少女と少女/百合/ケチャねえ

彼女と初めてしゃべったのは高校の入学式だった。私の苗字は佐藤であり、だいたいクラスに2,3人は佐藤がいるみたいな法則がある。入学式やクラス替えで隣や後ろにいた佐藤さんに話しかけるときは必ずこれを持ちネタにしていた。そして、確実に盛り上がって仲良くなれるので、私はこの日も緊張していなかった。

そもそも、私はクラスの女子の中心で、6人程でいつめん最高などと言うような活発なタイプではないしそんなグループに属したこともなかった。どちらかというと、控えめで、仲良くなった2人でクラスのはじっこでおしゃべりしているタイプだった。

 

彼女は白い肌と華奢なラインから貧弱そうなイメージをもたせるが、話してみるとよく笑う子で、特にくしゃっと笑った時の三日月目で見つめられたとき、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。初めて会った時から彼女は私の”特別”だった。

 

 

 

「○○駅の近くにパンケーキ屋さん出来たんだって。こはるん一緒に行かない?」

 

 

帰り支度をしていたとき、ひなちゃんが言ってきた。

学校にも慣れはじめ、教室の移動もお弁当もひなちゃんと一緒にいることが当たり前になった。ひなちゃんは学校から2つ先の駅に住んでいて私は3つ先の駅に住んでいたので帰り道も自然と一緒に帰っていた。今日みたいに学校帰りに2人でカフェに入ってぐだぐだすることはよくあったが、ここに行こう。と提案してきてくれることは今までなかったので、なんだかうれしくてすぐさまOKの返答をした。

 

カフェに入り、メニューを頼んだ後、ひなちゃんが急に照れながら

「最近気になる人ができたんだ、、。」

とボソッとか細い声で言った。心臓を手でわしづかみされたような心の痛み。

しかし思い返せば、ここ最近のひなちゃんの変化に私は気づいていた。髪の毛にはピンク色のリボンをつけ、今までつけなかったような香水をつけ始めた。

 

「あのひと、あのひと、、。」

と、レジを打つ高身長で同い年ぐらいの人を、私にしか見せないように小さく指をさした。自分の表情がどんななのかはわからないが、私は一生懸命三日月目にして作り笑いをしていたような気がする。あのひなちゃんの三日月目を頭に描きながら。

 

私の心のもやもやは残ったまま、カフェに2人で居座っていたが、気づいたら3時間ほどたっていたので、さすがにお店を出て駅のホームへ向かった。駅のホームは帰宅途中のサラリーマンであふれかえっていた。丁度電車が来たのでのったが、おしくらまんじゅう状態で身動きが取れない状態だった。

 

 

ドアが閉まってから、ひなちゃんの様子が変わった。下を向いて、何かに耐えている。急に私に助けを求めるように視線をあわせてきた。

 

次の駅に、間もなく到着するアナウンスが流れた。と同時に

「この人痴漢です!助けてください。」

私は近くにあったサラリーマンの手をつかみ大きな声で叫んだ。電車内がざわめき始める。ドアが開き、気づいた駅員がかけよってきた。

「どうかしましたか?」

「こいつがこの女子高生に痴漢したんだ!」

と、電車内にいた客の一人が駅員に言った。

「では、駅内で事情を聞かせてもらうので同行願います。あなたが被害を受けた方ですよね?あなたたちも一緒に来てください。」

 

駅員に取り押さえられた男は

「俺は痴漢なんかしていない。冤罪だ!冤罪だ!」

と叫んでいた。

 

ふるえるひなちゃんの後ろで、私は男に向かって妖艶な笑みを浮かべた。男は一瞬驚きの顔をして、すべてを悟ったようにあきらめた顔をした。永遠に冤罪がはれることはなかった。

 

女性が痴漢の犯人だなんてこの世で誰が想像するだろうか。

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「少女と少女/百合/ケチャねえ」への2件のフィードバック

  1. 意中の子を落とすために、犯罪をでっち上げて、そこで助けてあげる恩人を演じる。なかなかの悪女ですね…

    展開としては、サラリーマンが唐突だったので、例の店員を貶める、という展開でもよかったかもしれません。そうするとベタすぎるかもしれませんが。

  2. 前半に性的欲求を匂わす記述がなかったように思えたので、痴漢したことによって主人公の気持ちは満たされたのかというのはちょっと疑問です。あと細かいところですが、「おしくらまんじゅう状態で身動きが取れない状態」というのがくどい言い回しになってしまっているので後ろの状態はとった方がいいと思いました。

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