おまじない/百合/Gioru

すらっと背が高くて折れそうなほど細い腰。スカートから伸びる脚もやっぱり細くて、肌の色は雪のように白い。目はパッチリと開いて二重瞼。長いまつ毛が特徴的で彼女……リンの一つ一つの動きがまるで芸術作品のように感じる。櫛なんかいらないんじゃないかっていうほど、縮れのないきれいな黒髪を持つリン。

 

そんな姿から、クラスでは完璧美人なんて呼ばれている彼女と関わりを持つようになったのは本当に偶然。

 

私の大好きなぬいぐるみを買いに行った先で、真剣な顔でぬいぐるみとにらめっこしているリンに出会ったのだ。

なんども棚の前を行ったり来たりして。やがて決まったのか、今まで見たことがないような無邪気な笑顔でウンと頷きながら、一つのぬいぐるみを持ってレジへと向かう。その途中でバッチリと私と目が合ってしまったのだ。リンはこんな姿を同じクラスの私に見られたくなかったのか、顔を赤くしてもじもじとしている。それを見て私はとても親近感を覚えた。私から積極的にそのぬいぐるみの話題をしていって、やがてリンと打ち解けた。

その後は水が流れるかのように仲良くなっていって、休日になれば二人で可愛いものを探しに街に出かけたし、教室でもいろんなことを話した。今まで通じ合わなかった時間を埋めるかのようにベッタリとくっついて毎日を過ごしていた気がする。そのどんな時も、リンの笑顔はとても生き生きとしていて、そんな彼女に私は惹かれていった。

けれども、やがては終わりを迎えてしまうわけで。

 

「私を……置いてかないでよ」

卒業式の後、もう涙を堪えることなんてできなかった。視界がどんどん霞んでいって前が見えなくなる。連絡先も交換してある。これが今生の別れなんてことじゃないのはわかっている。けれども進学先も違って、めったなことではリンには会えなくなる。私と同じ、女の子だと思うことができたのに。

リンの白くて細い腕にはお揃いのブレスレッド。一緒に買い物にでかけたときに二人でとても気に入って買ったものだ。私たちは一人じゃないよ、わかってくれる人がいるんだよって、安心させてくれる思い出のもの。あの日からずっとリンがそれを付けているのは知っているし、今も付けているのだからその気持ちは変わらないのだと思う。もちろん私もあの日からずっと肌身離さずにつけている。

でもね、それだけじゃ足りないんだよ。

もっとあなたと一緒にいろんなところに行きたい。そこでいろんな景色を見て、そこで二人して笑いあって、少しでも長くリンといたい。

もっと大切なあなたを感じていたい。

でも、こんな気持ちをどうやって表現したらいいのかわからなくて。

わからないから少しでも長くリンを目に焼き付けたいのに、それすらもぐちゃぐちゃで何が何だか分からないよ。

こんな顔、リンに見られたくなくてどんどん下を向いてしまう。

「こんな辛い思いをするなら、リンに会わなきゃよかった」

ポツリと、そう呟いた。

もう痛い思いをするのは嫌だ。そう思ってリンの横を通り過ぎようと足を進めようとする。

でも、私の両頬をなんだか温かいもので包まれて、その何かがリンの両手だと気が付く前に、

 

私の唇は塞がれた。

これ以上に柔らかいものなんてないんじゃないかと思った。

 

チュッ、という音と共にそれは離れていって、その後に目元の涙がぬぐい取られるのがわかった。

「私を忘れなくさせるおまじない。私はスズネに会えて本当にうれしいんだ」

視界がよくなってきたと思った時に突然かけられた言葉。

「だからそんな顔しないで。それとも、本当に私のこと嫌いになっちゃった?」

「そんな……こと、ないよ!」

思わず叫んでしまって、はっとして目の焦点をリンに合わせる。

リンはこれ以上ないくらいの、今までで一番かわいい笑顔だった。どんな子にも負けない。完璧美人なんかじゃない、私の大好きな女の子。

「じゃあ、スズネからもおまじないしてくれる?」

そういって目を閉じるリン。私の答えは決まっている。

 

日が山にすっかりと隠れるころ、闇に紛れてリップ音が一度響いた。

0 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 5 (0 投票, 平均点: 0.00,  総合点:0  |  
投票する為にはユーザ登録する必要があります。
Loading...

「おまじない/百合/Gioru」への3件のフィードバック

  1. 女の子にキスするのは勇気いりますよね。したことないけど。身体的な接触に抵抗のない子なら、女の子にキスしたい欲求に駆られたことある子はそこそこ多いと思います。たぶん(身の回りに何人かいただけなのでよくわかりませんが)。二人に感情移入のしやすい文でした。ただ、リンに会わなきゃよかった、の部分だけが唐突に重たいように感じます。

  2. 全体的にお花畑というか、「男子の考える女子像」すぎて笑いました。もっとも、それが正しい場合もあるので僕からは何とも言えません。
    序盤の〜のだ。〜のだ。の繰り返しのしつこさ、接吻のシーンでのチュッという擬音語の選択に特に違和感を感じます。後者に関してはいっそ擬音語をなくして比喩で表現した方がいいかもしれません。

  3. チュッとかリップ音とかいう言葉はあまり使ってほしくなかったように思います。あと、彼女たちの名前をカタカナにしたのは何か理由があるのでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。