家族という病という病/書評/さくら

幻冬舎新書 「家族という病」 下重暁子著。

 

今回私は、この本を読んだ。

まず、この本が話題になっていることは分かると思った。筆者は一般的にタブー視されるような批判を遠慮なく行ったので、普段から「家族とはこうあるべき」などという固定観念・強迫観念に囚われた人々に一石を投じる文章であり、そうした人々の奥底に抑えつけられた感情に訴えかけ、共感を促すだろうと思ったからである。

しかし、話題になることが必ずしも賞賛ではない。この本の内容では物議をもたらすこと必至である。実際自分もいくつかの読了後レビューを読んでみたが、否定寄りの賛否両論である。自分はこの本に共感できなかった立場として、読んで感じたのが、筆者に対する強い不快感で、反駁せずにはいられなかった。

筆者は、伝統的な家族主義のあり方をただひたすらに貶め、個人主義者として持論を述べていくが、主張に多くの矛盾や疑問点が見られた。

矛盾として気にかかったのは、「家族の話題はつまらない」「家族の話は所詮自慢か愚痴」と非難しながら、当人も自身のつれあいを誇りに思っている話や、自身の両親を強く侮蔑する話を繰り返し、内容の多くを占めるので、にわとり頭が3歩歩いたので持論を忘れてしまったのか? と思うほどに壮大な矛盾を犯してしまっている。

また、筆者の文体が、一方的に自分の考え(それも多くは勝手な推定に基づく)を押しつけ、そうでない価値観を徹底的に非難する内容に終始するので、筆者の論と相容れない考えを少しでも持っているのならば、この本を読んでいる最中、読者は謂れもなく何度も侮蔑されることを強いられるだろう。個人的な話になるが、家族や親戚の仲が比較的良く、周りに育てられて生きてきた自分としては、自分だけでなく、自分の血縁一同を愚劣であると貶されたようで、怒りすら覚えてしまった。

文章の中で、「どこどこではこうなのが普通である。だからこうあるべきだ。日本はダメだ。」というロジックが多く用いられる。これは前述した、自分の考えの押しつけに他ならない。この本に限らず、日本的なものを批判し海外を例に挙げて礼賛する文章をよく見るが、それぞれ異なる文化背景のもと成長してきた社会は、異なる個性があるのは当然だ。そんなに日本が嫌ならば日本に住むことに固執する必要は一切ない。そして日本に住み満足している人間にわざわざ「君たちのその価値観が嫌い」アピールをする必要もない。

タイトルやあらすじの説明を読むと、データなど客観的事実に基づいた本であると期待してしまうが、内容は終始個人的な愚痴である。自分の家庭環境が悪かったのが拗れて、それでも自己を正当化したいがために、一般的な微笑ましい家庭を僻み、恨みを抱くようになったのではないか? と疑問視されてもおかしくないだろう。

ここまで書き綴ってふと我に返った。筆者を批判しながら、自分も感情的にレビューをしてしまった。「炎上商法」が最近流行しているが、もしかしてこの本はその類なのだろうか? だとしたら、してやられた。

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「家族という病という病/書評/さくら」への4件のフィードバック

  1. 感情的に、と締めくくっていますが、少なくともグループ内でこの文章が批判されるべき要素をもっとも具体的に分析しているのはさくらくんのような気がします。「自己矛盾」と「客観性の欠如」についてよくまとめられていますね。少なくともこの書評を読んでこの本に手を出そうという人は多くないでしょう。それが書評としていいものなのか、悪いものなのかは置いておいて。

    炎上商法ですが、清田先生がこの本を書評の題材に提案した理由もコレのような気がします。Amazonで一緒に購入されている人生論ジャンルのベストセラー、『置かれた場所で咲きなさい』と比べてもレビューの評価には雲泥の差がありますし。まんまとしてやられた気分です。

  2. 「みんなが感じる怒りポイント!」をなぜ怒りを感じるのかというところまでしっかりまとめられていて良かった。主観的な文章とのバランスもちょうどいいと思う。本だけでなく、すかさずこの本が話題になった理由も分析があるのがうれしい。これから読む人にとっては信頼できる書評だと思う。

  3. まだ読んでいない人にとっても優しい書評だと思いました。個人的には、自分が言いたかったことを代弁してくれたような気がして読んだ後すっきりしました。最後に我に返って冷静に捉え直す点も良かったと思います。

  4. 冷静に的確に問題のポイントを押さえられているなと批判しなければいけないのに感心してしまいました。最後に別の視点から捉え直したのも効果的だったと思います。ネタバレもないので理想的ですね。

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