ひとり異種格闘技戦

泣くことって日常生活送ってる上でほとんどなくね?これがこのテーマに対する第一印象だった。

過去を振り返ってトラウマを掘り返してみても、長らく涙を流した体験がない。これは困った。

そんなとき、わたしの頭の中に悪魔的な考えが舞い降りたのだ───すなわち、

「涙が流れないなら、辛いもので無理やり流せばいいんじゃね?」

戦いのゴングは鳴った。いざ尋常に勝負!


大さん橋
ここが決戦の地

さる某日、筆者は真冬の風吹きすさぶ横浜・大さん橋にいた。
よく晴れた平日の昼下がり、ここには休日でなくとも多くの観光客が訪れる。

そんな中筆者の目的は、ちょうど寄港中の客船『ワールド・オデッセイ』

ワールドオデッセイ
2万2千トン級の豪華客船だ

……ではなく、「ただ辛いものを食べ、どれだけ涙が出るかを比べてみよう」という孤独な異種格闘技戦が静かに幕を上げるのだった。

ラインナップ
今回の挑戦者はこの5名。錚々たる顔ぶれだ

今回のチャレンジャーは、

・ハウス食品 生わさび
・ハウス食品 柚子こしょう
・S&B食品 生しょうが
・マキルヘニー タバスコ
・S&B食品 コショウ

ペースト状から液体、果ては粉末までとバリエーションに富んだラインナップとなった。

ところで、スパイス界のプリンスともいえるからしだが、残念ながら今回は手に入らなかった。
次回検証することがあれば、是非相見えてみたいものだ。

それでは、早速検証に移っていこう。

わさび
先鋒はやっぱりコイツ

数あるチャレンジャーの中、最初に対峙するのはわさびとなった。

今回使用するのは、西洋わさびに日本原産の本わさびをブレンドしたもの。
本わさびに比べ、西洋わさびは辛さが控えめだというが、その実力は果たして……

本わさび
意外と黄色っぽい。まずは手始めにスプーン1杯

思ったよりしょっぱ……いや辛い辛い辛い!

初っ端から全力だ。塩分が追加され多少マイルドになってはいるが、さすがはハウス食品の主力商品。
本わさびの名は伊達じゃない。

辛さを必死に耐え忍び、飲み込んだ瞬間一気に咳き込んだ。
あ、これアカンやつや。青く澄んだ大空とは裏腹に、早くも暗雲が立ち込めてきたようである。

辛さ:★★★★☆
涙度:★★★★☆

救世主
こんなこともあろうかと用意しておいたのさ!

想像以上の暴力に既に目が潤んできたところで、今回オアシスとなる牛乳を一気にあおる。

乳脂肪とやさしい甘みによって辛さが中和され、口の中がリセットされる。

これ、銭湯で入浴後飲むのよりうまい気がする。
すごいぞ牛乳。とにかく生き返った。

半分の柚子こしょう
いつもより少なく入れております

なんとか味覚が復活したところで、次なる強敵(とも)、柚子こしょう戦へとシフト。

先刻のわさびの圧倒的な暴力のせいもあり、チキってスプーン半杯で小手調べを行うことにした。
見せてもらおうか、ハウス食品のスパイスの実力とやらを!

ぱくっ。口に入れた途端、強烈な塩気が襲ってきた。

後にやってくる刺激。といっても、スプーン1杯のわさびに比べれば赤ちゃんレベルである。
あー、確かにコレ辛いけど涙が出る辛さじゃないね。

山盛りの柚子こしょう
いつもより多く盛っております

ビビってスプーン半杯にしたのがよくなかったかと、スプーン山盛りで挑むも結果は同じ。
ただ、しょっぱい。ご飯が欲しくなるレベルだ。

辛さ:★★☆☆☆
涙度:★☆☆☆☆
塩気:★★★★☆

しょうが
中堅はしょうが。肉料理にもうどんにもあう、ニクい名脇役だ

続いてはしょうがだが、すっかり柚子こしょうに気を良くした筆者。
わさびの猛威を忘れたかのように、スプーン1杯で挑むことにした。結果。

あれ、甘っ……辛、から辛い!!!
辛さの裏で苦味もするよ!あとなんか頭皮から変な汗出てきた!
涙出ないけどこれはこれでヤバい気がする!

