教養書としての評価は低い/書評/五目いなり

教養書としての評価は低い/『家族という病』/五目いなり

新書を手に取る人々は、いったい何を目的として本を選ぼうとするのか。勿論人によって本の良し悪しを決めるものは違うだろうが、多くはデータに裏付けああれた世間的に正しいとされた情報から学びや気付きを得ようとして、親書に手を伸ばすのだろう。そもそも新書とは「現代人の現代的教養を目的として」刊行されるようになったものであるから、この見解に間違いはないだろうと思う。
さて、前述した様に新書とは読者に新たな見解を与える事を一つの目的とした本である。読者もそれを期待して本を手に取るのだろうが、今回紹介する本は幻冬舎新書から出版された下重暁子著の『家族という病』という、何ともキャッチーなタイトルとその著者の特殊性で話題となった本である。元NHKアナウンサーという社会的知名度を持つ著者からみた家族への見解を述べたこの本であるが、紹介文の煽りが非常に巧みであり、特に最後の『家族の実態を抉りつつ、「家族とは何か」を提起する一冊』という一文は、まさに家族という集団に関心がある人々を惹きつける内容となっている。
そんな『家族という病』の肝心な内容だが、一言で纏めてみれば『自身の経験から見た家族の実態と自身が取った解決法』というものになるだろう。読者が期待しているような客観的データに基づく考察や問題点の指摘などは程少なく、殆どは著者の経験を通して語られる。そのせいか「家族はつまらない」「家族はいらない」「家族には期待しない」と言ったような自身の論にも揺らぎが見え、読者の共感を得ることはなかなかに難しい。この本の中には家族という病に侵され圧力の中雁字搦めになり身動きの取れなくなっている読者への救いはなく、言うなれば著者にとって正しかった個人的な経験を恰も一般論であるかのように語っているような印象を受けた。
現代社会を取り巻く問題の多くは確かに家族という閉鎖された空間が引き起こすものもあるだろう。読者は皆その家族という病の存在に気が付きながら、見出せない解決法を探し出すため先人の知恵としてこの本に手を伸ばした。しかし読者の心に寄り添うことなく戦後という時代を特殊な形で生き抜いた著者の経験を描いた本書は、多くの読者を落胆させただけにすぎないのではないか。
新書として、教養書としての評価はその強すぎる主観性を持って低評価にならざるを得ない。エッセイとして出版すればまだいくらかの共感は得られたのだろうが、それにしても無根拠な強すぎる断定は反感を買うだろう。しかし話題性のおかげで周知の事実となった家族という病の存在が、多くの人々が言いたくても言えなかったものであったことは間違いなく、その点では高い評価が与えられる。今度は明るみに出たその家族という病のウィルスが発見され、特効薬となり得る良書が書かれることを期待せざるを得ない。

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「教養書としての評価は低い/書評/五目いなり」への3件のフィードバック

  1. 教養書としての評価が低い、まさにその通りだと思う。強すぎる主観性がそれを助長しているというのも正しい。

    気になったのは、家族という病は、「家族という病に侵され圧力の中雁字搦めになり身動きの取れなくなっている読者」向けに書かれた本なのか問題。
    他の人の書評を見ていると、幸せな家族生活を送ってきたと自負している人に対してこの本はとてもよく効いていると感じた(良いか悪いかは分からないけど)。むしろこの本で病にかかっているとされているのはその幸せな家族生活を送っている人たちではなかろうか。

  2. 非常に読みやすく、構成がしっかりとしているせいか、すんなりと内容が頭のなかに入ってくるような気がしました。

    書き方的に、まだ本を読んでいない人向けのための書評のようなイメージを持ちました。これから読む人に向けて、どのような本であるのかも分かりやすく伝わるように思う。

    ただ、誤字が少し気になったのと、筆者の戦後の生活が特殊だったから、と書くのはなにか違うような気がしてならない。今の家族形態と違うのは明らかだが、そこから見える景色もあるように思う。

  3. 改行がもう少し欲しいです。PCから見ると特に問題はありませんでしたが、ケータイから見ると文字のつまり具合、「」の密集による階段的な読み辛さがあり手を入れるべきだと感じました。

    内容に関してはよくまとまっており、表現のしかたや言葉選びにも安定感があります。欲を言えば、せっかく著書自体を紹介していく体裁を取る場合は、もう少し早めにタイトルを出すとより良くなると思います。新聞記事がこのスタイルで、購読者に興味を持ってもらうためには第一段落にメイントピックを登場させることが必須だということです。

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