半透明少女関係/百合/T

左耳につけているのを強引に引っ張って抜いて、ねえイヤホン半分こしようよって青子に言ったら、真顔でやだって言われた。なんでって聞くと、なんか嫌じゃない?そういうのって、やっぱり真顔で青子は言った。

学校の帰りの電車のなかで二人っきり。二人っきりなのに青子はイヤホンをしている。青子のイヤホンは白いやつで、普段はウォークマンと一緒に制服のポケットに入ってる。暇さえあればそれで何か聴いてるし、この前見てたら授業中にも付けてた。もう青子の身体の一部分みたいなものだって私は思ってる。いつもそんな感じだから別にいいんだけど、でも今日はなんとなくかまってほしかった。  

 

「じゃあ、普通にイヤホン貸してよ。青子がいつも何聴いてるか知りたい。」  

 

「いいよ。」  

 

意外とすんなり、青子は外してなかった右のイヤホンも取って左右両方を私に貸してくれた。さっきまで青子の体の中にあったからちょっと温かいイヤピースのゴムの先を、耳の奥へ入れる。

曲が始まると、思ってたより大きい音がしてびっくりした。なんか耳がキンキンする曲。歌ってるのたぶん男の人だけど、後ろの音が大きいし、叫んでて何言ってるか全然分かんない。青子、いつもこんなうるさいの聴いてるんだ。難聴になりそう。

耳痛かったけど、一曲終わるまではちゃんと聴いた。  

 

「これなあに?」  

イヤホンを耳から外して、横でスマホをいじってる青子に聞いた。  

 

「ナンバーガールっていうバンド。」  

 

「へえ、これかっこいいね。」

ほんとは、かっこいいともかっこ悪いとも思わなくて、ただうるさいだけだったけど。私バンドとか聴かないし。  

 

「ガールなのに歌ってるの男の人なんて変だね。」  

 

「そうだね、たしかに。」  

 

私が何を話しかけても、青子から帰ってくるのはだいたい必要最小限の答えだけ。低い、ちょっとかすれた声でボソッと言うだけ。私はもっと青子の事知りたくて、たくさん話したいって思ってる。でも向こうはそんな事思っていないっていうのは、青子の感じ見てればわかる。嫌われたくないし、もう嫌われてるんじゃないかなってすごい思うし、それで私も何話していいか分からなくなる。でも青子の近くにいたいっていう気持ちは抑えられなくて、今日も隣にずうずうしく座っている。  

 

二人で一緒に電車に乗っているのは20分くらい。青子の降りる駅のほうが先に着く。私はその次の次の駅。息苦しいのに、もっと長く続けばいいのにって思う不思議な時間。でもだいたいすぐ終わってしまう。  

 

「瑠美。」

…名前を呼ばれるだけで、ドキッとする。  

 

「ん?なに?」  

 

「明日用事あるから、いっしょに帰れない。」  

 

「わかった。」      

 

 

 

「…あとイヤホン半分こにしたくないのは、瑠美とだけじゃないよ。」

じゃあねって言って、青子は電車から降りて行った。    

 

私は青子から何を言われたのか分からなくて、ぼーっとしていた。ぼーっとしてたら、もう次の次の駅に電車は着いていた。降りてから、あ、青子にバイバイって言ってなかったなって気付いて、LINEしようかなって思ったけど、なんとなくやめとこと思って、そのままうちに歩いて帰った。

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「半透明少女関係/百合/T」への1件のフィードバック

  1. あおこですか?せいこですか?珍しい名前ですね。
    青子は潔癖症かと思いましたがそうじゃないんですね。
    クールなキャラが漫画にいそうだと思いました。

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