目じゃない/目/ちきん

先日彼から、私たちの交際の噂が地元の同級生の間で広まっているという話を聞いた。別に隠したいわけではないのだけれど、けっこう意外な組み合わせ(?)というか、おもしろがられる話だし、よく知らないひとたちに憶測で関係を語られるのはいい気分ではないので、お互い親しい友人にしか話しておらず、そのひとたちにも、無駄に話を大きくしないようにと言ってあった。そうは言っても、親しい友人たちのそのまた親しい友人たちには伝わるだろうし、普通に2人で街を歩いたりもするから、直接私たちのことを見掛けたひともいるのだろうということは分かる。しかし、それにしても広がるペースが速い。都会の「誰も自分のことなど見ていない感」や「どこに行っても誰にも会わない感」に慣れてきていた私は、なんだかちょっとうんざりした。

少し前には、彼のお父さんが中学校時代の親友に私たちの話をしたらしい。その親友の奥さんというのが、私の父親の職場の隣の事務所で手伝いをしており、娘は私の小学校時代の友人だから、私の母といわゆるママ友的な関係でもある。両親に交際のことが伝わるのも、秒読みだろう。地元も家族も大好きなのだけど、どうしても、この世界の狭さには嫌気がさす。私の祖母も、どこどこの誰々さんが結婚したとか、入院したとか、仲が悪いとか、ほんとうにそんなことばかりしか話題がない。きっと、抜け出せない半径数十キロ以内に、誰かが起こしたことを噂するくらいしか、刺激や楽しみがないのだろうと思う。

いつまでも文句を言っていないで、ひとの目など気にせず、2人で勝手に幸せになったらいいとも思うのだけど、それでもどうしても抜け出せないのはきっと、それが目ですらないからだ。みんな、自分とその周りにだけ時間が流れて、ただ成績がいいという理由だけで、真面目で謙虚でリーダーシップがあると思われていた私から、記憶を更新させようとしない。時が経っても、相応に成長や変化を考えない。私のこと、恋なんてして、振り回して振り回されて、ひとに甘えたりめちゃくちゃに泣いたり悩んだりする生き物だと、信じていない。それがいちばん息苦しい。それだけそういった形で信用されているのだともとれるけれど、それでも窮屈で、自らこの狭いコミュニティの中に戻りたくはないなと思ってしまう。私のこと、ちゃんと見てほしい。

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「目じゃない/目/ちきん」への5件のフィードバック

  1. 私のことをちゃんと見て欲しいけれど、そんな自分は他人のことをちゃんと見れているわけがないのだから、自分も見てもらえるわけないじゃないか……なんてことをぼーっとしながら時折考えるのですが、きっとみんなもそんな風に思って苦労してんだろうなあと思いながら読みました。中々難しい話ですよね。どれだけ他人の認識を気にしたところで他人の認識を認識するのは自分に他ならないのだから、というのをわかっていても理屈どおりに考えられない人も居るだろうから、大変です。
    ちきんさんの文章はもう書き方が完成されていると毎回思っているので、これ以上どうこう言える幅がなくて毎回コメントを悩みます。ふわふわとした独白に外からの正解も助言もいらないんだろうなあと思って読んでいるのですが、ちきんさん本人がどんな考え方をしてどういう風に生きているのか興味が湧いてしまうので、 ちょっとその辺聞いてみたくあります。

  2. 自分はずっと同じようなコミュニティの中で生きてきた人間であるので、これほどの大きな落差はないにしても、多少異なるコミュニティ間での自分の捉われ方というものには差異を感じたことはあります。僕の場合はちきんさんとは逆ですけど。

    いわゆるヴァーチャルな世界での「データ・ダブル」のようなもので、さしずめ「コミュニティ・ダブル」といったところでしょうか。
    一人歩きする自己像に対するアクションは、人それぞれ違っていると思うので、それもまた興味深いと思いました。

  3. 自分にはない考え方で読んでいておもしろかったです。相変わらず読みやすい文章で伝えようとすることがよくわかります。強いていえば、「少し前には」から始まる関係を説明する文が少し頭がこんがらがりました。これは僕の理解力のなさもあるのですが。

  4. 狭いコミュニティで生きることの息苦しさ、すごく共感してしまいました。世間が狭いなって地元でずっと感じていたことを思い出します。最後の一文、私のこと、ちゃんと見て欲しい…すごくグッときました。全てがその一言に集約されている気がします。サクッと読むことができました。それがいいのか悪いのかはわからないのですが。

  5. 高校くらいまでだと地元のコミュニティの中で生きざるを得ず、あれ?なんでそんなこと知ってるんだ?ということを母親から聞かされるということが、あってコミュニティの狭さと話題にない退屈さを感じることがあったので、共感できました。
    肩書で見られることも多くつまらないですけど、一人暮らしをしているとたまに触れたくもなります。

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