三角/百合/シュウ

「あってほしい人がいる」

付き合い始めて三か月ほどたったある日、僕の彼女――美咲に改まった口調で言われた。あってほしい人? 親か? 付き合ってまだ三か月だぞ、さすがにまだ早すぎるんじゃないか? と勝手に一人で考えていたがどうやらそうではないらしい。どうやら人を紹介したいらしいが、どうも煮え切らない様子だった。詳しく聞きたかったのだが、

「それじゃあ、金曜の夜あけておいてね」

一方的に話を打ち切られてその場は終わってしまった。

約束は近所のファミレスだった。美咲は先に入っているらしく、僕は後から美咲が待っているテーブルのもとへ到着した。座席を間違ったかと思ったが、きちんと美咲はそこにいたので、間違ってはいないらしい。ただ、美咲の隣に知らない女が座っていた。

「お待たせ……」

平生を装って声をかけると、美咲は振り向いて僕の存在に気付いた。

「あ、来た来た。座って」

何事もないように、着席を求められた。これから面接が始まるのではないかという緊張感である。美咲と知らない女が面接官。

「さっそくだけど、あってほしい人ていうのはこの人なの、加奈子」

そちらに一瞥すると「ちす」と挨拶してきた。なんだかロックだ。

「それでね……」

美咲は口ごもってしまった。どうも歯切れが悪い。加奈子に「言うんでしょ?」と背中を押されると、決心がついたようで、ようやく口を開いた。

「言おうかどうか悩んでたんだけど、やっぱ隠してるのも居心地悪いから言うね。私たち付き合ってるの」

時間が止まった。理解しがたい出来事に直面すると頭が真っ白になるというのは本当だったらしい。

つまりは、あろうことか二股をかけられていたわけである。もっとも、美咲の二股の相手は女であったわけであるが。「あってほしい人」という言い方で紹介しようとしたのは、相手が女だから許されるであろうと思ったのだろうか。

何だろう、この三角関係……。不倫ではないのだろうけど、釈然としない。

「別れようってことじゃないんだけど、それでも私のことをきちんと知っていてほしかったの。なあなあな関係は嫌。あなたのことも好きだけど、彼女のことも好き」

そう言い切った彼女は、強い女性ではあるが、ひどい女性でもあった。こんなシチュエーション、考えてもみなかった。そして、僕らの関係を僕に押し付けてしまっている。関係を決めきれない美咲の弱さでもあった。

それでも、彼女を見る限り、僕の答えを待っている不安そうな彼女を見る限り、大真面目なようだ。

ここははっきりしておかなければなるまい。美咲の気持ちにまっすぐ答えよう。

僕の気持ちは……。

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「三角/百合/シュウ」への5件のフィードバック

  1. 「会ってほしい人がいる」なんて改まって言われたら緊張するのは分かるが、彼女と男性が一緒に待っていたならまだしも、女性だったのに警戒心と敵意がむき出し過ぎる気もした。すごく大切な友達を紹介されるなんてことも想定できるのに。
    そして異性愛だったら確実に修羅場である状況が「近くしてほしかった」で済まされてしまうのが、すごく恐ろしい。異性愛者は異性に対しては嫉妬を向けにくいところもあるかも知れないが、バイセクシャルはまた違った感覚で恋愛しているのか、少し考えさせられた。

  2. これどうするのが正解なんでしょうね…。男性も女性も恋愛対象になり得るんだとしたら立派な二股になりますが…、その辺の罪悪感とかについては、私が考えても想像の領域をでないですね。予想もつきますし派手な展開もありませんでしたが、考えさせられる部分は多かったです。語り手は結局どうするのでしょう。

  3. 付き合って三か月で言われるなんて怖いですね。もっと早めに言ってほしいです。
    予想の斜め上をいくような衝撃的な出来事が起きると、私は思考停止してしまいます。この人は冷静に決断できるのでしょうか。

  4. 二股をかけるというアイデアは思いつきませんでした。付き合ってることを宣言してしまうとなんだか百合の淡い感じがしなくなる気がしました。

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