小さくても色々考えている/嫌い/ふとん

 

幼稚園の年長さんくらいに仲良くなった、ゆいちゃんという子がいた。

そのころどうぶつの森というテレビゲームがものすごく流行っていて、ふたりともそれを持っていたのがきっかけで、気付いたらいつも二人でいるようになっていた。

ゆいちゃんはとにかくわたしを束縛したがる子で、他の子と遊ぶといつも怒った。

 

小学校でも同じクラスになると、それはどんどんエスカレートした。

 

入学してすぐ係決めがあった。

先生が黒板を指しながらこの係をやりたいひと、と言って手を挙げたらそこに入れる仕組みだった。ゆいちゃんが先になにかに手を挙げた。挙げながらめちゃくちゃこっちを見ていた。

わたしも手を挙げろという意味だったのはなんとなくわかったし、その係をやりたいと少し思ってもいたけど、ずっとゆいちゃんと一緒なのも飽きるような気もした。

それに、やれといわれるとやりたくなくなるあまのじゃく精神を小1の私は持っていたので、違う係に手を挙げた。

すると全員挙げ終わって黒板に名前を書くときに「なんでそんなのやるの!?」とキレられた。

自分のやりたいのをやっていいんだよ、と言う先生と、キレながら説得し続けるゆいちゃんに挟まれ、結局ゆいちゃんと同じ係をやることになった。

 

 

ゆいちゃんが掃除当番の昼休みに、こっそりさやかちゃんと遊ぼうとしたことがある。

さやかちゃんとグラウンドに向かおうと階段を下りていたところで、異変に気付いて全力で追いかけてきたゆいちゃんに見つかった。

「わたしとさやかちゃん、どっちと遊びたいの!?」

ゆいちゃんは自信ありげだった。ここでさやかちゃんと答えたらゆいちゃんが怒るのはわかっていた。わかっていたけど、言った。

「いつもゆいちゃんと遊んでるからきょうはさやかちゃんと遊びたいかな」と。

次の瞬間、ゆいちゃんが走り出した。外は雪が積もっているのにコートも着ないでグラウンドに飛び出した。

わたしは内心、非日常な出来事にわくわくしてにやけそうになりながら、焦っているふりをしてゆいちゃんを追いかけようと思った。

急いでコートを取りに教室に戻ったとき、状況を察したえりこちゃんに「あんなのほっとけばいいじゃん、追いかけちゃダメ」と引っ張られた。

家に帰ってこの話をしたとき、母親が「えりこちゃん大人だね」といった意味が、今ならわかる。

 

 

ある日ゆいちゃんが突然、男子に「嫌い」と書いた手紙を渡そうよ、と提案してきた。

目的も利益もない意味不明の誘いだった。でもゆいちゃんがすごく楽しいことのように言うので、私もやることにしてしまった。

ゆいちゃんはすぐに書き終えて隣の男子に渡したようだった。その男子はあまり傷ついた様子はなく、前の方の席で冗談を言い合っているのが見えた。

わたしもやると言ったからにはやらないといけないと思った。

紙に相手の名前とその二文字はとっくに書き終えていて、隣の席の男子に渡すだけだった。

いざ渡すとなると、いけないことのような気がして、やっぱり渡さないでおこう、と思ったところで、隣の男子が私の手の中の怪しい手紙の存在に気付いてしまった。

「それ、何が書いてあるの?」

そう言われて急に、これは絶対に見せてはいけないものだと確信して、なんでもないよ!と言って隠した。

小学1年生がそんなことをいわれれば気になるに決まっていた。頑張って隠し続けたにもかかわらず、もぎとられて中を見られてしまった。

その子は平然を装いながらもすごく傷ついていたように見えた。本当に嫌いなわけがないのに、悲しませてしまって自分も悲しくなった。

しばらくして、その子が床に捨てた手紙を先生が拾って、わたしが書いたのがばれて、先生にものすごく怒られた。先生に怒られるなんて初めてで辛くて、たくさん涙が出た。

ゆいちゃんがやろうと言ったことも、同じことをやっていたことも、言えばいいのに言わなかった。

ゆいちゃんは怒られて泣いている私を見ながら何も言わずに通り過ぎていった。

 

あんなに翻弄されたのに、ゆいちゃんのことを嫌いと思ったことはなかった。

成長するにつれてゆいちゃんの性格は落ち着いていって、違う中学に通いながらたまに遊んだりもしていたけど、同じ高校を受験して私だけが受かって、そこから連絡をとらなくなった。

いま、どうしているかな。

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「小さくても色々考えている/嫌い/ふとん」への2件のフィードバック

  1. ゆいちゃんみたいな子と思いっきり喧嘩したことがありますが、今では結構いい黒歴史です。私もそっち側の子だったのかな。
    男の子に渡した「嫌い」とゆいちゃんを「嫌い」になれないのと。どちらも不可欠なエピソードだとは思いますが、お題的に重ねているというよりは被ってしまっていると感じてしまいました。

  2. 同性の友達に嫉妬され嫉妬するのは子供、特に女の子特有で、あーわかるわかると思ったけれど、内情面が薄かったからか、面白さがなかった。主人公は良い子なんだろうけど、そこにもあまり共感できる描写がなく、平坦。エッセイってどうしてもネタがなくなりますよね。

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