を眺めながらそれに対して「ああ」とか「そうなのか」なんて無難な返答をしながら聞いていた。
 彼女の口から彼氏といる時間が楽しかった、なんて聞くと胸が少しうずいた気がした。
 彼女とは長い付き合いだった。幼なじみと呼べるほど昔からの仲ではないが、小学校からの友人だった。それから同じ塾に通ってるという共通点から仲良くなって、それからも付き合いは続いていた。今では女子の中では彼女が一番の友人になっている。
 そして高校生になるころに周りの女子たちよりも可愛かった彼女が男子たちから人気が出たのは当然のことだったのだろう。始まりは単に帰り道に少し愚痴を聞いているだけだった。やれあの男子が気のある態度を取ってくるだの、誰々から告白されただの。僕は口が堅く、面白がってそれを言いふらすような性格じゃなかったこともあるんだろう。その内容は次第に最近できた彼氏の話に移り変わって話が長くなっていき、僕たちいつしか帰り道に近くの公園に寄り、長時間話すようになっていた。今日も僕はそんないつもどおりに彼女の彼氏との話を聞いていたのだ。
「どうしたの?」
 考え込んで少し反応が悪くなっていた僕を心配したのか彼女が僕に聞いてきた。僕はその言葉に笑顔を作って答える。
「いや、何でもないよ。それよりもそれでどうしたのさ?」
 声が震えないようにすることにはもう慣れた。作り笑顔を浮かべることもだ。結局今日もそれから彼氏との惚気話や愚痴、僕の話をして別れた。
 一人の帰り道、僕は少し思い出にふけっていた。一年ほど前、彼氏ができたと聞かされたときは本当に驚いた。今までそんなそぶりはなかったから。思えば作り笑顔はあれからどんどん上手くなっていったんだったけか。それに比例するように彼女がさらに可愛くなっていったこともよく覚えている。それからも僕たちの関係は変わっていない。仲のいい親友のままだ。
 少し昔のことを思い出して、そして最後に僕は自分に言い聞かせるのだ。彼女は僕の親友で、最高の友達だ。僕は彼女を大切な友人と思っているだけで、好きなんかじゃないのだ、と。

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「気づかない想い/ヒロ/初恋」への3件のフィードバック

  1. 凄く共感できる内容だったが、この気持が分かるからこそ読んでいて胸が傷んだ。話も読みやすかったし、心理描写も読んでいて心がズキズキするくらいうまいなと思った。強いて言えば、過去と現在の描写のスペースの間を空けたらもっと読みやすかったかもしれないと感じた。

  2. 作り笑顔が上手くなった。という表現はとってもよくわかるのだが、上手くなったのと慣れたのとで二回出てくるところが、少しくどいかな、と思った。また、惚気話や愚痴、僕の話っていう部分で、僕の話とは自分が彼女に話す話か、彼女が僕のことを語った話なのか、少し疑問に思った。

    初恋というテーマを素直に描いたものだと思うので、とても良いと思う。ただ、初恋の思い出ってみんな似たりよったりで、もう少し個性があると面白いのになと思う。

  3. 相手に構わず、彼氏の話を延々聞かせる彼女はどうなんだろうかと思いながら読んでいました。
    初恋は叶わぬものと言いますが、こう身近に居られるとやりきれないですね。後半の文章がすごく苦々しかったです。文章途中からその片鱗が見えてきましたが、最後にその流れに乗って破れた初恋、とならなかったのは寂寥感があってよかったです。

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