OSS/書評/ノルニル

僕はこの本を賛美したい。これほどまでに自己の正当性を疑わず、自らの描いた理想へと突き進む著作もそうないだろう。
類稀なる名著で、非常に楽しい読書の時間となった。

まず、登場する筆者の友人・知人たちの状況や境遇が余すことなく懇切丁寧に説明、描写されており、筆者の主張をそのまま描くことよりもひとり一人のエピソード、ナマの声に重きが置かれている。これにより、事実関係が手に取るように把握できる。
それらのエピソードに交えて、ところどころで筆者の考えが繰り返される。この積み重ねが厚みをもって語りかけてくるのだが、現役時代は素晴らしいキャスターであり、人生経験豊富な筆者の主張が間違っているはずもなく、さぞかし正当性のあるものに違いない。
筆者が事実関係を直接問いただすことがなかったシチュエーションの中でも、一歩踏み込むために筆者が人々の心の声を想定し代弁してくれるため、理解の助けとなっている。

電車の座席についての話は、一時ネットで物議を醸した、『新幹線の座席についての新聞投書』と似た香りを彷彿とさせた。
あれほどまでにネットを沸かせた文章を想起させるということは、それと同じだけセンスがあるということだ。ベストセラーとなるのも頷ける。
国内線の機内で乗り合わせた老人のことを初めて飛行機を利用した客だと決めつけ、その惨めな姿に同情するシーンなど、読んでいて自然に笑みがこぼれる。
人を楽しくさせる本が書けるのは一種の才能だと私は考えている。著者からは強いオーラを感じ、傑出した才能のたまものだと信じざるを得ない。

加えて、筆者の主張が繰り返し繰り返し記述されている点も評価が高い。序章から結末に至るまで、しっかりと何度も何度も説明されている。
非常に親切な著作だといえるだろう。


誉め殺したが、結局はOSS、「お前がそう思うならそうなんだろう お前ん中ではな」という本だった。
文中で著者はひたすらに「わたしのかんがえたさいりょうのかぞく」像をゴリ押ししてくる。
『実録!ホントにあった~な話』などとは比べものにならないぐらい冗長かつ一般性に欠ける例示、筆者の視野の狭さ、見事なまでのダブスタ、老害っぷりの顕示を見てもこの本は非常に読者を楽しませてくれる。
それ以外でも筆者とその茶飲み友達にまつわる閉じたBBAコミュニティにおける逸話のオンパレードで、食傷気味を通り越して中毒症状のような状態を引き起こすほどだ。

筆者は自らの頭の中で世界の主人公であり、完全に脳を灼かれている。
このようなメンヘラ厨二本をAmazonのベストセラーになるまで売った出版社の手際は実にあざやかで、評価されるべきだろう。
ところで、問題のAmazonのレビューは240件で、星の平均値は2.0だった。驚くべき評価だ。と同時に、読者は正直だとも悟った。

今回この本を課題に設定するにあたり丁寧に裁断し、全編170ページ余りをスキャンしたあと、解体された本著はゴミ箱に突っ込んでしまった。
しかし今では、この本の素晴らしさを他の人にも伝えるために、雑にでも裁断せずにそのままスキャンして、ブックオフに即座に持ち込んでもよかったな、とそう痛感している。

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「OSS/書評/ノルニル」への3件のフィードバック

  1. 前半の完膚なきまでの皮肉っぷりは思わず笑ってしまった。ただ、この本を読んでいない人にはその楽しみ方ができるかは分からないと思った。しかし、この後半を持ってくることで「何かある」と感じさせること、そして書評の筆者の思想もなかなかに危ないもの、ということを知らしめる構造になっており納得した。
    ただ、メンヘラ厨二病とくくってしまうところに、そもそものメンヘラや中2病というものの定義、そう判断された理由云々が気になってしまうタチとしては欠点と感じた。こういうブロクってあるし、ひとつの形だとは思うが、くくること、カテゴリに入れることで安心するという心理作用って本当は危ないと思うし、書くのにあたっては気をつけなければいけないことの一つだと思う。

  2. 最初を読んでいたときは今まで読んできた他の人の文章とは全く読み味が違くて、真反対の意見があることに対して驚いていました。と思ったら、後半に怒涛の批判。その豹変っぷりに思わず笑ってしまいました。前半に褒め倒しているだけに後半の批判が際立っていてよかったです。褒め殺した本意とは何なのでししょうか?

  3. こ、怖い・・・
    。褒めるという行為は本心によっては凶器になりえるんですね・・・。テンションといい言葉のチョイスといい、書評といえるのかは少し疑問を持ってしまいましたが、本を読んだ身としてはすっきりしました。

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