クリスマスの裏側/においのクリスマス/ゆがみ

どうして、みんな、こんなに明るくできるのだろう…

 

寒風の中街を歩くと、無数の電飾が輝いている。無数のカップルが輝いている。無数の子供たちが目を輝かせている。そうか、もう今年もクリスマスなのか。俺にもサンタさんを楽しみにしてたころがあったっけなあ。そんなうまい話なんてあるわけないのに。

 

 

「いい子にしないとプレゼントもらえないでしょ。」小さいころ誰しもが親によく言われた言葉であろう。俺も例外でない。プレゼントがもらえないのは当時の俺にとって大惨事だから親の言うことに素直に従った。しかし、後になってみれば明らかなことだが、俺は素直すぎだった。周りのみんながすでにサンタなんて嘘っぱちであると気づいているのも知らずに、中学校に入るころまでサンタのことを信じ続けたのである。

サンタを信じなくなってから6年ほど後、俺はパチンコに通うようになった。最初はバイトで稼いだ金で週1くらいやっていたのだが、段々とのめりこんでいった。借金をするようにもなったが、そのうち稼げるようになるという幻想を捨てることはできなかった。そして借金はたまっていき、借金取りに追われ、電気やガスが止められ、家を出るしかなくなった。このクリスマスの起源でもあるキリストは「信じる者は救われる」とか言ったらしいが、そんなことはなかった。結局世の中はずる賢い奴が勝つんだ。気づいたところでもう取り返しはつかないのだが。

 

 

それにしてもクリスマスは明るいものばかりが目に入る。その中にこんな落ちぶれた自分がいたとしてもなじまないし、むしろ拒絶されているようにも感じる。服装もぼろぼろのジャケットに所々破けたジーンズ、それに異臭を放つ古びた靴下。

そういえばどうしてサンタにプレゼントをもらうときに靴下なんて用意するのだろう。それもきれいな飾り付けされた靴下である。靴下なんて普通人からあまり見てもらえないところで臭いにおいを放ちながら地味にしているものではないのか?クリスマスというのはこれほどまでに見栄えの悪いものがなかったことにされる日だったのか。普段役立っているものだってちょっとにおったりするくらいではじかれてしまう。だったら俺はどうなのだろう。今はもちろん全く世間の役に立ってないしこれからもそうだろう。運よく家を見つけられたとしても借金取りが嗅ぎつけてきてまたどうしようもない状況になるのは時間の問題である。そんなやつ別にクリスマスじゃなくてもこの世に必要ではないだろう。このまま生きていてもただただ自分が辛いだけである。ではなぜ生きているのか?それは、かつてサンタさんやパチンコを信じていたように、心のどこかで馬鹿正直にまだ人生を信じているからなのかもしれない。

 

街を歩くとどの家からもごちそうのいいにおいがする。それにつられて腹が減ってきた。久しぶりにいいもの食べたいとか思いながらいつも通り廃棄食材をあさっていると、いつもなら捨てられないであろう割といい七面鳥が捨ててあった。きっとクリスマスだから少しでもダメなものは見捨てられるのだろう。なんともかわいそうである。そのまま捨てられるのももったいないし、何より腹が減っていたので食べることにした。

 

「俺なんかのエサでごめんね……でも良かったね……君にはまだ価値があって…」

涙が止まらなかった。

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「クリスマスの裏側/においのクリスマス/ゆがみ」への3件のフィードバック

  1. 前回も今回もゆがみさんの文章にあまりに救いがなさすぎて、特に最後の一文がなんだかツボってしまい、初めて読んだ時に声を出して笑ってしまいました。心ない人間でごめんなさい。
    さて、クリスマスを書けというとこのスタジオにやってくる生徒たちの傾向でしょうか、対照的に暗い話を書く人が多い様な気がします。別にどこに何を感じようが人の勝手なので暗い話が良い悪いとは言えませんが、暗い話にするのならば、説明はしすぎない方がよいかもしれません。個人的には暗いお話は雰囲気を楽しみたいなと思うので、細かい境遇の設定などもうまく物語の中に組み込めば、主人公の不憫さやクズさを自然に表現できるのではないかと思います。説明色が濃かった三段落目を中心に見直せば、もう少し読んでいてスッキリするかもしれませんね。メリークリスマス。

  2. 暗いよ!暗すぎる!!救いようなさすぎ!!もっと明るく行こうよ!と思いつつも、こういう話も好きだなあと思う。サンタクロースとパチンコの信仰が並べてるあたり、恐ろしかったし、良いと思った。そんなものだよなあと。

    ずる賢い、という表現は疑問だった。普通に生活してればそこまでならない、と思ってしまうのは私が平和ボケしてるのでしょうか。

    あと、涙が止まらなかった。が必要かなあ、と思った。それがないほうがなんとなく救いようない気が、違うかも。

  3. クリスマスにパチンコ、借金取りと暗いものをはい不幸でしょとポンと持ってきたかんじだったが、クリスマスだからといって、それに浮かれている人ばかりじゃないよなあと感じさせました。
    あまり直接的な描写が多いと、想像の及ぶ余地がないし、くどくもなってくるので、表現を少し変えてみるといいのかなあと思いました。

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