好き嫌いのない/嫌い/温帯魚

嫌いなものを思い浮かべろと言われて、しかしピンとくるものがない。
虫だったりセロリだったりは好きではないが、しかし嫌いとまではっきり声に出すのは少々ためらわれる気がする。虫を見て憎々しく思うほど私は潔癖ではないし、セロリのスープを見てこれは飲まないと主張するほど子供らしくはふるまえない。もしセロリのスープが食卓に出てきても、せいぜい最初にグイと飲み干した後、水をコップ一杯分飲み干すといったところである。虫を食べるのは勘弁いただきたい。

一応書いておくと、私が高等な人間だと主張するわけではない。試しに好きなものを思い浮かべようとして、これもまた思いつかない。読書や音楽などは好きな気がする。しかし、だから何をしたというものがない。それを好きな人たちがいて、その人たちがやってきたことに対して、私は劣等感を感じる。その負い目で、どうにもそれらを好きだと主張することもできない。

人はどうだろう。過去に私を虐めてきた人、あるいは私が虐めた人といるが、しかし彼らが嫌いかと聞かれてそんな風にも思えない。単純に忘れたということもできるが、やはり嫌いというものは違うように感じる。せいぜい苦手といったところだろう。

私が思うことは得意と苦手で分類している気がする。得意で何回も繰り返すものがあって、苦手で手に付けないものがある。嫌いじゃないからいなくても問題がなく、好きじゃないから何を言われても受け流す。要するに受動的なのだ。だから何があっても自分から大きくは動かない。得意だからと言って自分から向かうことはしないし、苦手だからといって本気で逃げるわけでもない。必要最低限によりエネルギーがいらないほうへと流れるのである。

得意なものでも失敗するとすぐ苦手になる。苦手なものからは逃げるから得意にはならない。もちろん得意にするための技術もない。正直言って何事もどうにもならない。

これでも納得はしているのだ。しかしやはり不安、なのだろう。

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「好き嫌いのない/嫌い/温帯魚」への3件のフィードバック

  1. おお、なるほど…という印象でした。嫌いと自分の中でくくってしまうと視野が急にせまくなり、損して生きているような感じがして
    わたしも好き嫌いとグループ化をあまりしないので、共感できる部分もありました。
    題名がそのまま文章に反映されていたので、文章の内容が予想できた気がします。

  2. 好き嫌いではなく得意苦手がある、という感覚はわかるし同意します。好きになるのも嫌いになるのも能動的ですごくエネルギーを使いますよね。現状が不安だからといって好き嫌いを持っても、それはそれでやっぱり不安になるかなぁと思います。

  3. 劣等感で、好きなものを好きだと主張できないということにすごく共感しました。
    たしかに、何が好きで何が嫌いなのか、明確に判断できないような気がします。ただふらふらと流されているその状態の不安さに、この文章を読んで気付かされました。

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