辛さ:★★★☆☆
涙度:★★☆☆☆
汗度:★★★★☆

タバスコ
唯一液体界から参戦。異種格闘技の醍醐味といえばこれだろう

満を持して登場するのは、液体界の王者、タバスコである。
青唐辛子のハラペーニョソースもあるが、今回はオーソドックスな赤唐辛子にトライ。

ちなみにこのタバスコ、なかなか瓶から滴ってこないのでスプーンを満たすのに苦労した。
筆者はこれを撮影している際、団体の観光客に白い目で見られたが、心を強く持って気にしないことにした。
これはあくまでもひとり格闘技であって、孤独な戦いなのだ。

口に含み、酢の匂いを感じた刹那、猛烈な刺激に襲われた。もはや辛いというより痛い。
ぶっふぉ!意を決して飲み込むと、盛大にむせた。
全身から汗が噴き出す感覚。なおも増す辛さに、ここで筆者不覚にも落涙。TKOとなった。

辛さ:★★★★★
涙度:★★★★★

今回ばかりは牛乳を飲んでも辛さは引くことがなく、あまりの刺激に鼻水が止まらない。
お前は誰と戦っているんだ。そう思いかけた瞬間、声をかけられた。

「あのー、すみません。何やってるんですか?」

ベンチから見上げると、隣に座っていたカップルの女性がこちらを興味深そうに見ていた。
そりゃこんな観光地で頭おかしい真似をやってたら気になるよな。当たり前だ。

「こんにちは、今大学の研究室で『涙』ってテーマで文章書いてて、辛いもの食べたら涙出るんじゃないかなって」

筆者としても奇異の目で見られるよりは話しかけてくれた方がありがたい。
できるだけ丁寧に事情を説明した。

「あはは、そうなんですね。涙、出てますもんね」

女性はそう言うと、これ使ってください、とバッグからポケットティッシュを渡してくれた。
その後は女性の彼氏さんもやって来て、しばらく話をすることに。正直嬉しかった。

違う意味で涙が出そうになったひとときだった。
お世話になりました。ありがとうございました。

コショウ
あえなく風に舞い散るコショウ。風、強すぎ……

思いもかけない出会いにモチベーションも上がったところで、トリを飾るコショウと決着をつけることにした。

コショウの中蓋を外し、スプーンに盛ろうと振りかける……が、ここは海風の強い大さん橋。
コショウの大半は大空へと舞い散ってしまった。
仕方ないので、スプーンに付いた部分だけを試してみる。

砂?……あ、からい。けど他のに比べれば全然大したことない。
こうして、色々な意味でハードな異種格闘技戦は幕を閉じた。


リザルト
戦いは終わった。あとにはただ強敵(とも)が残るのみ

さて、ここで今回の戦果をまとめていこう。
まずは戦闘後、筆者の身体に起こった変化から。

・目が潤っている
・胃の膨満感
・全身の気だるさ
・軽い頭痛
・舌のしびれ
・唇の痛み
・鼻水が止まらない
・口からスパイシーな香りがする(主にタバスコ臭)
・尿意が押し寄せる
・香辛料で身体が暖まったはずなのに、暖房の効いた室内でも妙な寒気がする

と、いったところだ。

こうして挙げると悪い面ばかりが際立ってしまうが、謎の達成感なども得られるしそう悪いことではない。
とくに、目が潤うという点に関しては、コンタクトなどでドライアイにお悩みの方にはぜひオススメである。

ひとまず、戦いを乗り越えた筆者が思ったことはひとつ。
夕飯には、身体にやさしいうどんでも食べようということだった。

うどん
七味をパラパラっとふりかけて。やっぱり香辛料は適量がいいね!

 

 

ロケ地:横浜港大さん橋国際客船ターミナル
http://www.osanbashi.com

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「ひとり異種格闘技戦」への2件のフィードバック

  1. 純粋にただ一つ、「何をやってるんだこの人は」という感想と、そのシュールさに笑わされました。涙というテーマからそこにいくか、といいますか、どうにも湿っぽくなりがちなテーマでこのような挑み方をしてくるんだなあと思うと面白かったですし、なにより失敗しがちな奇をてらった行動もうまく演出に組み込まれていて、読みやすくも面白かったです。一見無意味なチャレンジですが、私はこれを読んで馬鹿だなあと笑えたので、こういうのもアリだと思います。

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