過ち/百合/ネズミ

 

突然ゆうこに呼びだされた。電話では元気がなかったようだけど、なにか嫌な事でもあったのだろうか。何はともあれ、直接会うのは半年ぶりだ。少しの緊張と喜びが入り混じる。いつもよりもちょっとおしゃれな服を着て、待ち合わせ場所へと急いだ。

「あっいたいた!なお!久しぶりー」

見慣れた顔が駆け寄ってくる。

「ゆうこ!久しぶりだね」

ゆうこと会うのは大学に入ってからは初めてだ。相変わらずかわいい。髪の色が少し明るくなり、化粧の仕方がうまくなったみたいだ。ゆうこがいうには相談があるらしい。私たちは近くのカフェへと入った。

 

「私、彼氏と別れようかと思ってるんだよね」

「えっ?」

あまりの突然の報告に思わず聞き返してしまった。話を聞くと、彼氏は大学に入ってからというものの、サークルやら飲み会やらでほとんどゆうこにかまってくれなくなってしまったらしい。そんな以前とは打って変わってしまった自分への対応に冷めてしまったらしく、自分から別れを切り出そうとしているとのことだ。その話をふまえ、私は色んな案を出す。別れるだけが手段じゃない。彼女のためになるような時間にしようと努力した。表面上は。

どこかでチャンスだと思っている自分がいる。私は高校のとき、ゆうこが好きだった。友達としてではなく、恋愛対象として。同性を好きになってしまったという時点で半ば諦めかけていたところに、彼が現れゆうこと恋に落ち、そのまま付き合ってしまった。その夜はどれだけ泣いたことだろう。それをきっかけに私はゆうこを諦めた。はずだったのに。今になってあの頃の記憶が沸々と蘇ってくる。

私は高校時代を経て、ゆうこの良き相談者としての立場を確立した。今日も高校の頃と同じように、親身になって彼女の話を聞く。そんな私にゆうこは言う。

「なおは本当に面倒見がいいよね。なおと付き合える人は幸せだなあ」

この言葉が引き金だった。気づいた時にはもうすでに口を開いていた。

「じゃあさ、私と付き合わない?」

「やだー。なお、何言ってんの?」

ゆうこは笑いながら私を茶化した。

「私、ゆうこのこと好きなの。私ならあの人よりゆうこのこと大事にするからさ」

想いが止まらない。私の真剣なまなざしを見て、ゆうこの顔から笑みが消えた。

「え、本当に何言ってるの?」

怖いものを見ているような表情を浮かべ、ゆうこが言う。長い沈黙が二人を襲う。張りつめた空気に耐えきれなくなったゆうこが突然立ち上がった。

「ごめん。私帰るね」

そういうと千円札を一枚おいて、慌てて帰ってしまった。我に返ったのはそのあとだ。ずっと我慢していた想いが今になって溢れだすなんて。彼女は冗談で言ったに過ぎないのだろうが、一筋の希望が見えただけでいけると思ってしまった自分を恨んだ。

その後、私はゆうこと会っていない。風の噂で彼と別れたというのは聞いた。私の知らないところで事が進んでいたのが妙に寂しかった。

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「過ち/百合/ネズミ」への2件のフィードバック

  1. 女性で同性愛を嫌悪までする人ってあんまり聞いたことがなくて、でもやっぱりそういうふうに切りだされたら嫌悪の気持ちって沸くんですかね。
    片方は百合だけどもう片方はそうじゃないってシチュエーションは他の人と少し違う感じがして面白いと思いました。
    でもよくよく考えたら、テーマが百合とはいえ女子同士の恋愛がさも当然のように描かれてそこに違和感がほとんどないのも不思議ですよね。

  2. なおさんが、表面上はゆうこの理解者としてちかくにいることを狙ったことや、高校の時からゆうこのことを
    おもいつづけ、大学に入ってからもおもいつづけていたので、
    前半は慎重な女の子なのかなと思いましたが、
    後半で想いが溢れて突然告白したことの流れに驚きましたが、
    よく考えてみると、長年想い続けてたからこそ、思わず言ってしまうみたいなことはあるのかなと共感できました。

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