1225/においのクリスマス/シュウ

12月25日、この日は何を隠そうクリスマスである。この日ほど町が笑顔で包まれる日はないだろう。サンタクロースからのプレゼントを開封して喜ぶ子供。家族や恋人と大切な時間を過ごす人も少なくないだろう。そもそもいつからクリスマスがこんなにもにぎやかなイベントとなったのだろうか。欧米の文化が形を変えてすっかり日本に定着してしまった。それはともかく、今日12月25日のクリスマスは、多くの人にとって幸せな日であることには間違いだろう。

そんな日朝の午前6時。早朝である。である。僕は名前も知らない公園のベンチで一人座っていた。サンタクロースからのプレゼントが楽しみで、朝早く起きたわけではない。そもそも、もう来ない。朝早くから散歩をしに家を出てきたわけではない。昨日の夜、イブの夜からふらふらと歩いていたら、この公園にたどり着いてしまったのである。一度ベンチに腰を下ろすと、歩き疲れたこともあるが、それ以上の疲労感でもう一度歩き出す気になれなかった。正直寒さが身に染みたが、いっそのことその寒さと一体になってしまえばいいやという気にさえなる。スマートフォンの充電も切れてしまって、本当に一人だった。

どうしてこうなってしまったんだろう。昨日までは順風満帆だったはずだ。

まだ正式には付き合い始めてはいなかったが、クリスマスにデートをして、そこで告白をする。幸せな日になる。そのはずだった。けれど、きっかけはちょっとしたことだったのであるが、口喧嘩になった。かなりひどい口げんかで、罵詈雑言が飛び交った。近くで見ていたカップルは、何事かと思っただろう。少しずつ不満がたまっていたらしい。彼女は僕への不満を次々と吐き出した。感情を高ぶらせた彼女は「もういい。もう会わない」そういうと、僕に見向きもせず帰ってしまった。僕はその背中を見送ることしかできなかった。周りに幸せそうなカップルがいる中、僕だけが一人その場に残されたのである。

それからどうしたかは、はっきり覚えていない。家に帰ることもできず、ただただ歩き回って、この公園にたどり着いた。ずっと星空を見上げ感傷に浸り、頭を抱え悶々とし、気付いたら夜が明けた。

こんなにもたやすく壊れるとは思っていなかったし、僕の心もこんなにももろいとは思ってもみなかった。どうしたら、この気持ちから解放されるのだろう。

朝日をぼんやり眺めていた。太陽は不思議なもので、こんなな僕にも活力を与えてくれているような気がした。

停滞したままで次に進めない。まずは、連絡を取ってみよう。スマートフォンを充電しないと。とりあえず、まず帰ろう。そして、温かい風呂に入って考え直してみよう。

僕は立ち上がると、朝の冷たい空気を肺いっぱいに吸い込んだ。冬の朝の土の匂いがどことなく切なさを感じさせた。

冷たい空気を吸い込んだせいで、せき込んだ

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「1225/においのクリスマス/シュウ」への3件のフィードバック

  1. 順風満帆から孤独へと転落していったさまが良く描かれていると思います。悪いことが重なるのはベタですが、わかりやすくてすんなり読めます。
    しかし、テーマを最後に無理やり出したようなところが少し残念な気がします。また、ありきたりな話だというのもありますがタイトルがあまりにも普通なのでもっと凝ってもよかったのではないかと思います。タイトルで何かにおいと関連付けたものを出してそれをストーリーに出してみてもいいのではないでしょうか。

  2. この絶望もしなければ過度な期待もしない感じ、とても好きです。なんだか世界が優しい気がします。確かに主人公は一気に転落したんでしょうが、それをそうと感じさせない事実を語る様な文章で、その先にちらりと希望を匂わせるのは、現段階は誰も幸せになれていなくても読者に希望を与える様な気がします。人間なんて生きてるだけで常にお先真っ暗だからでしょうかね、世知辛い。
    出来事すべてが過去のこと、もう終わってしまったことなので、クライマックスもなければドラマ性もないのは、まあ、仕方のないことと思います。小説としては動きに欠けますが、読んでいて幸せにはなるので、これはこれでよいのかなとも思いつつ……シュウさんが書きたいものが元々どういうものだったのかが少しだけ気になります。
    最後に、いつもラストの一文でちょっと間抜けなオチをつけてくるのもすごく好きです。

  3. クリスマスって普通に喧嘩しますよね。なんだか相手らしいものがいても、たまたまその日に限って、お互いに期待をしてしまってうまくかみ合わなくて、喧嘩してしまうこともある。なんだか見覚えがあるので、切なかったです。でも、そこまで絶望でもないこの感じがとてもよく書けていると思いました。

    シュウさんの劇的なことは起こらないけれど、なんだか後味が良い感じ、好きです。

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