曖昧な話/嵐/山百合

嵐って変な言葉だとは思いませんか。あいや、嵐がどういうものかは誰もが思い浮かぶと思うんですけどね。強い雨と風が吹き荒れる状態を想像するでしょう。ところがですよ、では嵐という言葉をわざわざ選ぶ状況ってどの程度考えられるでしょうか。「嵐だね」ってほら書いてみるとなんか間抜けに見えませんか。実体が無いような、そんな感じなんですよね。そのくせ妙に大仰なのだから、言ってて少々気恥ずかしい。

それもそのはず、正式な気象用語ではないそうです。どうりで気象予報では聞きなれない言葉だと思いました。「春の嵐」とかしか言いようがないんですよね。正式な用法では使えないので、ものの例えとして出てくる場合がほとんどなのではないでしょうか。

そこで面白いのが、どこで使うんだこんな言葉と言いたくなるような限定的な用法しかない言葉より、汎用性の高い言葉の方が却って使いどころが無いということです。だからこそ、何かを言っているようで何も言っていないような言説が可能になる。

例えば、同じように定義の曖昧な言葉と言えば、国名が一番わかりやすいのではないでしょうかね。日本と言った場合、日本の国土を表す場合もあれば、国民、政府、はたまた文化を指すこともある。「現代」も随分と曖昧な言葉です。ここ数年を表せもしますが、数十年単位で言うこともある。この辺の感覚は年齢の差にも依るかもしれません。さらには「若者」。一体いくつまで若者なのか。若者代表のような顔をしている社会学者の古市憲寿も30歳で学生から見れば結構な年上にも見えますし、若手国会議員ともなると4,50代まで含みますから。「日本の現代の若者」と合体させれば当てはまるパターンはいくらでも想定できます。多数の人々に当てはまるのだから、自分の感じたことを適当に一般化しても成立してしまうんですよね。

最近、横着が祟って睡眠時間が削られることが多くて、それで体調を崩したりしているんですよね。それだけだと馬鹿な私が馬鹿なことして自業自得、というだけで終わるんですが、それにさっきのを付け足してみましょう。

「現代の日本の若者は怠惰であり、それで体調を崩すこともある。」

ほら、社会問題っぽい。

無理に大きなことを言おうとして逆に何も言えてないことってのは結構陥りやすいものなんです。だったら、特定の範囲に限定して確実に言えることを積み上げていった方が確実に中身のあることを言うことができるのです。嵐のように派手だけれども実体の定まっていない言説に惑わされることのなきように。

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「曖昧な話/嵐/山百合」への3件のフィードバック

  1. 確かに、批評など書く時にははもっともで、だからこそ自覚的に使ってみたり、言葉をどのように使っているのか定義するわけです。しかし、小説などの場合はどうか。その時は逆に曖昧さ故にに、使うわけですね。所謂、言葉の持つふくらみというわけですな。また、何かを表したい時にどうしても、曖昧な言葉を使わざるをえない、そもそも、言葉があるということは使う場面があるということですから。その点も述べないと誤解を招くかもしれませんね。

  2. 山百合さんの文章はいつもどんな形式でも読みやすくてすごい好きなんですけれども、なんだか前より角がなくなったような気がします。いや悪いと言っているわけではなくて、好きなんですけど、私が読み慣れたからですかね?
    まあそれはさておき、「嵐」という言葉は確かに曖昧で、はっきりせず、それでいて印象の強いどこにでも使える言葉ですし、そこから進んだ視点に飛ぶのもお見事、と思いました。こういうアイディアがなかったので本当にどこ批評していいのかわからず素直にすげえーと思って読んでいました。正直自分如きが言えるようなことはないです。
    まあ個人的な感想で言いますと、なんかこう、社会問題とか社会とかに結びつけて考えるのが自分は嫌いなので、今回の分の雰囲気から見て始終柔らかい話題を扱ってくれたらもっと嬉しいんだけどなあと思ってました。この話題を柔らかくしたら結論変わるでしょうし、その辺は完全に私の好みなので、何か言うつもりはありませんけど。

  3. 山百合さんといえば硬い文体で堅実な内容というイメージでしたが、この口調はとてもよみやすく、私のような頭にもその論理展開にうまくのっかり理解したような気分になれました。レベル調節を意図的に成すとか恐ろしいし素晴らしいですね。そして今の政治の言説の批判をしっかりなさっている。ここは私がとやかく突っ込める分野ではない…。まあ、あとはポエム化社会の風刺にもなりうるというか、そっちの方が広く蔓延してるかもしれないと思いました。

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