愛目/目/フチ子

彼が、私のことを惨めだと言い放ち、目も当てられないから付き合ってやるよ、と言ったのは12月25日深夜0時26分。去年のクリスマスだった。いつものようにからかってるだけかと期待しないでいたのだけど、その日の夜、「こいつ、おれの恋人〜」と友人に紹介していたから驚いた。「え、本気だったの?」と聞いたら、いつものように「うるせぇ」と一蹴された。

「付き合う」となったはいいものの、これといった変化はなく、相変わらず貶されるし、ばかにされるし、下ネタの会話に無理やり入れられる。いきなり甘々な雰囲気なのも気持ち悪いけれど、わたしは本当に恋人なのか?と首を傾げたくなる。

彼は大魔王のような悪い顔で私を罵倒する。その時の楽しそうな、獲物を見つけたかのようなギラギラした目は、見ていて面白い。私にいきなり議論をふっかけ、一瞬の矛盾も逃さずに「話の論点履き違えるなよ」と指摘する。お前可愛くない!そして打たれ強すぎ!と笑いながら悪口を言ってくるけれど、そりゃ可愛くて普通の女の子だったら泣き出してしまうに違いない。私みたいなマゾヒストじゃなきゃ、彼の側になんていれないだろう。

そんな目とは反対に、どこ見てるのかよく分からないときがある。宙に浮いていて、明らかに自信なさそうな目。彼のナイーブなところがたまに露呈して、私はすぐさま気づいてしまう。察しの良い女はモテない、と批判されたこともあるから、グッとこらえてそのことを言わないけれど、たまに笑いそうになる。愛おしい。私が気づかないふりして側で笑かしてあげるから大丈夫だよ、と心の中で唱える。そしてやっぱり安定した職について彼を支えよう、と友達が猛反対する決心をなおさら強くする。

彼のキラキラした子供のような目も大好きだ。大きな、というよりも巨大なクマのぬいぐるみをクリスマスにプレゼントしたときの、本当に嬉しいんだろうなと思えるはしゃいだ目。大抵の人がいらないだろうけど、彼ならきっと喜んでくれる、そう確信していたから、買えたプレゼントだった。きっとあの凝った年賀状を見たときの目も、そんな感じだと思う。私がしたいなと思ったことをすると、大抵喜んでくれる気がする。何が嬉しいかわかりやすい上に、私がしたいことと合っているのだ。それだけで、なんだか心強い。

目を見ただけでわかってしまう彼の単純さに彼はきっと気づいていない。何を考えてるかわからないような、ミステリアスな人も魅力的で惹かれてしまうのだけど、結局のところ何も気にせず大笑いできるのはわかりやすい人を目の前にしたときだ。そんな彼の側にいる私は、のびのびとしていて心地が良さそうだ。当分ここにおさまっていよう、と密かに思う。

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「愛目/目/フチ子」への2件のフィードバック

  1. 純粋で単純だけど、それゆえに暴君。みたいなキャラクターは邪道に見せかけた王道ですね。ただ、今ひとつどちらの面も掘り下げきれてないかな、という印象を持ってしまいました。魅力が伝わりきらないというか。それともそれが狙いなのか?と深読みしていました。

  2. 議論をふっかけてくるという部分を除けば、少女漫画の王道な彼氏だと思います。そこがキャラ立ちしていて良い点でもありますが、逆にちょっと浮いている感も否めません。
    友達に猛反対されているということは描写されているよりもう少しロクでなしな設定なのでしょうか?

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