「家族」への反動/書評/ちきん

全体を通して、論が極端過ぎる印象であった。たしかに中途半端で凡庸な意見では、特に執筆する必要がないのだが、それにしても、偏った考えを読者に押し付けている部分が非常に多かった。そして、その強い押し付けに、何の根拠も伴っていないところも気になった。「女達は、そうやって外へ外へと行動しているが、男の姿は少ない。男も同じように相手を求めてはいるのだろうが、内へ内へとバーチャルな世界に走っている。」(P27) これは多くの人々が分からなくもないであろうところだが、男女の枠組で完全にくくってしまったり、何の根拠もなく突然断定してしまったりすることには、多少問題があるだろう。「仲の良い家庭よりも、仲の悪い家庭の方が偽りがない。」(P36) これには根拠云々以前に、疑いしか湧かない。子どもが親に反発した生き方をする=親子仲が悪いということではないだろう。「家族」はそれをも包み込んでしまう空間なのではないか。自分の考えをこの世の真理であるかのように、堂々と主張できる筆者を羨ましくさえ思った。他にも、~が多くなっている、という調子であるものの、それは自分とその周りだけではないのか?と思わせる部分が数多く見受けられた。

このように極論を押し付ける形が採られた意味は、というか、この本の存在自体が、筆者の自己肯定によって成立している。「私とつれあいは期待のない夫婦で正解だったようである。」(P48)「家族というもたれ合いは好きではないが、共に暮らす相手がいるのは、よかったと思っている。」(P97) などから分かるように、筆者は自分の選択が正しかったと自己暗示することに必死だ。そこから、戦前の価値観に必死に反発してきた最初の世代の苦労や孤独感が伺える。一種の反動のように見えるその動きは、やはり「極論」という形を採るほどでなければ、家族主義のしがらみを振り切れなかったのかも知れない。呪縛が強力であるからこそ、自己肯定を続けなければ生きてはいけないことも解る。それから、読み進めるほどに、筆者の隠し持つ、家族への憧れや執着心が見えてくる。これほどまでに記憶し表現できるのだから、その想いは人並みではないだろう。まとまりのなかった自分の家族に対する強いコンプレックスや、逆に円満ではなかったが故の愛情などが滲み出ているように思う。

結果として、筆者の考えに動かされることはほとんどなかったが、変化の時代に生きた哀しみのような、よく知らない世界が覗けたところはおもしろかった。新書という形で読者に意見を押し付けるのではなく、あくまでエッセイとして、自分のそういった価値観の根源に迫る方が、読ませるものになるのではないだろうか。

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「「家族」への反動/書評/ちきん」への2件のフィードバック

  1. 共感できて、丁寧な文体で面白かった。内容に関して特に言う事はないは細かいところを。引用部分は段落を分けた方が見やすいのではないか。

  2. 論じ方が上手だと素直に思いました。これ読んだ後自分のを読み直してみたのですが、ドブに捨てたくなりました。でも決して熱く述べているわけではないのにこの違いはなんなんだろう。

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