エデンによろしく/嵐/Gioru

私は眺める者。世界の傍観者だ。世界を隈なく眺め、そこで起こっている出来事を記録する。

この星ができてから現在に至るまで。

 

特に、人間という存在ができてからの観察は実に面白い。

生物というものは生存し、生き残ることが価値である。そこに囚われ続けるのは人間も同じである。いや、この前提は間違っているのかもしれない。

人間たちは生存し続けること以外にも遊ぶことを覚えた。

体を動かすことに快感を覚え、ものを生み出すことに快感を覚える。やがて、ものは価値を手に入れ、価値あるものを人間は求めるようになる。価値あるものを手に入れるために、人間は考え、想像するようになる。時を経て、それは巨大化していき、人間が人間を操り、自らの欲求を満たそうとする。社会という仕組みを作り、政治という制度を取り入れる。協力して価値あるものを生み出し、手に入れる。やがて、周りに欲しいものがあることを知ると、奪うことを覚える。戦争の始まりである。

いずれにせよ、人間は生存するために必要なこと以外にも行動することができる、遊べる存在となった。

 

さて、こんな星であるが、一つ興味深いことが起きた。

人間たちが戦争をやめたのである。

理由は、あまりに同族が死にすぎ、また、環境を荒らしすぎたために、このままでは人間は滅んでしまうからだという。

人間たちは残されたわずかな土地を共に開墾し、生きるための最低限の食料を作り出す。肉を作るより、野菜を作る方がコストは軽い。無駄なものは作らない。物資がないからだ。食料でいえばお菓子なんてもってのほかだし、嗜好品の類はない。生存するのには関係ないからと、娯楽を作ることも禁じた。さっきも言った通り物資がないからだ。とにかく無駄なことを禁じていった。

生き残るための最低限の生活。生き残るためだけの生活。まさに生物としての根源に戻った。

 

あまりにも静かな世界になった。

しかし、それは一瞬だけであった。人間には遊ぶことを止められなかった。

ある者は、かつての大都市といわれた廃墟で一冊の本に出会い、空想の世界に憧れ、自身もまた空想の世界を創造する者となる。

ある者は、美味しいものを求め、失われた食材を取り戻そうとする。

ある者は、心の底から叫んだ。それを聞いた者が歌を作り、それに合わせた音楽を付けるために楽器を作る。

ある者は、そんな彼らを見て、それらを欲しいと思い、何とかして手に入れようと策を練り始める。

ある者は、人間の上に立つことを夢見て、自身の力を付け始める。

 

一つの小さな風が生まれ、それは至る所で発生するようになる。

風はやがて集まって大きくなり、そしてこの世界を飛び回るようになるのだろう。

時に巨大になりすぎたそれは、あらゆるものを破壊して、消える。

人間たちは確かこう言ったか。

 

嵐の前の静けさ、と。

 

人間というものは見ていて飽きない。一人一人が、自分自身の考え方を持って生き、満足できるような人生を歩もうとする。

人間たちに黙っていることなんてできないのだ。静かにしていることができない。

それでも静かな状態が存在しているというのなら、それはどこかで小さな風ができ始めているということ。

その風が集まって巨大になったときに何が起こるのか。実に興味深い。

 

 

 

 

 

私は眺める者。世界の傍観者だ。

存在することの価値を、生存すること以外にも手に入れようとする人間たちを、私は眺めることが多くなった。

 

人間たちが立ち入りを禁止したとある地域。

その中央に一本の木があり、強風で飛ばされてしまったのか、真っ赤な実が一つだけなっている。

真っ赤な実に、一組の男女が手を伸ばすのを、私はじっと眺める。

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「エデンによろしく/嵐/Gioru」への4件のフィードバック

  1. 嵐というテーマの消化の仕方が巧みだ。傍観者って言っているから人間を想定しているのだと思うけど、人間のことを人間と述べてるので、人間でもないのかもしれないが、妙に、人間臭さがあって、傍観者が人間なのか人間でないのかふわふわした。恐らく人間ではないと想定しているのだと思うけれど、髪が人型であると想像するように、人間ってやっぱ自分を高等な生物だと思っているのだなと感じる。

  2. こういう類の物語をあまり読んだことがなかったので、読み進めるのに少し躊躇してしまいました。巨大化した風を嵐と置き換えてしまうのはどうだろうかと思いましたが、「エデンによろしく」という題はとりあえずかっこよくて好きです。

  3. どういうテンションなのか気になった。どうしてもこういうものって格好つけのダサさがあるものが多いと思ったから、単純に大真面目に、は考えにくい。が、微妙な位置にあるから少し居心地が悪かった。なんだか色んな要素があって薄まってしまったイメージも拭えない。

    人の動き欲望を嵐に例えてるところは良かったと思う。発想がいい。そこに焦点を当てて、文章表現にこだわったらスッキリする気がする。

  4. 神のような立場から物事を見るという発想は良かったがイマイチ神っぽさが伝わって来なかった。すごく個人的だが、戦争という単語を選ぶより争いみたいな感じに書けばもっとぽくなったのかなと思う。

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