海辺の喫茶店/百合/さくら

火曜日の午後。

テスト前なので、授業後に部活もなく、またそういうことでバイトも入れていなかったので、同級生であるミサとユキの二人は、近所の喫茶店で勉強会を開くことにした。

中学までとは異なり、入った部活も違ければ、お互い別々の職場を選んだこともあり、昔ほどこうして仲良く2人で一緒に何かを、という機会は減ってしまった。「テスト勉強」のように、お互いが共通の休暇を取れるきっかけも久々で、学校から喫茶店に向かう足取りからもう浮ついていた。

それもそのはず、彼女らがどれほど気付いているか知らないが、クラスの皆からはとっくに「そういう関係」とカテゴライズされているような2人だ。事情通のとある女子生徒によれば、サッカー部キャプテンとその後輩、という絵に描いたようなカップルが本校にいるにもかかわらず、それを差し置いて「(事情通の彼女たちが選ぶ)学内ベストカップル」と銘打たれたこともあるくらいだ。

気付けば2人は腕を組んでいた。目当ての店に着くと、店員に案内され、彼女らは窓際の2人席に腰を掛けた。もちろん、と言わんばかりに同じコーヒーを同時に指差すと、窓から見える砂浜に目線を向けながら談笑を始めた。

「こうやって2人でどこかってのも、久しぶりだよね~」
ミサが言う。
「そうだね~、高校入ってから、ずっと忙しいことばっかりだったもんね~、宿題は増えるし、バイト始めるし、もう休む暇がないよ~」
ユキが返す。
「やっぱりユキといると私、落ち着くなあ」
「私も! ミサは昔から変わってないからね~なんかすごく安心する! あ、ほら、襟立ってるよ~ミサったら、いくつになってもこうやってドジしてる」
胸元に手を伸ばす。
「ひっ! いきなりそんなっ、手伸ばされたら、ほら、恥ずかしいじゃん!」
「ミサ~、いきなり大声出すから、みんなこっち向いてるよ」
ミサの顔がすかさずぽっと火照る。
「かわいい」
ユキが呟いて頬に手を伸ばすと、ミサは無言で手をばたばたしてみせた。言葉にならない抗議、といったところかな。

こういう時上手に立つのはユキだ。何年も一緒にいるからミサの扱いには手慣れたものだ。ユキは、恥ずかしがり屋のミサが顔を赤らめるのがかわいくてかわいくて、こうやってからかってはその反応をうかがって楽しんでいる。

そうこうしていたらコーヒーが来た。
「ねえ!ミサの飲んでるコーヒー!おいしそうだね!」
しらばっくれた声でユキが言う。
「頼んだの同じコーヒーだよね~」
「関係ない!知らない!えいっ!」
間接キス。ミサはこういうのに弱い。自分が予想した通りの反応を返してくるものだから、おもしろくて、やっぱりかわいくて、たまらなかった。

コーヒーが無くなっても、やりとりは続いた。

気付けば2時間も店にいた。海沿いにあるこの小さな喫茶店は、こじんまりとした佇まいで、都会にあるそれとは大きく違い、客の回転みたいなことを考えるような店ではないので、時間の許す限りいくらでもゆっくりできる。彼女らにとっては、第二の家のような存在なのだ。

「もう日も暮れたし、そろそろ帰ろっか」
西日が水平線に映えていた。

真っ赤な夕陽に照らされた道を、真っ赤な顔して帰っていった2人の少女は、後日、真っ赤な答案を目の当たりにすると、先生から真っ赤な顔をされたのであった。

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「海辺の喫茶店/百合/さくら」への2件のフィードバック

  1. なんだか見ていて微笑ましいものですね(笑)
    僕は同性愛となるとどうしても障壁のことを考えてしまうので、こういう最後までほっこりしたような物語があってもいいなと思いました。構成としては山がないような気がしたのでもう少し起伏のある話だともっとよかったかもしれなきです。

  2. 同性愛というと結構ディープな行為や表現を意識してしまう面が自分にはあったので、こういったほっこりした話は良いなと思いました。

    私自身、仲の良い女の子とあそぶときテンションが上がって、腕を組むとか、手をつないで街を歩くことがあるし、飲み物の間接キスだって普通に行うので、周りから見たらわたしたちは同性愛カップルだと思われたりしているのかな、とふと考えさせられました。きをつけよう、と。

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