あらしのよるに/嵐/YDK

「……本日は非常に強い勢力の台風が接近しており………」

外ではヒューヒューと強い風が吹いて、窓はガタガタと震えている。

こんな日はなんとなく寂しさが増すような気がして友達と電話してみることにした。時計の短針はてっぺんより少し右に傾いている。起きてるかなぁ…。

プルルルル、プルル…ガチャ。

「はいー」
「お、起きてた。もしもーし、今暇ー?」
「この時間に忙しいとかもう社畜の極み(笑)暇だよ?どうしたの?」
「やー、ほら、外天気やばいじゃん?なんと なーく寂しくなっちゃいまして…」

なーんて。天気だの何だのってのは半分建前で、何を隠そう、わたしは今電話してる相手のことが好きなのだ。小学校の時から高校までずっと一緒だった、まぁいわゆる幼馴染ってやつ。そんなわけでこの時間に電話しても許してくれる(と、思いたい)。

「昔っから寂しがりだもんね、特に天気の悪い日!天気と同調してるみたいに雨が降ると泣いてたの懐かしいわ〜」
「うるさい!もうさすがに泣かないよ!さ、さみしくはなるけどね!」
「…普段強がるわりにそーいうところ可愛いよねぇ…」

どきり。ボソッと言われた一言に心臓が跳ねた。何気なく言われた『可愛い』にガラにもなく反応してしまって言葉に詰まる。相手にそれを悟られるとまたいじられかねないので、軽く咳払いをして話を続ける。

「そっちは元気にやってる?」
「んー、ぼちぼちかなぁ…やっぱ地元思い出しちゃって恋しくなることもあるけど、ね」
「懐かしいねぇ、何思い出すの?……好きな人とか?」
「え、それ聞く?き、気にしなくていいよー」

思いがけない反応だった。失礼だけど色恋沙汰とかとは無縁の人だと思ってたから。そのこともあって私も何もしなかったわけだし。もう離れ離れになったからこそ今がチャンスなのでは…?内心ほくそ笑みながら突っ込んでみる。

「えー!なんかあったの?教えてよー」
「や、いーじゃんそんなことー。まだなんだかんだ忘れられないしなぁ…」

もしや今も好きなのか。怖いもの見たさみたいなもので、失恋の可能性があっても知りたくなってしまうのが人の常。

「ね、教えてよ?むしろ今の話だからこそ、言っていいんじゃない?ん?」
「わ、わけわかんないぞおい…!」

もう一押しだな。

「仕方ない。教えてくれたら、私のも教えようではないか!」
「…え?」

あ、やっちゃった。明らかに空気が変わったのを電話越しにでも感じ取ることができた。調子に乗りやすいのが自分の悪い癖だ。そして歯止めがきかないところも。言ってしまったものは仕方ない……腹をくくって相手の答えを待った。

「好きな人は、昔から変わってない?」
「まぁ一途ですから?」

冗談めかして言ったが、笑い声はない。一秒がとても長く感じられる沈黙の後、『彼女』はおもむろに話し始めた。

「そういうことなら、『私』も言っていいかな…あのね、私、貴女のことがーーー」

ぶつん。

「え?もしもーし!もしもーし!」

画面には、《繋がりません》の文字が光っていた。この天気だし、正直LINEの無料通話が持つとは思っていなかったが、まさかのタイミング過ぎて言葉が出ない。

…正直、ずっと前から答えは見えていた。ただあの頃は若いからこその勢いではなく、臆病さが勝っていた。思春期特有の何かかと思おうとした。人と違うことが恐ろしくて、なんとなく多数派に飲まれることが正義だと思っていた。けれど私たちはもう子供ではなかった。卒業後もたくさん葛藤した上でのお互いの結論なのだろう。私達は、自分を認めることにしたのだ。

さみしくて嫌いだった嵐の夜が、大切で愛おしい日になる、そんな予感に包まれながら、折り返してくる電話を待っていた。

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「あらしのよるに/嵐/YDK」への3件のフィードバック

  1. 最後の多数派がうんちゃらみたいなところはとってつけたようでいらない、もしくは表現を変えたほうがいいと思う。また、嵐という大きいことと、彼女との関係という小さいことが関係すると上手い話になるのだろうなと思う。例えば、嵐の日だからこそ言えないことが言えるとかいった具合に。また、彼女との関係を変えようと試みることをなぜ今行うのかという必然性が見えるとよかったのかもしれません。

  2. 普段と違う嵐という状況だからこそ生き良い余った行動をしてしまうという構造は展開のある話を作っていくうえでいいなと思いました。
    気になった点ですが、最後の電話が切れるところとその後の「正直」の前の3点リーダーはネガティブイメージを与えるものであるのに、結論としてはポジティブな結果になっています。それでは伝わりにくいし伝わったとしても統一感がなく印象が悪くなるので改良が必要だと思います。

  3. 「同性愛」などの類の言葉を使わずに状況を読者に把握させる文章力はすごいと思いました。前の人も言っていますが、電話が切れたことに対して言葉が出ないというバッドエンドを予測させるイメージを与えながら、自分の中でバッドエンドへと結論づけていたのには少し違和感を覚えました。マイナスな気持ちからプラスな気持ちへの変化に読者は置いてけぼりになってしまうかもしれません。

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