寄り道/においのクリスマス/さくら

クリスマス。サンタが今年も街にやってくる。

 

街は一面クリスマス仕様のイルミネーションで、夜中なのに眩しいくらいだ。

3日前、フィンランドを発った日本行サンタたちは、24日の夜、無事東京までやってきたのだった。

「君は九州を頼む。わしは関西、そして君は名古屋のあたりをよろしく。」
荷物を分担すると、それぞれの持ち場に向かっていく。

関西方面を担当したサンタは、大阪の上空までやってくると、地図を見ながら荷物をどうやって捌こうか考えていた。そして、まず手始めに大阪有数の繁華街であるミナミの商店街を通りかかった。

ミナミといえば難波。たこ焼きやお好み焼き、串カツなど、変わらず今日もおいしい食べ物がたくさん調理され、そんなソウルフードのおいしい匂いで今日も充満していた。

プレゼントでソリがほとんど埋まってしまったために、ろくに自分の荷物を積むことができなかったので、3日間乾パン程度の食事だけで乗り切ってきたサンタは、どうしてもミナミの商店街に漂うおいしそうな匂いが耐えられなかった。

「少しくらい、平気だろう……」

サンタはついに我慢できずに、地上に降り立ってしまった。無許可で下界に降り立つのは、法に抵触してしまうのだが……

「とてもいい匂いがしたもんでね、じゃ、串カツ10本頼むよ」

サンタは串カツを頼むと、溢れる食欲を抑えるのに必死で、今か今かと待っていた。今日はクリスマス、そして夜の居酒屋ということもあり、コスプレをした酔っぱらいたちにうまく紛れ、本物のサンタはこの店に溶け込んでいた。

「はいお待たせ~、二度漬けは許さないよ~よろしくね~!」

揚げたての串カツをソースに漬け、口に放り込むと肉汁が溢れ出す。3日ぶりのまともな食事は、腹によく応えた。匂いだけでもご飯が何杯でもいけそうなソースは、口にすればさらにご飯が進む。あっさりとしながらもコクがあり、口の中からも香ばしさが広がる。生きててよかった。

長旅を続けており既に疲弊したサンタは、もうこの楽園を離れることはできなかった。隣の席では、とりあえずイベントに便乗しただけのようなコスプレサンタたちが、大騒ぎしながら酒を飲み交わしている。サンタも酒を頼み腹に流し込むと、気付けば日付を超えていた。

 

そうして、怠惰なサンタは、プレゼントを忘れて国へ帰って行ったそうな。

 

ゆうたくんの家には今年もサンタは来なかった。貧しい家庭で育ったゆうたくんは、まだ真実を知らない。外では、屋台のおいしい匂いが今日も香ばしく漂っているのだった。

0 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 5 (0 投票, 平均点: 0.00,  総合点:0  |  
投票する為にはユーザ登録する必要があります。
Loading...

「寄り道/においのクリスマス/さくら」への5件のフィードバック

  1. すっごい串カツ食べたくなりました。という小学生のような感想は置いといて。
    サンタ目線、とても面白いですね。ゆうたくんが不憫でならない。だけど、今年もプレゼントが来ない、というのが少し気になりました。設定によると無許可で下界に降り立つのは違法だということで、多分国にかえれば何らかの罰があるのでしょうが、去年もプレゼントを渡していないのなら、それが成り立たないかなあ、と。あと、唐突にゆうたくんが登場したのも少し浮いている気がします。最初に、ゆうたくんは今年こそ、とプレゼントを待っていた、のような文章を入れるだけでもだいぶ変わってくると思います。

  2. 串カツを食べる表現がとても上手で、峠野さんに続き、私も食べたくなった(笑)
    サンタさんのお仕事という夢のある物語と大阪ミナミの屋台の串カツという、違い過ぎるものの融合が楽しかった。
    最後、無理矢理ゆうたくんの貧しさに回収されて、テンションが下がってしまったのが惜しいように思う。我に返って慌てて配り終えたか、私たちがプレゼントを貰えないのは怠惰なサンタのせいだ!みたいに終わらせてしまった方が、前半の楽しさを損なわずに済むのではないか。

  3. サンタの視点で書くというのは変わってておもしろいですね。クリスマスでサンタは絶対にサボったらいけない日なのに、このサンタは意志が弱すぎて笑いました。最後の一段落はいらなかったかもしれないですね。急にゆうたくんが出てくることによってどうしてもそこだけが浮いててしまっている感じがします。文章のまとまりとしてはないほうがでてくると思います。

  4. 最後のゆうたくんの登場が急展開で少し戸惑いました。ただただゆうたくんがかわいそうでしょうがない。乾パンで旅しなければいいのに……。寄り道という題名はかわいいですけど、結局ゆうたくんの家にたどり着けていないなら寄り道ではないのでは…?(笑)

  5. 乗ってたソリとかトナカイとかどうするんだろう、とか考えながら読んでしまいました。

    けれど最後のオチが予想できたのと、あっさりとし過ぎていて、サンタのクズっぷりとかやらかしてしまったことの重さとかを書いてもよかったかなと思いました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。