輝く街の中で/においのクリスマス/ネズミ

 

もうすぐクリスマス。刻一刻とその時が近づくにつれて、街はきらめきを増していく。その明かりの下には幸せそうなカップルたち。その数もまたイルミネーションの光が増えるのに伴って、増している。街を少し歩くだけで複数のカップルたちとすれ違い、その度に彼氏のために選んだであろう女ものの香水の匂いが僕の前をよぎる。この女の人特有の匂いは僕の恋愛的なイメージと直結しているようで、脇を通り過ぎていく恋人たちを横目で流しては、今きらびやかな街を一人で歩いている自分と対比させたりした。

クリスマスなど恋人のいない僕にとっては関係のないものだと割り切ってしまえば、そこらのカップルに気を取られることなどなくなるのかもしれないが、そうもいかない。今僕には気になっている人がいる。その子と一緒に過ごすという理想を持っている限り、その子が誰と一緒に過ごすのかというのが気になっている限り、僕にとってクリスマスは関係ないものではない。

だが実際はその子にアプローチできずに踏みとどまっている状態にある。得意の「どうせ自分なんて精神」が邪魔して、決定的な一言が言い出せない。デートの誘いを断られて傷つくのが怖い。かっこ悪い姿をさらしたくない。結局僕は自分自身を守ることに必死になっているだけだ。自分のプライドが傷つくことを避け続けている。そんな僕に彼女が振り向いてくれるはずもない。僕に捨て身で戦える度胸と勇気があったらなあ。

もし付き合えたなら、あの子は僕のためにどんな香水をつけてきてくれるのだろう。妄想だけが独り歩きしていく。本当はあの子がどんな匂いをしているかさえもしらないのだけど。

ふと視線を前に向け、人ごみの中にあの子がいないかを探してみる。相変わらず目に映るのは大勢のカップル。白いため息が冷たい空気の中へと溶け込んでいく。クリスマスの日、横にはあの子がいて、この光る街の時間を共有するなんていう夢が叶う日はいつになったら来るのだろうか。そんなことを思いながら、僕はまたそれぞれのカップルが放つ幸せな匂いをかき分けながら独り歩き続ける。

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「輝く街の中で/においのクリスマス/ネズミ」への5件のフィードバック

  1. 男の人って香水にあまり関心がないと勝手に思っていたので少し驚きました!寧ろ香水の匂いには嫌悪感があるのかと。匂いによるのかな?女性ってそんなに香水つけるのでしょうか。私は香水が苦手で、つけるとしても柑橘系とか石鹸の香りぐらいなのでカップルとすれ違うたびに香水の香り、というのには少し疑問が。実際街を歩いても、見た目派手派手な人ぐらいからしか香水の匂いはしない気がします。
    それにしても、健全というか、少女漫画に出てくる男子感がすごい。全然捻くれてなくて、というか真っ直ぐでとっても羨ましいです。もし本当に気になる人がいるなら、是非頑張ってほしいなあ。

  2. うわ、まんま自分じゃないですか。共感共感です。

    どうせ自分なんて精神、わかってても取り除けないんですよね…

    リア充空間に漂うイケイケな人たちの香水の匂い、結構苦手ですがやっぱり好きな人が気合い入れて付けてきた香水の匂いは格別なんでしょうね。

    リアルだったので読んでて今の自分は虚しくなりました。文章としては成功ですね。

  3. 匂い=香水というのも、クリスマスを恋人と過ごすか一人で過ごすかみたいなことも、少し王道すぎるなと思った。それから峠野さんも指摘しているように、ある程度の距離を持ってすれ違うだけで、匂いを判別できるほど香水を大量につけている女の人って、そんなにいないと思うので、くるカップルくるカップル皆…みたいな感じには違和感があった。
    気になる人すらいない完全なるぼっちよりも、一緒に過ごしたい人と過ごせないクリスマスの方が、切ないかも知れないなと、ちょっと考えた。

  4. かわいいですね。backnumberとかめっちゃ聞きそう(笑)女性のにおいは片思いの男子心をくすぐるものなんですね。ただ歩いてるだけなの心の中ではここまで考えを巡らせている主人公を思い浮かべると面白いです。主人公はひとつもアクションを起こしていない中で、ここまで文をかけるのは羨ましいです。

  5. 恋愛は片思いしてるうちが一番楽しいとは言いますが、こんな風に誰かのことを思いながら過ごすというのもアリだと僕は思います。
    ネズミくんのピュアさが出た文章で、しかしだからこそ王道にはまってしまった感が否めませんでした。文章自体はとても好きで、ハートフルでした。

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