斜視、ズレル視点。/目/ばたこ

二年になって、私にも初めての後輩ができた。うちの女子バレー部は、強豪と呼ばれるだけあって毎年30人以上の子が入ってくるんだけど、それでも練習が厳しいからゴールデンウィークの合宿が終わるころには半分くらいが辞めてしまう。それはマネージャーも一緒。毎年女子が数人と十人弱の男子が入ってきては、選手からの扱いのひどさとか女子社会の醜さとか、いろんな理由で結局みんな部を去っていく。

私は最初、彼もそんな人の一人になるんだって思ってた。多分他のみんなだってそう思ってたと思う。実際に今年も例年通り、もしかしたらそれ以上かもしれないくらい選手はマネージャーの事をぞんざいに扱ってたし、もし男子が少しでもいやらしい目をしてたら速攻でその人を退部に追いやったりした。

でも、彼だけはそうじゃなかった。いっつもプレーをする選手の顔を見てて、何かあったら誰よりの早く駆け寄って水とかタオルとかを渡してた。たまーにうわの空で上の方を見てたりもしたけど、なんかそれも可愛らしくていつの間にか彼は部のアイドルみたいになってた。

いつだったか、彼になんでマネージャーを続けてるのか聞いたことがある。彼は「好きなものがあるんです」ってそれだけ言ってあとはなんにも、それがなんなのかも教えてくれなかった。多分この時だった気がする。私がこの人のことを好きなんだってわかった。

それからは毎日が楽しかった。練習をがんばったらその分彼がもっと見てくれるはずだって思って、今まで以上に精いっぱいにやった。そのおかげで苦手だったサーブもいつの間にか他のみんなよりも上手に打てるようになって、気付いたら私は三年の先輩も押しのけてレギュラーになった。

その日の晩、彼に告白した。理由なんてわからないけど、絶対成功するってそう思ってた。でも、

「ごめんなさい、先輩とは付き合えません。」

意味が分かんなかった。話を聞いたら、その時もう彼は他の子と付き合ってたらしい。部で一番胸が大きい子。彼はそんな人じゃないって、そう思ってたのに。裏切られた気分だった。信じられなくて、信じたくなくて、彼にひどいことをたくさん言った。そしたら彼も慌てちゃったみたいで、声を上ずらせながら何度も私に謝った。でもその時私の頭ばっかり見て謝るから「人の顔見て話して」ってもっと怒ったら、

「ごめんなさい。ぼく、斜視で、見た目と実際に見てるところがずれちゃうんです。」って。彼が言うに、人の目を見てるときに周りからは相手の頭を見てるように見える。つまり、視線が上下にずれてるらしい。「じゃあ今までどこ見てたの?」って聞いたら彼は黙り込んじゃった。もう話すのもその場にいるのも嫌になって、その場から逃げて部活も辞めちゃった。

 

お察しの通り、私は貧乳だ。

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「斜視、ズレル視点。/目/ばたこ」への1件のフィードバック

  1. 最後まで読んだ上で読み直すと斜視のための伏線が目立って見える。オチのためにすべて書かれているようで、一つの物語として成立するようにならなかったのかと。あと斜視の解釈はこれで正しかったのか、自分でも詳しくないのであまりつっこめないが少し疑問に感じた。

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