家族という病/書評/やきさば

いくら話題になっているといっても、課題に出されなければ、絶対読むことはなかった本であろう。なぜなら、この著者は完全に私と正反対であるし、読んでいるときの気分は、自分の家族に対する考えを全否定されているようで、気分はすこぶる悪かったからだ。

 

筆者は、母、父、兄、自分の4人家族であった。幼い頃に戦争を経験して、軍人であった父と娘を溺愛する母のもとに生まれ、兄は養子であり、血はつながっていなかった。比較的兄とは仲が良かったようだが、軍人だった父に関しては、敗戦後の姿を見ていられなくなり、父にその気持ちをぶつけられない分、母の生き方にも大きく反抗して、しっかりわかりあえないまま皆失ってしまった。そんな彼女が、家族とは、結局理解しあうことはできない、と説く。
家族は一番近くて遠い存在。一番近くにいるからこそ、なんでも知っていると思いこんで、理解しようとせず、実は何も知らないのだ。家族は所詮他人同士。家族という単位で捉えずに、個人の集まりとして考えれば、簡単にはわかりあえないことなんて当たり前である。
彼女のこの論には納得ができないわけではないのだが、両親と娘の6人で、今まで大きな事件もなく、仲良し家族の一員として育ってきたわたしには、この考え方は筆者の僻みから来たものではないかと感じた。おそらく、筆者が家族という枠組みの中で成功していたならば、このような考え方は生まれなかっただろう。

筆者の中に一つ矛盾点を見つけた。家族に期待するな、他人の個に期待するな、自分にだけ期待しろ。家族に期待なんてするから裏切られたときストレスとなり、落胆や愚痴の原因になる。こう筆者が説くシーンがあるのだが、彼女自身は、父にすこぶる期待していた。軍人である姿をかっこいいと尊敬していたのに、敗戦後の、生き方を曲げて落ちぶれていくのを見て距離をとってしまう。あの信念を貫いてかっこよかった父はどこだ。そんな思いを抱えたまま永遠の別れを迎えてしまった。もしかすると、この考えは彼女にとっての自分の人生から学んだ教訓なのかもしれない。

自分の考えが全否定されているようで、と言ったが、筆者の考えが全て理解できないわけではなかった。今現在離れて暮らしてはいるものの、親のすねをかじって家族との繋がりを保って生きているわたしだからこそ、共感できる部分は多々あった。
父はもともと無口で、何を考えているかつかめない人だった。幼い頃の私は父のことがよくわからず、二人きりになると何を話していいのかわからなかった。しかし、私が生まれてから15年後に新しい家族ができたことで父の印象は一変した。わたしの15歳下の妹を見る目は、愛にあふれていた。年を取ったこともあり、父の表情はむすっとした顔から常に朗らかなものに変わり、無口の裏に隠された父の誠実さや、家族愛を知ることができた。私は、父のことを何も知らなかったのだと悟った。今ではたまたまこのような機会を持てたことに感謝している。

 
誰もが家族のもとで成長する経験があるからこそ、この本の内容は皆の心に何かしら響くものがあると思う。仲の良い家族の中で育ってきた私のような者にとっては、気づかないふりをしていたものに強制的に目を向けさせられる怖さもあるが、一度は読んでおきたい本である。

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「家族という病/書評/やきさば」への3件のフィードバック

  1. 3年生ののっぽです。
    やきさば家は「なかよし家族」で「成功」しているんですか?
    僕は、この本がここまで売れたのは、今の日本社会で成功してる家族なんてものがほとんどないからだと思っています。そもそもやきさばの説く成功とはなんですか?そこをもう一度しっかりと考えてみてほしいなと思います。
    なんとなくうまくいっているなとは思っていても、書店で「家族という病」というタイトルを見たら、手に取ってしまうかもしれません。
    もちろん、やきさば家が成功しているのならばそれは素晴らしいことだと思います。

  2. 最後の段落における感想は共感できるものがありました。それはその考えに至った理由に関しても自らの家庭の例を出してしっかりと説明できていたためだと思えます。
    しかし、全体的に見た時に思いついたことを順番に出していったような感じが見受けられ、段落ごとの内容のつながりもわかりにくい気がします。なので、手間はかかりますが校正や構想の精錬が必要なのではないでしょうか。

  3. 「家族という枠組みにおける成功」って何でしょうか。わたし自身、家族のことは好きですが、単純な好きでもなく、それなりにいろいろ抱えていろいろ引いた目線で見ているので、これを言って気を悪くされたら申し訳ありませんが、「成功」とか言える人に興味があります。筆者の家族は失敗なんでしょうか。何をもって成功と失敗を分けるのでしょうか。

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