サンタさんがいた/においのクリスマス/ちきん

お鍋からちいさなマグカップへ移された、あたたかいミルクの周りに優しい雰囲気が漂う。今年はサンタさんへのお手紙と一緒に、みんなで型抜きしたクッキーとホットミルクを並べることにした。

「サンタさんは忙しいから、こんなに食べる暇ないかな?」

「でも、寒いしお腹も空いているから、きっと食べるよ。」

「何時に来るのかな?あんまり遅いと冷めちゃうよ。」

「もし冷めちゃったら、ママが後であたため直しておくからだいじょうぶよ。」

サンタさんは、家に大きなクリスマスツリーがきた昨年から、枕元ではなくツリーの下にプレゼントを置いていくようになった。一昨年もらった、おおきなくまのぬいぐるみのマロンちゃんを、今年はパパであるサンタさんに会わせてあげたいと思って、ツリーの横の椅子に座らせる。お手紙も、彼女に渡してもらったらすてきかも知れない。

「サンタさん、マロンちゃんのこと連れて帰っちゃうんじゃない?」

そうかも知れない。ママがそんな風に言うから、急に不安になって、やっぱり一緒のおふとんで眠ることにした。大切にしているところを見たら、きっと連れて帰らないでくれるだろう。毛布を首まで引き上げ、向かい合って、彼女のおでこに鼻をうずめる。家に帰ってきたときのコートみたいな、「寒い」の匂いになってしまっていた。「ごめんね、ごめんね」と、心の中で唱えながら、体温を分けてあげられるように、抱きしめた。これまで何度か、「あなたが急に喋ったりしても、私はびっくりしないよ」と、淡い期待で伝えたことがあるけれど、まだ応えてくれない。

ともだちに、「サンタさんは親なんだよ」などと言われても、あまりよく信じられない。何回か前のクリスマス、以前どこかへ出掛けたときに店先で見かけた磁石のおもちゃがほしかった。でも、ママに「今年のクリスマスは何がほしいの?」と聞かれたとき、それをうまく伝えられなくて、ママも「そんなおもちゃあったっけ?」とわからない顔をしていた。だけど、翌朝にはちゃんと思い通りのものが届いた。マロンちゃんだって、「くまのぬいぐるみがほしい」としか言っていなかったのに、大きさも、茶色じゃなくてクリーム色なところも、ぜんぶ思った通りだった。パパもママもミルクはあまり好きじゃないし、お手紙の返事も知らない字で書いてある。だからやっぱり、ふたりがサンタさんではないと思う。

今年は何回か宿題を忘れてしまったけど、妹とたくさん喧嘩してしまったけど、ともだちとばかり遊んでマロンちゃんに寂しい思いをさせてしまったけど、来てくれるだろうか。夢との狭間で何度も、どきどきしてしまうようなカラフルな包装紙と、空になったマグカップの絵が浮かぶ。

待ちわびた、彼の足音が近づいてくる。

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「サンタさんがいた/においのクリスマス/ちきん」への6件のフィードバック

  1. ほっこりしますねー。リア充がうんたらという話が割とある中でこういう温かい話は有難い。この子はサンタが親ってことを信じられないということですが、冒頭部分にある、パパであるサンタさんとはどういうことなんでしょう?そこが1番気になってしまいました。いくつの設定かは分かりませんが、比較的簡単な表現が多い中、たまに目立つ大人びた表現に少し違和感を抱きました。一人称で書くなら終始徹底して欲しかったです。

  2. 峠野さんの言う通り、パパであるサンタさんというところには確かに違和感を感じました。結局ここの家のサンタさんもパパということでいいんですよね。

    純粋な子供の頃を思い出して微笑ましくなりました。先述した違和感が取り除かれればもっと良くなると思います。

  3. 小さい子の目線という統一された世界の中で書かれていたので、読んでいてとても懐かししい気分になりました。ただ前の人たちも書いていますがそれだけにパパであるサンタが後に書かれている2人はサンタではないといのと矛盾していて浮いているように感じるのは否めません。

  4. ほっこりしました。
    ひらがなで書かれている字と、漢字のままで書かれている字が混在しているけれど、意図があってのことなのか興味を持ちました。

    寒い のにおいってすごい分かります。当たり前みたいに寒いのにおいってするけど、そこに目をつけられたのはすごいです。

  5. 語り手は、パパであるサンタさん、といいながらお母さんとお父さんはサンタじゃないと思うと言っていてそこがちょっとよくわからなかったです。匂いとの関連がいまいち浅くてそこがもったいないと思ってしまいました。個人的には磁石のおもちゃのにおいのほうが気になりました。

  6. 「パパであるサンタ」というのは、主人公の父親がサンタさんということではなく、マロンちゃんの父親は彼女を作った(?)サンタさんだろう、ということからそういう表現になりました。分かりにくくてごめんなさい。

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