倦怠気に覆われて/嵐/オレオ

ガシャガシャと風で揺れるシャッターの音で目が覚める。腕時計を確認するとまだ6時半、平日だと妙な焦りを覚える微妙な時間帯。億劫な気持ちを抑えつつ再び眠りに就こうとするが、シャッターの音が邪魔して眠れない。仕方なく布団から出て身体を震わせながらいそいそとストーブを付ける。

火がつくまでの間、洗面所まで行き、異様に冷たい水で歯を磨くが、相変わらずひどい寝癖だ。口をゆすいでいるとリビングから「チリチリチリ……ボッ」とストーブの火が付く音がした。

急いで戻り、かじかんだ手をあてる。「あったけぇ……」自然と気持ちが声に出る。外からは、びゅうびゅうと低い音と共に相変わらずシャッターが激しく揺さぶられる音が聞こえてくる。

あまり気にせず、ギリギリ手の届く位置にあるリモコンに手を伸ばしてテレビを付けた。普段は観ないニュース番組をボーっと眺めながらしばらく温まっていると、番組は天気予報のコーナーに移る。美人なお天気キャスターがお馴染みのトーンで今日の天気予測を淡々と説明していたが、全く頭に入ってこない。もっとも、今日の天気なんてこの状況を見ればおおよそ見当が付いているのだが……。

部屋も徐々に温まってきたので、倦怠感を押し殺してキッチンへと向かう。マグカップを手に取り、毎度のように兄が無駄に多く作った2日置きのコーヒーを注ぐ。いい加減そのとき飲む分だけ作ってほしい。豆は父親を真似てわざわざ店から買ってくるのに、こんなんだったらインスタントでも飲んでればいいものの……。

一口飲むと、2日間で強まった酸味が口に広がる。不味い。嫌な気分になりながらもミルクを足してカフェオレにして飲んだ。外の様子は先ほどより風が強くなっている気がした。またストーブの前にあるクッションに身を沈め、ボーっとして時を過ごしていた矢先――

「テーレテレテテレテテー♪」

唐突にベートーヴェンの代名詞「運命」が軽快な音を立ててストーブから発せられた。

最悪だ……。

――灯油が切れた

今日は何かとよろしくない。この天気のせいで外に出るきも起きない。こんな日はいっそのこと開き直って全部ほっぽかして布団に包まって寝るとしよう。

部屋に戻り、大胆に布団に潜り込む。不思議と平日の妙な焦りは既に消え、強風とシャッターの子守唄で僕は深い眠りに就いた。

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「倦怠気に覆われて/嵐/オレオ」への5件のフィードバック

  1. 何気ない冬の日常、という感じでした。灯油が切れた時の絶望感すごくわかります(笑)ヤマもオチもない、日常でした。

  2. 誰もが経験したことあるこの感じ。平日の妙な焦燥感とかすごいわかります。なんの変哲もない日常の一端を描いているだけなのに、つまらなさを感じさせなかったのがすごいなと思いました。ただ、自分の中で「運命」のメロディーがここで書かれているものと一致しないのですがなぜでしょう……。

  3. 外のことなんて関係なくて、ただただ僕たちは日常を送るだけっていう話は現代性があって好き。しかし、その日常が、外の状況と繋がってくると楽しいなと思う。
    また、擬音って難しくて、正直ない方がスッキリするのだけれど、私にはこう聞こえるのだ、みたいなところがあると面白くなるので、そこらへんも次回考えてみるとおもしろいかもしれない。

  4. 何気ない日常の一部を切り取る、何も起こらないし、トーンも変わらない感じのものって、わりとあるけれど、その中でも文章的に素敵!というものが書ければ成功だと思う。

    苦痛なくスラスラと読めたけれど、この表現が好き!みたいな部分がなく、その点で物足りなかった。運命の音がうまく再現できなかったのもある。匂いとか音とか想像できなかったから遠く感じてしまったのかも。

  5. とてもあっさりと読めて、そのあっさり感がまさに伝わる文章であったと思います。

    ただ、あっさりとしすぎてるのか、朝の気だるさとか、少し物足りないようにも感じました。さらに細かく、または想像させるような文章ができるととても良いのではないでしょうか。

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