まぶたのみどり/キャプション/ノルニル

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年が明けて、早朝の湖へ写真を撮りに出かけた。
ファインダー越しの世界は湖面からひろがる冷気に澄みきって、透明なたべもののよう。
空、そしてそれを映した水面は次第にみずいろから朱に染まっていく。
ゆっくりと昇ってくる今年はじめての太陽に向けて、続けてシャッターをきる。

眩しいときと笑うときって似てるよね。昔読んだ小説のセリフを思い出して、目を細めてみる。
陽の光は強烈で、一瞬で目にその残像を焼きつける。
まぶたを閉じると、鮮やかに一面のみどり。目を開くと、時間をかけて血を薄めたような緋色へと移り変わっていく。

撮影した写真を確認すると、カメラのディスプレイに表示された光景は確かに目で見たものに近かった。
でもそこには確かに、みどりのもやは残っていなかった。
考えてもみれば、100分の1秒の速度で撮影するカメラに残像が現れるわけもなくて。
そうしてひとり腑に落ちていたら、いつの間にか残像も消えていた。

さあ、今年はどんな人間になろう。元旦はいつもこの抱負に悩まされてきた。
けれど今は、ひとときでも人の心の中に焼きつく、そんな残像のような存在になりたい、そんなことを自然と考えていた。

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