嫌いの甘さ/嫌い/リョウコ

嫌い、という言葉が私は好きだ。
 “きらい”程、相手へhateをぶつける言葉の中で、ストレートなものはない。子音のKから始まるその言葉は、初めのKIという一音だけで、十分に鋭い。
子供は、相手への敵意や不快感を表現する語彙として、よく“きらい”を使う。“きらい”は、人から、世界から突き放されることを諦めていない子供達にとっては、恐ろしい凶器である。
 「○○くんがきらい!」
 “きらい”が恐ろしいのは、確実に相手を切りつける武器だからではない。“きらい”は、諸刃の剣。言われた方も、言った方も同じだけ傷つく武器なのだ。
 私たちは成長するにしたがって、自分と周りに都合が良いように、自分の中のhateを捻じ曲げていく。
周りの人への不愉快さを表現する言葉を、私たちは“きらい”意外にいくつも知っている。
“きらい”の代わりに、“にがて”を使う。自分はあの人とはうまくやれないけれど、皆は気にしてないみたいだし、と相手を傷つけず自分の立場を守ることができる。
“きらい”の代わりに、“にくい”を使う。自分があの人を敵視するのは、相応の理由があるから、という意味を匂わせ、自分が正しい人間になったような気分になれる。
自分を正当化しつつ、相手だけをうまく傷つける言葉や、不愉快さを巧く隠してそれとなく周囲の人間に伝えるというやり方を、私たちは大人になる過程で覚えていく。それは、自分を社会から守りつつ、相手だけを傷つける卑怯だがタダシイやり方なのだろう。
“きらい”は、子供の言葉なのだろうか。確かに、“きらい”には甘えた響きがある。それは、理由付けされる以前に生じたhateの感情をそのまま相手にぶつけているから、かもしれない。
“きらい”は攻撃の言葉にするにはあまりに無防備で、不完全なために、切れ味の良い武器でありながら、相手に反論の隙を与える。その隙こそ、相手への甘えの正体、子供言葉に聞こえる理由ではないだろうか。
私は、そんな、“きらい”の愚直さがとても好きなのだ。

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「嫌いの甘さ/嫌い/リョウコ」への2件のフィードバック

  1. 「嫌い」という漢字にも、何かトゲトゲしさを感じます。鎌や兼には感じないんですけどね。
    苦手という表現、よく使います。リョウコさんの言う通り、自分の感情と普遍的な悪とを切り離したような表現に聞こえますね。憎い……はあまり使いませんが、使うとしたら自分の嫌いという感情を外と共有して共通の敵を作るという意図があっての使い方でしょうね。
    それぞれの言葉の裏に思惑があって、面白いものです。

  2. きらいって、確かに子供っぽい言葉ですよね。なんていうか、すごいら感情的で、気分任せに言い放ってる感じがして。

    嫌いって言葉よりも「やめて」の方が刺さりますよね。関係の遮断を通告されるのがつらい。それなら「嫌い」っていう言葉の方がまだ未来があって、優しい。そういうところが子供っぽいと思わせる理由なのかな?

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